私は今年3月まで富士ソフトの社員として、同社の請負契約先であるNTTデータのプロジェクトに常駐で参加していた。請負の場合、元請けが現場社員に直接指示を出すことは労働者派遣法に抵触するが、私は直接指示どころか、ほとんど奴隷扱いだった。作業の進捗だけでなく休日出勤の管理までNTTデータ社員によって行われ、違法性を指摘してもなお、私が辞職するまで止めなかった。SI業界で横行する偽装請負の実態について自身の体験を報告する。
【Digest】
◇NTTデータのプロジェクトに参画
◇逆ギレする富士ソフトA氏
◇「てめえ何やってんだ!」10歳以上年長の私に怒鳴るデータT氏
◇プロマネN氏まで直接指示で罵声
◇契約違反を認めるも、泣き寝入りさせるNTTデータ
◇最後まで態度を改めなかったT氏
◇NTTデータ総務が認めたこと、認めないこと
◇SI業界での偽装派遣の構造
◇「下請けに発注している」というおごり
◇NTTデータのプロジェクトに参画 NTTデータのプロジェクトに参加したのは、2004年秋からだった。KDDI社「au」の携帯電話契約システムを開発する仕事で、要するに、ケータイ契約者の料金管理システムの更新である。auのサービス開始当初から続いているもので、サーバ再構築の話が持ち上がり、私はその設計を担当することとなった。
auの支店には、新規加入者の情報を入力する端末があり、ここから送られた契約者の情報は基幹系サーバに保存される。プロジェクトの目的は、支店の端末ソフトと基幹系サーバの開発を行うことだった。
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プロジェクト責任者のN氏
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プロジェクトは総勢約70名で、顧客先のプロジェクトルームに常駐。NTTデータ本社の社員は全体の2割だけで、残り8割は、下請けや子会社の社員であった。私は技術サポートの仕事が長く、常駐自体、始めてだった。非NTTデータ社員のうち8割は、富士ソフトの社員。プロジェクト全体を統括する責任者として、NTTデータの課長代理(N氏とする、右記名刺)が割り当てられていた。
プロジェクトは3つのグループに分かれており、各グループにはNTTデータの社員3~4人が割り当てられ、グループのリーダーを任されている。
私が担当したサーバは、全てのau支店と接続し、このサーバが止まればauの新規契約やプラン変更がすべて行えなくなるという非常に責任の重い仕事であった。この基幹系サーバの開発グループ(第3Gとする)のリーダーがNTTデータのT氏で、まだ20代後半だった。また富士ソフト側のリーダーとして、私の上司であるA氏が務めた(右上図参照)。私は基幹系サーバの設計を1人で担当した。
KDDIのシステム責任者と打ち合わせ、開発するサーバの要件を固め、その内容を富士ソフト側に伝えるのがT氏の役目だが、この際には富士ソフト側の責任者であるA氏に伝え、更にA氏より自分に指示が来ると理解していた。また、契約上も、そうなっていた。私は派遣社員ではないのだ。
しかし実際に開発が始まると、T氏は私を含め下請企業の社員全員に対し、システム要件の説明だけでなく作業指示、進捗や休日出勤の管理まで行っていたのだ。いわば、私の上司は、富士ソフトのA氏ではなく、NTTデータのT氏になったのである。受託開発なのになぜ?と当初より、疑問を抱いていた。
◇逆ギレする富士ソフトA氏
T氏は、直接指示を出し、小さなミスを見つけては怒鳴った。プロジェクトが開始されて2カ月ほど経った頃、私は上司A氏に対し、「NTTデータT氏より直接私に指示があるのはおかしい、なぜA氏経由で私に指示が来ないのか」を、問い合わせた。
A氏いわく、
「君にリーダー的な仕事を任せたい。よって顧客であるT氏からの指示を、直接受けて欲しい」
ということだった。
「それなら私をリーダに格上げしてくれ」と要求したが、受け入れられなかった。
A氏は、富士ソフト全体を統括する役割もあり、私の所属する第3Gのリーダーをやる暇が無かった、というのが実情だ。A氏が第3Gのミィーティングにも参加せず、リーダーとしての役割を果たしていないことを指摘すると、逆切れされた。それ以上、A氏に言っても無駄であり、富士ソフトに何を言っても対応してくれないのだ、と思った。
A氏は、富士ソフト側の管理者であるにもかかわらず、開発するサーバのことを何も知らないので、T氏としてもA氏に指示するのは時間の無駄であり、直接、私に言ったほうが早いのは確かだ。しかしそれでは、一介の現場開発者に過ぎない私は派遣社員と同じということになり、明確な違法行為である。富士ソフトは、私をリーダーにするか、A氏の関与を明確にするか、どちらかにしなければならなかったのだ。
その開発現場では、もはや完全に、NTTデータ社員から下請けへの直接指示が常態化しており、異を唱えるのも変な目で見られるような状況だった。こうした問題をT氏に伝えれば、激怒して怒鳴り散らすことは容易に予測できた。
◇「てめえ何やってんだ!」10歳以上年長の私に怒鳴るデータT氏
そして、情報システムの納期が近づくにつれ、T氏の対応は次第にひどくなり、私の疑問は不満へと変化していった。
開発の納期まであと1ヵ月となったとき、こんなことがあった。
こうした基幹系システムは1台で稼動しているわけでなく、他の基幹系システムと連動して稼動するのが普通である。私が開発したサーバも、富士通が開発するサーバと連動して動く予定であった。
私が設計したサーバはほぼ完成していたのだが、連動する富士通のサーバに仕様変更が頻発しており、その度にこちらのサーバの実装を修正する必要が発生したのだ。
富士通側より仕様変更の説明を受けるのは、本来、グループリーダーであるNTTデータT氏の役目であるが、連日の遅い時間までの打ち合わせで、かなり疲労しているように見えた。私がT氏から仕様変更の説明を受けるときや、私が進捗の説明をする際、本来の上司である富士ソフトのA氏は、相変わらず同席しない。A氏が作業内容や進捗を把握できているのか、疑問だった。
私は、サーバの実装を期限までに修正し、後日、T氏立会いのもとで富士通側のサーバと接続試験を行なった。しかし予想された結果が画面に出てこなかった。調査した結果、富士通側が提起した仕様とこちらの実装が異なっていることが分かると、突然、T氏が怒鳴ってきた。
「バグじゃねーか。てめえ何やってんだ!」
この原因であるが、富士通側の提供した資料には、暗黙の了承として書かれていない仕様だったのだ。以前からこのシステムに携わるT氏はそれが分かるが、プロジェクトに参加して半年も経たない私が、分かるはずが無い。
このようなT氏の対応は、その後、ますますエスカレートしていった。こちらが作成した報告書等資料が自分の期待するものと少しでも違っていたり、スペルミスがあるだけで、私の席に怒鳴り込んできた。
私は既に社会人10数年を経験している30代後半であるが、T氏は27歳くらいだった。10歳ほども年下の者に毎日怒鳴り続けられ、それを毎日我慢するわけであるから、精神的に大変つらいものがあった。
このような状況が長く続いたが、こちらは下請けであるという弱みから、そのまま何も言えず、ついにシステムの稼動開始日を迎えた。
◇プロマネN氏まで直接指示で罵声
システムの稼動開始はauの料金プランが変更される日の朝7時である。サーバの設計者である私は、前日の夜からKDDI社に泊り込み、サーバのログを監視して、異常が無いことを確認していた。午前9時を過ぎて異常が無いことが分かると、どっと疲れが出た。もうろうとして窓の外を眺めていると、そこにT氏が入ってきた。
「何やってんだ!業務を放棄するな!」
その後、T氏は、急いで開発現場に戻れ、と言ってきた。何かと思えば、既にシステムは稼動しているのに、富士通側が提起した仕様変更の見落としが発覚した、というのだ。つまり、NTTデータ側が変更された仕様を見落としており、それを早急にサーバへ反映しないと、auの業務が停止してしまう。契約処理件数が増える昼前までにこの変更をサーバへ反映しないと、NTTデータがauへ、億単位の金を払う必要が出てくるのではないだろうか。
私は急いでNTTデータのプロジェクト室に戻ると、プロジェクト責任者のN氏が待ち受けていた。
「何分で修正は完了する? すぐ出来るのか?」
自分のクビが飛ぶかもしれない事態に、N氏もかなり動揺しているようだった。
ソース修正後に開発機での動作確認をし、その後に稼動機へ反映するため30分の時間をくれ、と伝えると、「ソースを修正したら教えてくれ」とN氏。
私はソースの修正は1分もあれば終わることは分かっていたが、テストまで一気に終わらせてから、それをN氏に報告すると、
「ソースを修正したら教えろと言っただろ!!」
罵声を浴びせるような勢いで怒鳴られた。直接、指示をしてはいけない契約なのに、プロマネのN氏まで、指示どころか命令したうえで怒鳴るのだ。NTTデータのミスで起きた緊急事態へ早急に対応できたことに対する、感謝の言葉すらない。
元請であることを理由に、下請けの人間に罵声を浴びせて作業を急がせるNTTデータの対応に、私は強い怒りと不満を感じ、このプロジェクトを離れることを決心した。
◇契約違反を認めるも、泣き寝入りさせるNTTデータ
転職活動の末、私はようやく自社製品を開発するベンチャー企業から内定を頂いた。顧客先に派遣され、またこのような思いをするのは嫌なので、規模よりも事業内容を優先させた。
富士ソフトに退職の意思を伝える準備として、私は偽装請負や偽装派遣、職場での嫌がらせの相談に乗ってくれそうな機関として、産業労働局を探し、今回の顛末を全て伝えた。サーバの設計を全て担当した私が抜けることはプロジェクト全体に関わるので、NTTデータから、引き止めや、更なる嫌がらせがある場合の対応をお願いした。
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上:産業労働局の担当者
下:NTTデータ総務部に苦情を言う。「リスクマネジメント推進担当」部長の対応としてはお粗末。 |
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次に、NTTデータによる偽装請負の苦情を、まずNTT労連に言った。そこからNTTデータ総務に話が行き、総務部に直接苦情を言うことになった。今年の1月ごろのことだ。総務部の中村部長(右記)に、今回のこと、プロジェクト責任者のN氏が謝罪しない場合には、産業労働局へ偽装請負の調査を依頼することを伝えた。
中村部長は、富士ソフトとNTTデータの契約形式が「完全請負契約」であること、NTTデータの社員が富士ソフトのリーダーではない社員に直接指示を出すことが契約違反であることも、認めた。しかし、それだけだった。
そこで私は、T氏が私に直接作業指示を出したこと、つまり、あたかも自社の契約社員であるかのごとく扱い続けたことに加え、たびたび罵声を浴びせ精神的苦痛を与えた慰謝料の意を込め、富士ソフトと比較して圧倒的に高いNTTデータ契約社員の給与との、差額分の支払いを求めた。
なぜ契約社員の給与を知っているかというと、私の隣の席に、個人事業主としてNTTデータと契約し、第3Gのプロジェクトに参加している人(Mさんとする)がおり、私と同様な仕事をしていたからだ。私より長くそのプロジェクトに参加していたが、私とスキル等の差はなかった。MさんがNTTデータからもらう報酬は約80万/月なので、年間960万円。
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富士ソフトの給与明細(30代後半社員)。退職月のもので、約3週間分。
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一方、私の年収は、残業、ボーナスを含め
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