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富士通 「外側から見た富士通」の余裕

情報提供
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Caa 不良企業
(仕事2.5、生活2.0、対価2.8)
 昨年10月、黒川博昭社長から全社員宛に、「外側から見た富士通」と題したメールが配信された。内容は特段、成果主義について言及したものではなく、中央省庁に出向して戻ってきた社員8人ほどが、会社の外からの眼で富士通の評判を記した座談会のようなものであったが、ベストセラー『内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊』を書いた城繁幸氏は、「ジョークを言えるだけの余裕が出てきた証拠でしょう」と分析する。
Digest
  • 評価者の認識がいい加減
  • 「元気なヤツ」が通る
  • 部内で昇進面接のリハまでやってあげる
  • 下を潰す“優秀な”部長
  • 残業代が生活費に
  • 削られた手当ては回復せず
  • 本体の人件費を減らすリストラ
  • 派遣社員が正社員を刺して自殺
  • 「社長宛メール」と「生気づき」の運用
  • 本部が「会社内の会社」に
  • 誰かの子飼いにならなければ…
  • 歯車の一部の、さらに雑用
  • 社員一人に下請け十数人
  • ダサいF製品を無理やり抱合せ販売
  • 28歳SEが過労死認定
  • 有休とれたら人生豊かになるのに…
  • 3~5割が首都圏以外に配属
  • TPS導入で「見える化」

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余裕の笑みが出てきた黒川社長(富士通社内報5月号)

黒川社長は週1程度で、社員にメールを送り続けている。メール内には3分の1程度が載り、全文を読むには社長のイントラ上のページ「くろさん通信」にアクセスしなければならない。

「あの回は、メタボリック症候群の問題で検診の話が出たので富士通も関連ビジネスに参入すべきだ、など2~3行ずつ散文的に記したものでしたが、(題名に惹かれて)社員の間で、あの記事が読まれている率は高いでしょう。社員のほとんどがあの本を知っているし、あれが契機になって会社が変わったのは事実ですから」(20代営業)

2004年の出版後、不評だった目標設定シートに書かねばならない分量が減った。短期的な数字の割り当てを達成したかどうかを強引に測定する“成果主義”も、確かに改善された。「現在、自分の場合は、評価の50%が受注額、30%がテーマ・プロセス、20%が自己啓発・教育。プロセスを重視するようになって、若干ましになったかな、という感じ」(同)

評価者の認識がいい加減

とはいえ、数字以外で評価するとなると、ますます評価する側の管理職の技量が問われることになり、「フィーリングに頼っていて納得性が低い」というのが若手社員の一致する意見だ。

同社では入社4年目に5級になると、半期ごとの目標管理が始まる。上期(4~9月)の目標について上司と合意するのが、だいたい6月下旬だ。もう期の半分が終わっている。SEの場合、いつまでに開発を終える、といった時間軸の目標が多いが、相対評価なので、それを達成したからといってAがつくわけでもない。

「評価の納得性については、あきらめています。自分は、またBだった。上司からは『僕も頑張ったんだけど、僕はAで出したんだけど、Bだったよ』と言われるだけ。評価は上司の頑張り次第だから、課長が居酒屋から電話かけてきて、『もう仕事やめて来い』と言われたら行くしかない。そういうのにつきあってれば、仕事が終わらなかったときに、『課長が飲みに誘うからだ』となって、評価で手心が加わる」(20代SE)。このSEの場合、こうした社内の飲みが、毎週4回にもなるという。

「課長が、評価者である部長から、評価のフィードバックを受けたときのことです。『どっかBつけなきゃいけないからさ、人材育成につけといたよ』と言われた、と。その程度の認識なんです」(30代営業) 。同社の人事評価が、実にいい加減なものであることが分かる。

上層部になればなるほど業績の数字による評価となるが、売上高や利益がメインで、IBMなどで重視される顧客満足度(CS)が定量的に評価に反映される仕組みはない。ただ、2006年から突然、CS調査が始まったという。「思いつきですよ。突然、我々の知らないところで、取引のある顧客に満足度を尋ねるシートが送られたそうです。プロジェクト単位ではやっていません」(20代営業)

「元気なヤツ」が通る

上司によるフィーリング評価の弊害は、特に、昇格・昇給の際に、顕著に現れる。若手社員にとって、「5級」から管理職リーチとなる「6級」に昇格する時期は、共通の関心事だ。20代で昇格する人もいれば、3~4年遅れる人もおり、同期でも年収に差が付く。ここで遅れると、次の管理職への昇格時期にも響き、40代で富士通本体に残れるかどうかにも影響する。

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富士通のキャリアパス

誰を6級に昇級させるかは、「統括部長」に権限があり、部長にはない。部長の役割は、部内の候補者の“弁護人”や“代理人”となって推薦し、押し込むほうだ。

統括部長の下には、通常、3~5人の部長がいる。たとえば5人の部長が、それぞれの部内で昇級候補者を1人ずつ立てても、枠は3人分しかないのが一般的だ。その場合、誰が通るのか。「基準がないんです。共通認識としてあるものといえば、フィーリングで“元気なヤツ”が

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