私は「
若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか
」(東洋経済新報社)という本を出している関係で、就活生に話を聞くこともあり、昨今では、後輩から4月1日に「本日、内定を貰いました」というメールを貰う(これはテレビ局)。選考は1~3月に実施され、既に内々定が出ているわけである。
外資はもっと早く、投資銀や戦略系コンサルでは、12月~1月に実施するウィンタージョブ(インターンシップ)が「天下分け目の関が原」になっており、最大数の内定が出る。
そのインターンシップに参加するためのES(エントリーシート)が第一関門である。つい最近(11月上旬)もゼミのOB会で大学3年生に話を聞くと、「インターンシップに参加するためのESで落とされた」「会社説明会の予約が2分で埋まってとれない」などと焦っていた。
大学4年生はというと、満足のゆく内定が貰えず、大半がまだ活動中だった。大手に決まったのは1人だけ(新日鉄)だという。慶大生でこれだから、いったいどのくらい今の就活は厳しいのか、と思ってしまう。
■プレーヤーが入れ替わらない
この就活における問題の本質は、「新卒の時期にしか良い就職の機会がないこと」だ。だから学生が血眼になって2年生の頃から就活を始めるのである。
中長期的な解決策は明確である。社会的規制を除いた規制を緩和し(経営側の経済的規制・労働側の解雇規制ともに)、同時に市場の失敗を監督する機能を強化し、フェアな競争を促進することによって、市場のプレイヤー(経営側・働く側とも)を流動化させ、就職機会の絶対数を増やすのである。
競争市場において新参者が勢力を伸ばすには、他社から中途採用を活発に行う必要がある。引き抜かれた企業側は、人材不足から新卒者を活発に採用したり、既卒採用も、中途採用も、強化せざるをえない。競争が激しくなると、経済全体のパイも増える。解雇規制を緩和すれば、人材の流動性はさらに高まる。フェアな競争のためには、公正取引委員会や証券取引等監視委員会の機能強化が必要になるので、併せて行う。
一例をあげれば、広告代理店業界は、独占禁止法違反と言われる電通が、コネ入社をはじめとする政治力を駆使して公取の動きをなきものとし、市場を支配することで、健全な競争を妨げてきた。その結果、市場シェアもプレイヤーも長らく固定化しており、入れ替わりが起きない.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
(asahi.com『ウェブ論座』にも出した)