加茂第一工場の正面には「技術の大野精工」と掲げられているが、
そこで働く従業員は、QCサークル活動に対する残業代未払いや、
30分単位での勤怠管理による無賃労働など、劣悪な労働環境に苦しんでいる。
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材料偽装の疑惑が発覚した下請けメーカーの大野精工では、主要取引先のトヨタから過酷な値下げ要求とトヨタ生産方式の強要を受けていた。その一方、昨年11月の内野判決によりトヨタでは業務と認められたQCサークル活動が、同社ではいまだサービス残業扱い。組織的に行う始業前15分間の朝礼、終業後15分間のQCは、残業管理が30分単位のため切り捨てられ、未払い賃金となっている。現役社員にトヨタ下請けの職場実態を聞いた。
【Digest】
◇トヨタの過酷な値下げ要求とトヨタ方式の強要
◇業務のはずのQCサークルでサービス残業
◇内部告発に踏み切った理由
◇モラルに欠ける家族経営が生んだ材料偽装疑惑
◇トヨタの過酷な値下げ要求とトヨタ方式の強要 大野精工社員のAさんは、トヨタからの過酷なコストダウン要求の実態を次のように語った。
「確か去年の夕礼の時に、大野精工の社長が話していたのですが、トヨタに1個231円で月間数万個卸していたプリウスの部品がありました。扉に付ける部品で、1台あたり最低4個は付けるものです。
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帝国データバンクによる大野精工の企業データ。売上高は平成18年5月期で88億2,600万円、平成19年5月期で101億7,500万円とあるが、Aさんによれば、平成20年5月期決算の売上高は約116億円だという。7年連続で10%以上の売り上げ増を続ける地元の優良企業だが、急激な設備投資を重ねたため借入が増え、自己資本比率は7%という低さだ。

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しばらくして、その部品を1個220円に下げてほしいとトヨタから要求があり、それでは大野精工の利益が出なくなるので拒否していたのですが、トヨタからの過酷な要求があり、工程の見直しなどを重ねて、なんとか1個218円程度まで値下げしたそうです。
この値段はトヨタが最初に要求した1個220円を下回るので、トヨタは一応納得したのですが、その後で、どうしていままで値下げできなったのかを説明しろ、と言ってきたのだそうです」(Aさん)
このエピソードに加えて、今年の1月にトヨタの調達部が大野精工の工場を視察した際の大野精工幹部との議事録をAさんに見せてもらった。
この議事録は大野精工の社内に掲示されたものだが、「目的」として「今後トヨタとの取引きを増やしても大丈夫か?品質管理体制はどうか?」など、当社の工場の管理状態を確認するために(トヨタ調達部が)来社された。とある。
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今年の1月にトヨタ調達部が来社した際の議事録。大野精工社内に掲示されたもの。「工場内にダンボールは持ち込むな!トヨタの工場内に、ダンボールはない」「トヨタは使わないものは未使用でも捨てる」など、トヨタ方式を強要する内容。

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工場見学の際にトヨタ調達部の社員から発せられた指示として、「工場内にダンボールは持ち込むな!トヨタの工場内に、ダンボールはない」「トヨタは使わないものは未使用でも捨てる」「ラインを踏むな!」など、トヨタ生産方式を強要する内容が羅列されている。
「『ラインを踏むな!』という指示がありますが、無理な話です。工場内では白線を踏まずには作業ができませんから」(Aさん)
議事録の「工場見学後の指摘事項」の最後には、「できないことをできるようにするのが『生技(なまわざ)』。できないと言うなら誰でもできる」という精神論が謳われている。
◇業務のはずのQCサークルでサービス残業 大野精工でもトヨタと同様のQCサークル活動が行われている。
「大野精工では会社の押しつけに等しい形です。賞金はS賞1万円、A賞5千円、B賞3千円、C賞2千円ですが、これは1チームあたりの賞金です。
1チームは20人くらいで、製造部門や熱処理部門はもちろん、事務の人間までもがQCサークル活動に参加しなければなりません」(Aさん)
トヨタの社員で過労死した内野健一さんの裁判で、昨年11月30日に名古屋地裁で言い渡された判決では、トヨタがそれまで 社員による"自主活動" だと主張してきたQCサークル活動が「業務」だと認定された。
その判決を受けて、トヨタはこれまでの方針を改め、QCサークル活動についての残業代を全額支払うことを決め、今年の6月1日から実施した(
「トヨタQCにやっと残業代 遺族「持ち帰り仕事も対象とすべき」)。
ところが、トヨタの下請けである大野精工では、業務のはずのQCサークル活動で、いまだにサービス残業が横行しているという。
「定時は17:15なのですが、毎週木曜の17:00から17:30の30分間、定時15分前に機械を止めてQC活動にはいり、終わり次第片付け、または残業をします。
大野精工は今でも30分単位での給与支給なので、15分の残業になるQC活動は残業に当たりません」(Aさん)
Aさんの話によれば、約600人いる従業員が、毎週1人あたり15分ずつのサービス残業を強いられていることになる
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材料偽装の疑いのある部品が納品されたNSKステアリングシステムズは日本精工の100%子会社であり、日本精工社長の朝香聖一氏は、トヨタ自動車に部品や車体を供給するサプライヤーの連合である「協豊会」の会長である。

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