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雇用が安定している会社、えげつないリストラを平気でやる会社

情報提供
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図1:雇用安定性の分類と各エリアの特徴
 正社員と非正社員の待遇格差の問題が、にわかにクローズアップされてきた。私はコンサルタント時代に、経営側の黒子として正社員業務の生産性を上げるプロジェクトを進め、リストラの支援までしていたので、このあたりの事情には詳しい。現状の企業の雇用安定性は、何をもって判断すべきなのか。
Digest
  • 正社員業務の厳しさは増す
  • “ヤクザ研修”でリストラ
  • タコ部屋方式によるリストラ
  • いつ人身売買されるか分からない時代に
  • 残っていたら危なかった
  • 60カ月分の加算金
  • オニのように幸せな人生
  • 机と椅子だけにして辞めさせる
  • 3年で選別の外資証券
  • 短期のおいしいバイトだった
  • 再就職先の斡旋も
  • 再スタートの支度金、1千万円也

よく言われるように、日本企業は、工場などブルーカラーの生産性は高い。カイゼンやQCサークルといった世界的に知られる手法でカラ雑巾を絞るような効率化を図ってきた。一方で、ホワイトカラーの生産性は低いと言われてきた。このままでは、経済のソフト化が進むなか、日本の将来は危ういのではないか。そんなところに興味を持ってコンサルティングをしていた。

2000年ごろから経営者にもっともウケがよかったのは、ホワイトカラーの人材最適配置だった。これは、あらゆる業務を「適正な単価」の人に担当させようというもので、要は、単価の安いアルバイトでもできる仕事を、単価の高い正社員がやっているのは人件費の無駄遣いだから、給与に見合った仕事をみんなにやらせよう、という話だ。

一見当り前に聞こえるが、歴史の長い大企業というのは、これがまったくそうなっていない。特に、序列を重んじる日本の大企業では、出世して給与が上がると仕事がラクになるといった、本末転倒なことも起きる。また、前例主義がはびこり、長いあいだ放置された結果、誰も疑問に思わなくなってしまう。

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図2:正社員がやるべき業務、非正社員がやるべき業務の切り分け例

たとえば、ある組織内の活動を、業界知識が必要か否か、業務の専門性が必要か否か、といった定義で分類する(図2参照)。実際にはもっと細かく定義するが、要するに、正社員というのは高度な業界知識が必要で高い専門性を有する仕事に特化し、業界知識が不要な仕事は、派遣、パート、契約社員といった非正社員に移管し、空いた時間で、正社員がさらに高度な仕事をやるなり、余剰社員をリストラすれば、生産性が確実に上がるということだ。

ある製薬の間接部門では、65人の正社員の業務を分析したら、31人分もの業務がパート化でき、置き換えを実行すれば、業務水準を落とすことなく年約2億円の人件費を削減できるという結果が出た。検査業務などは、ほとんどマニュアル化できるのだ。パートは時給1200円ほどだが、現場社員は平均4000円前後にもなるので、置き換えの効果はてきめんだった。

そして、提案しっぱなしではなく、誰をいつ異動させ、または辞めてもらい、代わりに派遣社員を雇い、という実行プランに落とし込み、変革がうまく実施され効果が出るまでを支援する。小泉改革の最終年あたりから突然、格差の問題がマスコミを賑わせ始めたが、大企業がこぞってこういう改革を進めているのだから、非正社員が増えるのは当然の流れだ。派遣法の規制緩和(1999年)で派遣対象業務が原則自由化されたことも、この流れを後押しした。

もちろん雇用第一を掲げる労組は反対だ。労組の機関紙に、私がプロマネを務めるプロジェクトが取り上げられ「リストラ反対」といった見出しが躍ったこともあった。だが、低い生産性を放っておけば国際競争力が落ちて負け組に入り、会社もろとも消滅するのだから、企業が生産性を上げる努力を怠らないのは当然のことで、これは日本のためにもなる。辞める社員に対するセーフティーネット整備は政府の役割であって、企業はボランティア団体ではない。

もはやグローバル規模の競争社会になることは避けられず、格差もグローバル規模で進む。コールセンターなど間接部門が、最低賃金を求めて中国にアウトソースされる時代なのだ。一つの企業内でも担当する業務によって身分や賃金格差が大きく異なっていくことは避けられない。正社員は、常に付加価値の高い仕事のみを求められる。付加価値の高い仕事を自ら生み出せる人材にならない限り、経済的な負け組に入る可能性が高い時代になったのだ。

正社員業務の厳しさは増す

人材最適化プロジェクトの実行フェーズで常に問題となったのは、余った正社員の行き先だった。解雇は、日本の法体系では難しいからだ。結局、無理やり他部署に配置転換して、そこの部署にもとからいる契約社員や派遣社員が押し出される形で解雇されることも多かった。

正社員の過度の雇用保証は、このように不公平の源となっている。いったん正社員になったら解雇しにくいので、現状では、解雇しやすい非正社員から優先的に切らざるを得ないのだ。また、既存のデキない正社員を解雇できないからポストに空きが出ず、より有能でやる気のある非正社員を外部から採用できない、という理不尽も起きている。

2006年12月には、政府の経済財政諮問会議が、解雇ルールの見直しなどを検討する専門調査会の設置を決め、正社員の解雇要件緩和を持論とする八代尚宏・国際基督教大学教授が会長に就いた。正社員が、非正社員と同様に解雇されやすい時代へ

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図3:雇用安定性の見分け方〔代表的な企業名〕

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裏では2008/02/01 02:50
理由なんて2008/02/01 02:50
恥を知らない売国政策2008/02/01 02:50
労基法では2008/02/01 02:50
少子化問題なら2008/02/01 02:50
雇用問題は2008/02/01 02:50
2ちゃん板ですが2008/02/01 02:50
そもそも2008/02/01 02:50
違法行為まで2008/02/01 02:50
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