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職員のリッチなサテライトオフィス「創業サポートセンター」

情報提供
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中は、人が少なく無駄に広い。
 独立行政法人・雇用能力開発機構の「創業サポートセンター」というのがある。その名の通り、起業をサポートするのが本来の目的だが、実際の利用者は少なく、職員たちのためのリッチなサテライトオフィスと化している。創業支援というなら、今まで払ってきた雇用保険料を脱サラ後にすぐに返すようにしたほうが、よほど支援になる。(この記事は動画付きです)
Digest
  • 人の気配なし、テナント料だけで年6,400万円
  • 実態は職員のリッチなサテライトオフィス
  • なぜ支給が3ヶ月後なのか
  • 「職業訓練」というニンジン
  • 膨大な国民負担

東京都港区芝にある「建築会館」。各フロアに様々な業界の公益法人がひしめく天下りの巣窟のようなこの建物の中で、最上階だけ、ワンフロアぶち抜きで貸し切る羽振りのよい団体がある。雇用能力開発機構の「創業サポートセンター」だ。

人の気配なし、テナント料だけで年6,400万円

創業サポートセンターとは、雇用対策の一環として2002年に設立された雇用能力開発機構の中の、職業能力開発総合大学校の出先機関で、起業のための相談・援助、起業家養成セミナーなどを行っている。所長は雇用能力開発機構の大阪センター次長から昇進したプロパー。

11月中旬の火曜日午後4時、建築会館の最上階に上り、中に入ってみた。クラッシック音楽が流れ、優雅な雰囲気を醸し出している。だが、人はほとんど見当たらない。受付のすぐ横には、職員が対応する相談ブースが4つ。日を改めて再度行ってみたが、2人以上が利用していたためしはなかった。

仕切りで区切られたその奥には、起業に関する書籍が並ぶ本棚と、ビデオブースが4つある。が、やはり人はガラガラで、2台のパソコンもインターネットができるだけで、あまり必要性が感じられない。カラフルな椅子とセットになっていて、やたらに見栄えだけはよい。

窓一面からは、東京タワーが至近距離から見える。日が沈むとタワーが光り輝いていて一段と綺麗でリッチな気分になれる。その奥には、セミナールームや、テレビ、ソファーが備えつけられた休憩所、喫煙室などあるが、やはり人は全然いない。どれもゆったりとスペースをとっており、不必要に広いだけだ。このテンナント料は、雇用能力開発機構によれば、年間6,400万円(2004年度)に上る。

創業サポートセンターの正職員は所長を含め6名、臨時職員7名が加わり、計13名。人件費は年間8,200万円(2004年度)。それに、相談援助費として、コンサルタントなどの外部委託料が年間1,400万円(昨年度)かかっている。

実態は職員のリッチなサテライトオフィス

同センターは毎週セミナーを開いている。「価格は1講座7,500円で民間の5分の1」と職員は胸を張るが、当然、差額は、国民が負担することになる。その費用は年間1,400万円(昨年度)。しかも、セミナーは定員12人と随分少ないにもかかわらず、それでも応募人数があまりにも少ないので、頻繁に取り止めているという。

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東京都港区芝にある建築会館。最上階だけ、ワンフロアぶち抜きで、雇用能力開発機構の「創業サポートセンター」が貸しきっている。

例えば「資金調達の相談が多かったので『プロが教える資金調達方法』というセミナーを開いたが、集まりは悪かった…」と嘆く。しかし、どこで融資を受けることができるかくらい皆知っている。そのようなセミナーを開く金があるなら融資をしてくれ、と思うのも当然だ。

他に「どんどん生まれる事業アイデアの発想法」、「売れて儲かるマーケティング戦略」などのセミナーを毎週ひっきりなしに開催しているが、実際の参加人数は少ない。同機構が公表している資料によれば、2004年度実績で定員の半分の350人しか来ていない。

こうした無駄を繰り返してきたこの施設が4年間かけて築いた創業実績は年平均75社。「数は少ないが創業率は10%で高い」と言うが、定義は「センターに一度でも相談や講座にきた者」なので、実態はもっと少ないはずだ。

そうした中、実績を上げるため、同センターは一昨年9月から離職者を対象とした創業支援科というコースを新設。これは、定員15名に対し、3ヵ月間、法律や財務、経営の専門家が個別訓練を無料で実施するというもので、一年間で44人中18人が起業した。これにかかる費用は、昨年度分が受講者29人に対し300万円と安い。

個別訓練といってもマンツーマンでつくわけではなく、受講者は専門家の作成した個別プログラムの下、週に何度か通うシステムなので、人件費は案外かかっていないという。募集倍率は約4倍。無駄なセミナーを続けてガラガラにしておくより有効で、このコースはまだ評価できる。

創業サポートセンターの存在意義について、職員は次のように語る。「ここは都心にあるので、雇用能力開発機構のサテライト・オフィスの意味を持つ」。たしかに、利用者は少ないが、機構の職員たちが集まって何やら会議をしていた。「総合大のサテライトですから、うちは」(職員)。

同センターは、雇用能力開発機構の中の、職業能力開発総合大学の下部機関となっている。総合大学の場所は神奈川県橋本市と東京都小平市。どちらも都心から離れていて不便なので、同センターを頻繁に使っているという。結局、自分たちのためのリッチなオフィスということなのだ。

なぜ支給が3ヶ月後なのか

こうした施設は、税金だけでなく、労働者が支払う雇用保険料とドンブリ勘定で作られている。

雇用保険は、失業期間に支払われる前提なので、創業する人には支給されない。創業には準備期間が要るが、脱サラすると、今まで雇用保険を払い続けていても、返ってこない。創業を目指す人たちに最も必要なのは資金とわかっていながら、資金は渡さず、雇用保険や税金で旧労働省の天下りになる仕事を増やしているのが、この創業サポートセンターだ。

そのような無駄をなくし、脱サラした者にすぐに失業保険を出し、創業支援科のような個別プログラムは3ヵ月で10万円なので有料で支払うようにした方が、よほど創業支援につながる。しかも、失業率の上昇などで、失業保険は、2001年には30才未満の給付日額の上限が8,754円だったものが年々減らされ、2005年度は6,370円にまで下がっており、受け取れる額は若い人ほど少ない。

創業に至るには、まず、進むべき職種、業種を定めなくてはならないが、特に大半の20代にとって、最初に就いた会社は自分の本当にやりたかった仕事というわけではない。ところが、今のシステムでは、一度就職した後、実際に仕事を変えたいと思っても、容易に転職ができない。

結局、転職する時は、十分な転職活動をする時間が取れぬままに一旦失業、というパターンになりがちだ。こうした失業者に対して、失業保険は「自己都合」で辞めたということで、退職から3ヶ月間も経たないと、失業給付がもらえない。つまり、「自分から会社を辞めるような人間に失業保険をやれるか!」 という、会社側の論理に立ったシステムになっている。

会社を辞めた者にとって、この3ヶ月の給付制限は痛い。都内のハローワークで2005年に実施したアンケート結果にも「失業してすぐにお金がこまっていらっしゃる人には、失業給付金を待っていられないと思いますが、どうしていらっしゃるのでしょうか」、「失業者が失業給付をもらうまでなぜ三ヶ月もかかるのか? 職を失った人がすぐに職が見付かるとは思わない。生活だけでなく税金など支払うお金が必要なはずなのに、三ヶ月後というのはなぜなの」といった声が出ている。(平成17年4,5月に行った都内のハローワーク前アンケート調査結果 全日本建設交運一般労働組合調べ)

「職業訓練」というニンジン

一ヶ月の生活費が20万円としても、給付制限の間、60万円以上はかかる。貯金をしていない限り、借金は貯まる一方なので、保険をもらわずに早急に次の職を探すか、フリーターになるか。さらには、「職業訓練」という“ニンジン”に飛びつき、急場を凌がざるを得ない。

職業訓練は、募集に受かると「延長給付」といって、すぐに3ヶ月間の給付制限が解けて、訓練を受けるまでの待機中から訓練期間のあいだ、最大2年間も失業保険が延長してもらえるという、手厚い

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読者コメント

利害一致2008/06/06 12:39
舛添え頼む!2008/02/01 02:51
お願いですから。2008/02/01 02:51
ひどいよ、ここ2008/02/01 02:51
この手の建物って2008/02/01 02:50
タックス・セイバー2008/02/01 02:50
お役人2008/02/01 02:50
やんちゃぼうや2008/02/01 02:50
少年2008/02/01 02:49
この組織2008/02/01 02:49
太郎2008/02/01 02:49
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