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「老後は安心」は嘘だった――絶対的不採算アパートを買わされたオーナーの提訴で判明、大東建託“悪質”商法の手口

情報提供
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「大東建託にだまされた」と嘆くAさん。テレビCMや新聞広告、電車の中吊り広告を通じて「信用できる会社」だと思っていた。
 アパート経営で老後は安心――という営業マンの甘言を信じて大東建託でアパートを建てたものの、最初から採算が合わず返済に行き詰まった大阪府内のオーナー夫妻が、不十分な説明によって大損害を被ったとして、同社を相手取り、約1億円の損害賠償請求訴訟を起こし、大阪地裁で係争中だ。「1年後に条件のいいところで借り換えができる」と虚偽の説明をする、「社員の手で融資申込書に虚偽を記載する」――。審理を通じて浮き彫りになったのは、不採算になることを知りながら無理に事業を進め、巨額の借金をさせてカネを払わせたら、あとは知らんぷり、という悪質きわまりない「大東建託商法」の実態だった。訴訟記録とオーナーへのインタビューをもとに詳細を報告する。
Digest
  • 「老後も安心」にだまされた
  • 広告よくやっている大きな会社
  • 新人営業マンのT社員
  • 「ぜひやらせてもらいたい」
  • その場しのぎのでたらめな融資計画
  • 白紙撤回のチャンスはあった
  • 条件最悪のところに借り換えさせる
  • 「借り換えします」は嘘だった
  • 融資申込書に大東建託社員が虚偽記載

「老後も安心」にだまされた

「大東建託にだまされた。金もらったから関係ないわと、それですわ。きっちりだまされました」

新築のにおいがする居間で、Aさん(62)は自嘲気味に力なく笑った。隣で病身の妻がつぶやくように話す。

「津川雅彦が傘を開くCMシーンがすごく印象に残っています。何十年か安心とか、修繕費がいらないとか。あのころそれをテレビでよく見ていた気がします・・・」


自宅の脇には1棟4戸の賃貸アパートが建っている。どちらも3年ほど前に大東建託で建てたばかりだ。アパートは全室入居がきまり、「満室」の表示がされている。だが、なぜか夫妻の表情は暗い。金融機関への返済に行き詰ってしまったからだ。

負債総額は9000万円近い。月々の返済は45万円を超す。これに対して家賃収入は25万円ほどしかない。毎月ざっと20万円以上の持ち出しだ。わずかな年金を生活費に回し、なけなしの貯金を崩して返済していたが、すぐに限界に達した。現在は利息だけを払う「リスケ」(返済猶予)をしてもらっている。

今後の見通しは厳しい。気持ちが暗くなるのも当然だろう。それでも泣き寝入りするのは嫌だった。2015年8月、虚偽の説明によって損害を受けたとして、大東建託を相手に9000万円の損害賠償を求める請求訴訟を大阪地裁に起こした。審理のなかで、次々に大東建託のずさんで悪質な「手口」が浮かんできた。

※平成27年(わ)8587、原告代理人・徳矢卓洋弁護士 

裁判記録とAさんの証言によれば、事件の概要は次のとおりである。

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家賃収入25万円に対して45万円以上の返済をすることになり、新築直後から「アパート経営」は破綻した。Aさんのアパート(手前)と自宅(奥)。「1年後に借り換えをするから大丈夫」と大東建託の社員に言われ、信じていたという。

広告よくやっている大きな会社

きっかけは、4年前の2012年3月にさかのぼる。いまの新築アパートと自宅が建っている場所は、当時は借地だった。敷地の広さは100坪あまり。そこに築50年以上になる木造の自宅と、廃業した工場の建物があった。長年借りてきたその土地を、地主が「売りたい」と言ってきたのだ。

地主から提示された価格は、相場のざっと半分の千数百万円だった。悪くない話だ、とAさんは思った。ことあるごとに地代が上がっていくのが悩みだったが、買ってしまえばその心配もなくなる。

問題は資金だった。折しもAさんは、40年近く勤めてきた会社を、2年後に定年退職する予定だった。退職すれば年金生活になる。年金はわずかで、退職金も多くはない。老後の生活費や年老いた親のことを考えると、貯金をはたくのは躊躇があった。

どうしたものか――思案するAさん夫妻の頭に浮かんだのが、「大東建託」だった。数ヶ月前、自宅のポストにチラシが入っていたのを思い出したのだ

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大東建託の強引な営業により大損害を受けたとしてAさんが同社を訴えた民事裁判の審理が続く大阪地裁。

自己資金3300万円、ローン0円--事実とまったく異なる記載がされたアプラスの融資申込書。虚偽の事実を書いたのは大東建託の社員だった。

満室になっても毎月20万円以上の持ち出しになるという最初から破綻した「アパート経営」だった。

Aさんのアパート計画は融資不調で解約になる寸前だった。しかし大東建託は、日本政策金融公庫の借金1300万円を悪条件のアプラスで借り換えさせることで4600万円の融資を強引に取りつけ、建設を進める。アプラスで借り換えさせる際、Aさんに見せた「資金計画」と題する書類。10年返済で年利4・5%のアプラスのほうが「利息総額」が安いので得だ――などと子どもだましのような説明をしている。

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   2018/03/25 23:42
2018/03/20 22:45
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