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NHK、大卒全員が年功序列で最低1500万まで出世のお手盛り待遇「平均的な出世でも年収1700万円までは到達します」――受信料が給与に化け、拡がる官民格差

情報提供
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若者はなぜ会社選びに失敗するのか』chapter09の「報酬水準が高い会社、低い会社」より
 NHK正規職員の待遇は民間平均(440万円)の2.5倍で、平均1100万円弱。全国紙の上位3社(朝日・日経・読売)と並ぶ。公共放送としての使命を果たし、かつ第三者がそれを監視する体制が整っていれば問題ない水準といえるが、頭数は全メディアのなかで一番多い。なかでも予算と人員が最も割かれている報道部門は、その割に大企業や政府を監視する公共性を有した報道は見当たらず、「スクープといえば文春」が日本の定番。むしろ森友事件をスクープした記者が退職に追い込まれるなど、あからさまな“忖度報道”で有害さのほうが目立つ。人数も給料も半分程度に縮小したほうが国民のためではないか――労組活動にも従事していた元職員に、前回に続き、内部の実情を聞いた。
Digest
  • 5月は手取り10万円貰えない派遣さん
  • 役割分担には「触れない」「気を遣え」
  • 40代半ばの年収1300万円まで一律で上がっていく
  • 最低ラインが高卒55歳1300万円、大卒1500万円
  • 住宅補助、単身赴任手当…充実した福利厚生
  • 放送事業マネに80人、記者・ディレクターも80人ずつなのに…
  • 特殊法人NHK経理の『特殊な』ルーティーン業務
  • N国党議員は予算全会一致を崩せるか
  • 定年までに東京と地方を二往復
■1本目→NHKが産んだ怪物・立花孝志N国党代表
■2本目→NHKの働く環境、やりがい

5月は手取り10万円貰えない派遣さん

NHKは2019年度現在、10,333人の職員数を抱え、勤続年数は平均17.5年。平均の人件費総額(給与+退職手当、厚生費)は2018年決算書によると1,602億円で、年度末要員数10,150人で割ると、平均人件費が1,578万円となる。給与のみは1,115億円、平均給与1,098万円となるが、住宅補助だけで年60万円(東京、扶養者アリ)など給与以外の福利厚生も手厚い。

「労組の専従者は、東京に8人、地方拠点に6人。全体で14~15人いました」。組合費は入社10年未満の若手でも月5~6千円払う。それが専従者の給料になり、組合員の利益を守るための活動を行う。よって、非組合員(非正規労働者や、外部のフリーディレクター等の個人事業主)に、そのしわ寄せがいく。正規が非正規から搾取する、日本の縮図である。

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「30歳年収×勤続年収」でみたNHKのポジション

同一労働同一賃金が社会問題化し、国会でも議論されている(2020年4月から施行)が、NHKでも、社内の待遇差は、労組で議論のテーマになっているという。ディレクターも、カメラマンも、事務員も、非正規雇用者は、格安の待遇で働いているからだ。出演者も同様で、俗に、N(日本)H(薄謝)K(協会)と呼ばれる。「公共放送だから」「公共の使命感で」…と受け入れる人が多いが、ならば正規職員の報酬も下げなければ理屈が合わない。

「経理にいたのでわかりますが、フルタイム勤務のディレクターが、月30万~最大50万円で、地方だと20万円だったりするんです。同じ『技術職』という扱いになるカメラマンも、ディレクターと同じくらいの金額です。だから、『気を遣え』という話になっていました。泊まり勤務は正規職員だけにしよう、とか。

事務系の派遣さんは、予算が年300万円、つまり月25万円で、本人は15万円くらいしか貰えない。GWがあって出勤日が少ない5月は、『手取り10万円貰えない』と嘆いていました。3年間の有期雇用で、延長なしです。

結局、このテーマ(正規非正規同一賃金、均等待遇)に深入りするのはやめよう、というのが労組の結論でした」

均等待遇にするには、正規職員の高い賃金を下げなければいけない。それは受け入れがたい。ようは自分さえよければいい、ということだ。世界中で日本だけと言ってもよい差別待遇であり、それを国が容認し、特殊法人で堂々と行われている。日本の縮図が、NHKなのである。

役割分担には「触れない」「気を遣え」

すべての業務をNHK本体の正規職員が行ったら、それは人件費の無駄遣いになる。たとえば民間の出版社などは、雑誌作りにおいてカメラマンを外注するのが当り前になっている。本体職員が担当すべき業務と、外注すべき業務を切り分け、役割分担して適正賃金を支払うことによって、高い生産性を保ち、高い成果をあげることができる。

「NHK正規職員一万人のうち、NHK本体職員がやるべき仕事として本来何人が必要なのか?という話が労組で議題として出たことがありましたが、結論としては、『そのテーマには触れないようにしよう』となりました。論理的に、労組が負けるからです。給料が高すぎて、コストが高すぎるからです。職員数をリストラするか、給与の額を減らすか、という方向しかありえないので、労組としては、負けになります。労組っていうのは、そういうものです」

潤沢な予算のもと、本来は外注すべき業務も内部に抱え込み、必要以上の人件費をかけてきた。特殊法人なので、合理化するインセンティブがなく、結局、多くを内部に抱え込んだまま、なし崩し的に足りない業務を外注した結果、総人件費の効率的な使い方は検討されることすらなく、格差だけが拡大しているのが現状だ。結論が『気を遣え』なのだから、察するに余りある。

つまり、現在、正規職員が担当している業務には、本来なら外部に出したほうがよい業務が沢山ある。一方で、現在、外部の非正規社員が担当している業務は、正規職員に比べて、とても同一労働同一賃金とは言えない安い賃金しか払われていない。

中長期的に、正規の職員数を減らしつつ、人件費を外注先により多く流すことで、“内外価格差”を縮小し、均等待遇の実現を目指すのが正しい姿である。

だが、とにかく雇用には一切触れたくない伝統的な労組が、その議論すら拒んでいる。日本の古い大企業は、概ね、そうなっている。それを1万人規模でやっているNHKは、日本の格差拡大装置と言ってよい。

40代半ばの年収1300万円まで一律で上がっていく

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キャリアパスと報酬

そのくらい、正規職員は給料水準が高い。しかも、降格・降給なし、年功序列だ。ランクとしては、A1→A2→B1→B2→C1→C2→Dと上がっていく。D以上の人を社内では「Dアップ」と呼ぶ

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「B2」ランク(30歳前後に全員が到達)の給与明細

上位評価「第Ⅱ区分」の場合の賞与明細(冬、B2ランク)

下から入社1年目、3年目、5年目、7年目、9年目の年収(源泉徴収票)

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元で入りD2020/01/17 11:21
2019/12/07 10:34
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