ヨーロッパで禁止が決まったトリクロサンを配合している薬用ハンドソープ
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殺菌・消毒効果をうたった薬用石けん・ハンドソープに使われる有効成分「トリクロサン」が、EUで使用禁止された。欧州連合の専門機関である欧州化学機関が6月25日に決定した。薬用石けんは、普通の石けんと比べても感染症予防効果に差はなく、逆に耐性菌を発生させるリスクが上がる研究結果が示されており、トリクロサンには環境ホルモン作用が指摘され、皮膚を通して体内に取り込むこともわかっている。そのためP&GやJ&Jなど海外の大手トイレタリー企業はすでに使用中止を表明。一方、日本では花王「ビオレU」やマンダム「ルシード」など薬用ソープやシャンプーで相変わらず使用中だ。歯磨き粉やマウスウォッシュなどは歯肉炎予防効果があるとして海外でも使用されているが、欧州では安全性に懸念ありとして2014年に配合濃度上限値を下げた。日本では、配合上限規制がなく、企業も企業秘密扱いで情報開示しない。(トリクロサンを使った薬用石けん・ハンドソープ、マウスウォッシュ・歯磨き粉の一覧表付き)
【Digest】
◇トリクロサンが欧州連合専門機関で使用禁止に
◇アメリカでも再評価中
◇海外メーカーはいち早く使用自粛を公表
◇日本でトリクロサンを使った薬用石けん・ハンドソープ一覧
◇花王「配合量は企業秘密」厚労省「配合上限定めてない」
◇トリクロサンが欧州連合専門機関で使用禁止に
「1日何度も洗うみんなの手に、うるおい守って、しっかり洗える」とCMで宣伝する花王の「ビオレU泡ハンドソープ」。含まれている有効成分は「トリクロサン」という殺菌剤だ。
「薬用:殺菌・消毒」と表示されており、あたかも殺菌成分が無いと効果が無いように思わせている。しかし風邪や下痢をはじめとする感染症予防に、薬用石けんは本当に有効なのか?
海外で行われた数百人規模での薬用石けんと普通のせっけんを使い続けたグループを比べた4件の調査で、感染症の発症頻度を調べた結果、普通のせっけんと比べて効果の差はみられなかった。
普通のせっけんでも流水でよく洗うことで細菌やウイルスは洗い流されるので、十分効果があるということだ。
効果が無いだけならばまだよいのだが、これらの調査では、殺菌剤入りの薬用石けんを使い続けることで、一部の細菌が耐性を獲得し、さらにトリクロサン以外の殺菌成分や抗生物質へ耐性をもった菌を増やす可能性も示されている。
さらにトリクロサンは、分解されにくく、体内のホルモンをかく乱する環境ホルモン作用が指摘され、海外では大きな問題になっている。
欧州連合では、農業用途以外の殺虫剤・殺菌剤を規制する法律が存在する。「殺生物剤規制」といい、人間用の衛生用品や、家具やカーペット消毒など用途によって使える成分を規制している。
この殺生物剤規制を所管する欧州化学機関(ECHA)という専門機関が6月25日、人の皮膚へ直接塗ることによる殺菌効果を目的とする衛生用品へのトリクロサンの使用を禁止する決定を下した。
規制の理由は、環境への影響と人体への影響の二つが指摘されている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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市販のハンドソープ商品へのトリクロサン配合の有無 |
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薬用歯磨き粉、マウスウォッシュでのトリクロサンが配合されている商品。 |
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商品ジャンル別のトリクロサンの体内摂取量と安全摂取量との比較。ボディローションやマウスウォッシュなどがリスクが高い。 |
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