報酬水準の高い会社、低い会社
図1:平均年収の分類と各エリアの特徴 |
- Digest
-
- 成果主義導入企業が高い
- 似たり寄ったりの企業群
- 労組の影響で技術者も低いメーカー
- 参入障壁が低い業界が多い
- 一般には知られない大手出版の高水準
- 高い参入障壁を築いた会社群
- ケタ違いの報酬
- 投資銀とコンサルの特徴
- 新旧社員のオプション格差
- IT企業はオーナー天下
それではどうやって見分ければよいのか。ビジネス誌で人気特集の平均年収ランキングには、下記4つの欠点があることは前回詳細に述べたとおりだ。1:報酬の上昇カーブが考慮されていないこと、2:採用区分による格差が考慮されていないこと、3:当然ながら、株式非公開企業などは含まれないこと、4:単年度のデータなので勤続年数が考慮されていないこと。
これら4点の問題を解決したうえで、本当の報酬水準をまとめた。上昇カーブについては、10年後の世界がどうなっているかも分からない時代なので、30才時点で切って見る。35才だと、管理職クラスに昇格している人と組合員のままの人がおり、両者は報酬体系が異なるため、ごちゃまぜになると平均値に意味がなくなるが、30才では、ほとんどの会社で、それほど差がついていない。また、私が取材する社員の中心が30才前後であることから、データの精度も高い。
図2:30才平均年収で見た場合の、各エリアの代表的な企業名 |
手取りベースの30才時点の平均年収と、推定勤続年数でマッピングしたものが、左記図2である。手取り額は、実際には家族構成や加入している保険額などで控除分が変動するが、独身で余計な保険には一切入っていないものとした。
■「普通のサラリーマン」エリア
まず、相場観を持とう。大企業のなかで比べると、30才で、手取り500万円くらい、額面で650万円くらいが、標準的な年収である。これはもちろん人気が高い大企業での話なので、中小も含めたサラリーマン全体の給与としては、かなり高めだ。
これを基点に、前後100万円くらいに収まるのが、普通のサラリーマン像である。生涯賃金は2億5千万円~3億円程度だ。業種でいうと、メーカーのホワイトカラーは、ほとんどがこの中に入り、下位のマスコミ企業、中堅以下の国内系金融、上位の流通が入る。このエリアは、インフラ系を除いて参入障壁が低いため、競争が激しい。
成果主義導入企業が高い
このエリア内では、ソニーとキヤノンが頭一つ抜けて高い。ソニーでは成果が厳しく問われ、30才では、一部が「グレード1」に昇格し手取りで約600万円となるものの、大半はまだ「グレード2」で約540万円だ。キヤノンでも、順調に昇格できれば30才では「G3」で約600万円(額面月収で50万前後、ボーナス年200万前後)であるが、これも年功序列ではなく、論文、面談、上司の評価といった厳しい試験を2度クリアしなければならない。
両社では、20代から成果によって同期の間で報酬に差がつくため、全員が高い報酬を享受できる訳ではなく、社内の「負け組」も多いが、平均すれば30才では約570万円といったところで、これがメーカーとしては最高峰である。だが、この最高峰の給与は、マスコミや金融のなかでは、高いとは言えない。前述のように私は入社3年目ですでに手取り570万で、成果主義ではないため、同期でほとんど差がなかった(今でも同じ仕組み)。
特殊法人のNHKや、毎日・産経で地方から東京に戻れている記者たち、および損保2位の損保ジャパンでは、かなり年功序列的に、この程度の報酬を30才で得ている。みずほ銀では、トップ昇格組が30才で「調査役」となり手取り600万円だが、大半は役なしの同500万円にとどまるため、ソニーやキヤノンと、ほぼ同じ水準である。
似たり寄ったりの企業群
富士通やIBMといったSI系では、30才で550万円ほどと思ってよい。IBMは営業のみ基本給が低くコミッション比率が高いため、目標値を達成した年は750万円(額面1,000万円)を超えることもあるが、企業の情報システム投資には山があるので、翌年は反動で下がるのが通例だ。
インフラ系企業(JR、ANA、JAL)やビール会社(麒麟麦酒、サントリー)は500万円前後で、日立や三菱重工といった重厚長大系の大手メーカーも、だいたい似たような水準。
自動車は、終身雇用を前提とした典型的なピラミッド組織なので、最初の10年、つまり30代前半までは抜擢人事もなく、給与は安く抑えられている。トヨタや日産で30才なら、たいてい450~500万円だ。大手電機メーカーで給与が低いほうに入るNECやシャープ、三洋電機もその程度である。国内系消費財のトップメーカー(花王、ライオン…)も同じクラス。もともと相場が低い流通業のなかでは、大手の伊勢丹やイオンといった業界の「勝ち組」ならこのあたりになる。
労組の影響で技術者も低いメーカー
「世界のトヨタ」でも、30才で比べると、大手商社や新聞、広告と比べて、年収が4割も低く、年を経るごとに差は縮まっても、逆転することは、ほぼない。
こうしたメーカーの報酬水準の低さを論じる上では、工場のブルーカラー層の影響力が大きい労組の存在を無視できない。日本の労組は、欧米で一般的な職種別労組ではなく企業別労組なので、ホワイトカラーとブルーカラーが同一の組合に所属しており、労組は「団結」を好むので、そのために、どうしても全体で報酬水準のバランスをとろうとする傾向がある。
しかもそれは、自動車業界なら「自動車総連」、電機業界なら「電機連合」という上部団体レベルでの団結を重視するため、なおさら職種別での格差をつけにくく、同じ業界ならば企業間でさえ、横並びになる。企業間格差も、社内格差も、とにかく格差は、団結力を弱めてしまうからだ。
報酬水準が高めのキヤノンや日本IBMは電機連合に所属しておらず、キヤノンは労組があるにはあるが、「会社の方針を伝えるだけで戦わない。方針が伝わるのも『2ちゃんねる』のほうが早いです。あんな弱い組合に組合費を払いたくない」(技術系中堅社員)、「キヤノンを語るうえで『弱い労組』の存在は欠かせないです」(事務系若手社員)というように、社員の評価が低い。
日本IBMには、社員2万人超でも、組合員200人未満の労組が1つあるだけで、影響力は弱い。ソニーは労組の組織率が低く、「先輩に労組に入るべきかを聞いたところ、『入らなくても何もデメリットはない』といわれ、自分は労組に入りませんでした」(若手社員)という程度だ。
意外に思われるかもしれないが、労組が弱い会社のほうが社員の報酬は高い傾向にある。
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り8,033字/全文10,713字
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
仕事柄、他人の源泉徴収票は多く見てきましたが、公立学校の先生等の公務員は40才前後になると間違いのない年収ですが、民間は・・・。企業毎の比較でも、大卒/大学院卒が大半を占める企業(大手金融/商社)と、工場があり、それ以外が多い企業では、会社全体では前者のほうが高いように見えますが、大卒ではむしろ後者のほうが高いケースも少なくありません。
両親に楽隠居させてあげられない自分はひとまず置いておいて、あの資産運用のCMはむかつく。特に、どの会社かは分からないけど、京塚云々が出ているやつ。退職金と年金と運用で、定年から死ぬまでの云十年間、遊びっぱなしですか。でも、夫婦で新卒から公務員とかは可能かも。
「009」さん、大事な事ほど学校では教えてくれませんよね。第二組合作りも同様。まず信頼できる外部組織と自己学習。そして「創意工夫」がカギですね。基本は大事ですが、戦いのパターンの踏襲は相手も対策が立て易いですから。残念ながら既存の組織も、創意を欠いてマンネリ化してたり。組織も企業も中身は人間ですが、「物化」し易いもの人間。「人間の物化」とは、「可能性を追求しない」(=官僚化)って事ですから。
「大きく話しは脱線」さん、年金では食べられず生活保護家庭以下です。マスコミの情報は政府や大企業への「情報奉仕」。「思考のワク組」を提供したがります。例えば年金も税金と同じ。それなら税金の配分を逆転すればいい。ここ10数年で富裕層の税率は70%から37%に減税され、医者なら70%は非課税。片や消費税で、年金世代や母子家庭、子供の小遣いからも徴税。要は、どっち側が多く取るか、取られるかです。
また素朴な疑問だけど、TVで団塊の世代の退職金運用云々とやっているが、運用とか年金だけでやっていける人がどれ位いるのか。また、平均寿命まで二十年位あるのに、バンドとか旅行とか趣味に生きるといったことを煽っているが、そんな遊んで暮らせる位みんな貯蓄があるのか。うちの親を見る限り違う(涙)
また、日本は道徳教育を故意に敢えて行って来なかったので、モラル的に問題のある人も多いだろう点も大きな懸念材料ですね。溜め息。。
話が脱線しますが、にしても、老人というのは対処に困る存在ですね。少子高齢化問題の解決方法として、出来るだけ長く働いて貰う。という意見も聞かれますが、能力が落ちているのに果たして働けるだろうか?という疑問を感じます。給与は、一旦退職して貰って減額するのは当然でしょうね。老害という言葉がありますが、本当に注意が必要です。
個人的に考える対応策としては、1.普段から労働問題について知識を貯えておき、信頼出来る外部の組織とも出来れば繋がりを持っておく。2.所属企業の株を持ち、株主になっておく。といった方法は、どうだろうか?という気がしています。その他にも、革新的なアイデアも持っていますが、公表するのは今の処は差し控えておきます。
皆さんのご意見はごもっともの正論ですね。1つだけ気になった点は、頼れる「第二組合」を有志で作ればいい。という主張箇所です。そんなことをしたら、仕事を干される可能性も十分に有り得るなあ。ということだけ意見しておきたいと思います。
確かに、高度成長の時に店をやってた人に聞くと昔は物を置いているだけで、どんどん売れた時代があったと言う。創業者達は、当時のそれを経営、商売と思いこみ、今の時代の流れについて行けず、更に、バカな二代目や三代目が追い打ちをかける。
経済が右肩上がりの時代なら、パイが広がって誰が経営者でも利益は増大。不景気やグローバル化の変化の時こそ、経営者の出番。それを、リストラ三昧で圧縮したり、新しいからって成果主義に飛びついたり、コンサルタント会社に丸投げしたり、そんな経営者の無知・無能・無責任を組合が追求しないとね。戦略無き戦術で、今までの企業文化もズタズタにしてますが、数字には顕われない重大な損失。飼い馴らされても利なし。
パロマや不二家のような同族企業なんかは、役員に対する責任が甘くて、かわりに現場の社員へ責任取らせるんだろうな。何をやっても創業者一族は安泰。息子の専務はジュニアとか呼ばれてさ。
南さんへ。なるほど、成果主義は本来は経営者へのものなんですね。確かに、使われる人が業績を問われて給料を減らされる。でも役員は一定の報酬をもらえるのは確かにおかしい。
大卒公務員もこの表に入れてみて欲しいけどエリア外っす(30歳「額面」420万円。手当込み)。もういい加減フリーター等の平均年収と比較して、「官民格差」などとのたまうのはやめにしていただきたい。そこへいくとマイニュースには本当のことが書いてあると思う次第です。
「素朴な疑問」さん、なるほど日本の経営者達は欧米に比べると役員報酬は少ないです。自分個人の為に労働者を「生かさず殺さず」って事ではないです。しかし彼らは低賃金から利益を出す以外に大した経営手案を発揮してないですからね、誰でもできます。必死に頑張ってるのは労働者、当然です。日本で流行の「成果主義」は、元々は米国の経営陣の成果に対する報酬手法であり、一般従業員への適応は本末転倒。舐められてます。
従業員の拠り所はやっぱり組合しかないですからね、もし組合が頼れない会社側の組織と分かれば、頼れる「第二組合」を有志で作ればいいんです。近代経営とは、従業員の組合と経営者側がしっかり対峙するのが世界の常識。日本のように組合を裏切りの外部人事部化は、前近代的な証拠で日本の恥部。因に組合費は、ストライキの期間中の組合員に払う生活費の意味が大きいです。スト無しなら無意味、返還を議決しては。
組合専従は、自分ばかりが福利厚生施設の保養所で家族サービス。一方、組合費を納めている工場労働者は三交代勤務で、まともな休みすらとれない。公務員やこんな小狡い連中ばかりが甘い汁を啜るこの社会は、本当に先行き暗い。でも、味方を変えて、そっちの立場になれば良いという考えもあるが。後は野となれ山となれ。自分さえ良ければいい。
組合すら天下りと同じ、給料泥棒の組織という実態があるんですね・・・。経営者ばかりが儲け、被雇用者の権利・立場が軽んじられる中、どう生きていけばいいのでしょうか。これから就職を迎える自分は将来が不安だらけです。
組合って、労働者の味方とずっと思っていたが、逆だったんだな。会社にとっては労働者管理、従業員にとっては出世の道具。こういった善人の仮面を被った連中が一番たちが悪い。
うちも労組の存在価値無いっす・・今後は労組についての記事もお願いしたいです。
そもそも組合専従とか言って何も出来ないくせに人一倍の給料をむさぼっている連中のなんと多いことか。まったく話は変わるが、組合の連中は児童相談所の連中と同じ位役立たずだ。
編集部には、継続して大企業の横暴を暴いて欲しいが、組合の悪も暴いて欲しい。このF社はどこか分からないが、ここの組合は組合費をみかじめ料位にしか思っていないのではないか。
私もFの頃、事実上の強制退職勧告だったが組合は全く助けてくれなかった。相談のときは親身な態度を見せていたが、後で上司に聴いた話では相談会から戻ってくるなり馬鹿にする発言ばかりしていたらしい。強制的に徴収されたカンパ金105円も意味不明。大体、なんの説明も無しに組合が人の給与からカンパ金を天引きすることが許されるのか。
F社に勤務していた頃のこと。同僚が退職勧奨により組合に助けを求めたが取り合わなかった。組合の委員長はその後すぐに人事部部長に昇格。経営陣と人事の言いなりの組合。F社は毎月全てのグループ会社から4200円の組合費を取り一体何に使っているのか疑問に思った。4.2K(円/月)×16万人=6.72億円/月俺は会社辞めて幸せだ。
でも、大企業の社長連中って、びっくりする位の役員報酬はもらっていないのでしょ?(数十億円単位)自分個人が大きく肥える訳でなし、なんでそんな南さんの言う様な悪行をするんでしょうね。
日本は経営者側のやりたい放題。労働者全員が負け組。短期雇用者と正社員に分断は21世紀の身分社会化でしょ。経営者側の「分断して統治する」は教科書どおりの模範回答。一方「同一労働には同一賃金」という欧米では当然の事も我が先進国日本の労働者には夢物語。非力な労組が企業の人事部の出先機関化しているのは、日本的企業別労組が戦中の大政翼賛会の名残だから、当然労働者は地獄。「豊かな国の貧しい民」は負続ける?
ブルーカラーの人達にも、一杯給料をあげればいいのに。トヨタなんかあんなに儲かったいるんだから。トヨタの季節労働は本当に大変な労働だと聞くし。そうするれば格差はなくなり、めでたしめでたし。
とは言え、国民1人当たりに直すと1千万円の余裕が仮にあったとしても、すぐに使い果たしてしまう程度の金額ですね。少子高齢化の中、海外諸国と競争をしてうまく社会を運営して行くのは随分と大変なことでしょう。そういった現実を理解した上で頑張るしかありませんね。
むろん、家計や企業にも借金はある訳ですが、差引いて借金よりも資産が多いのは、家計と企業でしょうね。家計は借金が600兆円だったように記憶しています。家や企業によって事情は異なりますけどね。
国と地方の借金は合わせて1千兆円と途方もない金額に昇りますが、家計の所有する土地や建物、金融を合わせた資産はその倍の2千兆円あると見積られているそうです。国の資産が確か800兆円、その他、地方や企業にも資産はあります。借金の処理をどうするかもまた負担の問題ですね。厳しい現実ですが、悲観的になり過ぎて萎縮するのも経済的に見て恐らく良くないと思われます。
最初に書き込みした者です。私は組合のある会社に勤めたことが無かったので分かりませんでしたが、月に6000円とはねぇ。よく我慢していますね?(茶化しじゃなく怒りの気持ち一杯)
何事も決定権を持つ側が強いので、経営者側は好き勝手しがちです。法令を遵守していない場合にでも、歯止めが効かない会社も結構あるのではないでしょうか?労組があって効いている会社はまだ恵まれていますね。ない会社の実態を知れば感謝するかもしれません。不要に高い組合費には大いに疑問がありますけど。
私は組合には入っていません。そもそも入社条件に組合加入を強制する事が疑問です。この仕組みは日本特有とも言え、労働法で保護される労働者の権利を組合法を会社側が掌握するシステムなのです。問題なのは問題意識を持っていない組合員が大半を占めていることです。
世の中からあぶれて生活していたものにとっては衝撃的な数字でした。32才で小企業入社1年目の年収は手取りで300万に満たないです。それでも以前の日給月給に比べれば多い方なので、喜んでいました。この記事を見て、人生を真剣に考えるには遅かった感が否めません。
当社も組合費が高く、社員からは不満が出ています。しかし、やはり会社とトラブルとなったときに組合の力は大きいものです。当社の組合の力が強いので特にそう思うのかもしれませんが・・。一種の保険に近い感じです。問題があればやめてもっと稼げる会社に行けばいいや、というやり手には不要なのかもしれません。ただ、ほとんどの社員は能力的にも運勢的にもそれほど恵まれていないように思います。
強制的に毎月6000円もの額を徴収する割になんの役にも立っていない(むしろ害悪である)労組は本当になくなってほしい。いまどき大手企業に労組なんて必要ないでしょう。
労働組合の存在意義がわかりません。日給7000円の日雇い労働者のことを年収一千万円の専従の組合員が考えること自体おかしい。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい
企画「ココで働け!」トップ頁へ
新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい (無料)
■社員を紹介していただいた方、取材を受けていただいた方には、
会員IDおよび薄謝進呈いたします。ご協力のお申し出をお待ちしております。
ご連絡先E-mail:info@mynewsjapan.com