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全日本空輸(2004)

情報提供
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Baa:優良企業予備軍
(仕事1.5、生活5.0、対価4.4)
 全日空(ANA)は2004年4月から、全社員の基本給を約5%引き下げた。航空業界で一般社員のベースダウンは初めて。しかし、手厚い福利厚生に守られている社員にとっては「ちょっと不愉快かな」という程度という。そこには他業界の給与カットのような深刻さや危機感、悲壮感はまったくない。


米国でのテロやSARSの影響などで国際線を中心に減便に追い込まれた昨夏、同社はコスト削減のため、2003年8月から毎月30~50人程度の枠で無給の「1カ月休職制度」を開始。だが、社員は危機感を持つというより、まるで他人事のようだった。

「仮に給与が2割減らされても生活にたいした影響はないし、働く時間が減るほうが嬉しいというのが、社内の感覚」(ある中堅社員)。休職希望者数は定員オーバーだった。というのも、同社は福利厚生が充実しており、リストラとも無縁だからである。

都内・近郊に約10カ所ある独身寮・社宅は、いずれも本社から1時間程度の瀟洒なベッドタウンにあり、単身者向け、家族向けともに充実している。駐車場も込みで、独身寮は月1万5千円程度、社宅についても破格で提供される。独身寮・社宅とも8年間まで続けて使用することができる。家族手当も手厚く、配偶者がいる場合は月額2~3万円に加え、ボーナスでも別途、調整手当が付く(なお、特定地上職には社宅制度はない)。

同社に特徴的なのは、レジャー費がほとんどかからなくなることだ。ANAの国内無料航空券は、1人あたり年間50枚使うことができ、家族分としても貰える。

米国など主要都市へ飛ぶ海外チケットも、社員は市価の10分の1程度で、無制限に使うことができる。家族分も同額で入手可能だ。ホテルは、ANAが契約している海外のファイブスターの高級ホテルに、激安で泊まることが出来る。また、「その他遊興費」として1人年間5万円弱を会社が補助してくれることになっている。

このため、週末に「ちょっと札幌にラーメンでも食べにいくか」「中国に、1泊2日で本場の上海蟹でも食べにいってくるか」といったことが、気軽にできてしまう。

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総合職の年収推移

給与そのものは、30歳の総合職の場合、月30万円程度の基準賃金に残業手当、家族手当(既婚者のみ2~3万円)、変則勤務手当(空港勤務者のみ月2~3万円)、世帯調整手当(5~6万円)などがプラスされ、額面で45万円前後。ボーナスは年4ヶ月プラスアルファの計5カ月分弱。年収ベースでは30歳独身者で700万円を超え、これだけでも高いほうだ。

しかし、上述の福利厚生分を金額換算すると、住宅費(駐車場込み)とレジャー費で年300万円弱は上乗せされる。部外者がこれらと同等のサービスを受けるには所得税・住民税を引かれた後の手取りから支出するわけだが、ANA社員は会社の経費としてこれらのサービスを受けられる。従って、給与所得に換算すると、更に価値が高い。30歳で実質年収1,000万円超は、業界を問わずトップクラスに入る。

しかも、これらは家族が増えれば増えるほど、家族手当は増し、住宅は広くなり、手厚くなる。社員の生活基盤は磐石で、不安は全くない。

     ◇     ◇     ◇

同社の評価・報酬制度は、伝統的な年功序列型である。課長や部長といった「役付き」の管理職になることによって給与が一気に上がるということはなく、単純に年次が上ならば給与も高いことがほとんど。組合員の給与テーブルの上限と管理職の給与テーブルの上限が、事実上、同じ程度の水準であるため、必ずしも管理職に昇格しなくても、給与面で差がつかないのである。

このため、退職までの給与が入社時にだいたい見えてしまう。一応、年に2回、5段階評価で上司が部下を評価するが、「相当ひどい人」以外は給与への影響は軽微で、むしろ残業代の多寡のほうが影響が大きい。

管理職になるためには「管理職登用試験」を受けて合格しなければならない。基準が不明瞭で、重要なのは「日ごろの評価」というのが社内のもっぱらの噂だ。35歳でチャレンジする権利が与えられ、3分の1くらいが試験に通り、36歳で管理職になる。管理職になると責任が重くなり、しかも残業代が全く出なくなることから、経済的な価値はほとんどない。管理職になる物質的なメリットは「出張の際に混んでいてもビジネスクラスを使えるくらい」というのが社内の認識。このため、管理職になりたがらない人も実際には多いという。

雇用という点では、出向は多い。50歳前後から、子会社・関連会社への出向が始まる。ただ、転籍は自ら希望しない限りないため、身分は保証される。出向や転籍をしなくとも、ANA本体で空港の現場業務をやっているため、余剰人員の受け皿はたくさんあるという。客室乗務員は結婚を期に依願退職するケースが目立つ。

同社は、国の航空行政に左右される規制産業であり、政府や国土交通省との関係が重要になる。したがって、国交省など官庁からの「天下り」を受け入れざるを得ない。代表的なものとしては、2004年4月に副社長に就任した戸矢博道氏は、旧運輸省出身だ。同社は2003年秋、イラク戦争などの影響で業績が悪化していることから、政府系の日本政策投資銀行に融資を要請、150億円の緊急融資を受けている。

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中堅社員

同社は職種別採用をしており、各職種の中では、同年代での報酬格差はあまり付かない。ただ、「グラウンド・アソシエイト」と呼ばれる地上職の契約社員は、総合職の正社員とほとんど同じ仕事をしているが、条件が圧倒的に悪い。グラウンド・アソシエイトのほうが優秀で、教え役となることもあるくらいだが、身分の違いによる格差が生じている。

近年は「職制にこだわらない積極登用」が進められており、地上職や契約社員にも、総合職と全く同じ仕事を与え、同じ役割を与え始めている。しかし、給与水準や福利厚生など待遇面の格差はそのままで、圧倒的に総合職社員だけに手厚い。


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組織図

採用は職種別で、「総合職事務職」「総合職技術職」「特定地上職」「客室乗務員」「パイロット」の5つに分かれている。

「総合職事務職」で入社すると、最初は大抵、「営業推進本部の東京地区」、「東京空港支店」、「成田空港支店」のいずれかに配属される。典型的なパターンとしては、空港か予約センターに配属され、チェックインや客の誘導、チケット切り作業、端末入力作業など、概ね判断の必要がない決まりきった単調な作業を担当することになる。

一般には、まさか正社員があのような単純作業をやっているとは思われていないし、コスト競争が激しい業界では有り得ないことだが、正真正銘の総合職正社員がチケットを切っていたりするのである。

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※この記事は2005年版 があります
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