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社会企業家の胡散臭さは「逃げ」にある

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自ら「自分は社会企業家だ」と名乗るような人は、ダメな奴である。経営者としてのスキルアップを怠り、自ら負けを認めているようなものだからだ。

好きなことやってるんだから貧乏で当然だろ、みんなリスペクトしろよ、おれはあくせく稼がないよ、ラクだもんね、社会的意義があるんだからいいんだよ--どうしても、そういう胡散臭さが漂う。一言でいえば「逃げ」だ。

以下、詳細に説明しよう。

私は、いわゆる「社会企業家」や「社会貢献志向」について、『やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!』(光文社)という本のなかで、個人のキャリア形成の視点から、実現に向けた方法論を述べている(右記図参照)。

どんなにやりたいことがあっても、経営という「修行」なくして、いきなり学生から突き進んだところで、労多くして実少なしだ、ということである。そこで、ビジネスモデル構築力と実現したい夢との、複線型キャリアパスを提示した。

■自己満足の世界に逃げるな

まず、若者の社会貢献志向については、右肩上がりの時代の終焉と経済の成熟で説明できる。現在20歳の人は、右肩上がりの時代をまったく知らず、モノやカネが満たされた成熟社会しか知らない。

そのなかで次に人間が求めるのは、マズローの欲求段階説のとおり、「自己実現の欲求」であり、それが企業への所属や昇進といった外部から与えられるものではなく、個人の内発的な動機を満たす社会貢献志向へと向かっているわけである。

このようにして若者の「社会貢献」志向が強まると、サラリーマンにならず、アントレプレナーにもならず、自己満足的な社会貢献の世界にいきなり入る人が増える。それが近年の現象である。

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仕事のやりがいと報酬のトレードオフ曲線

■社会貢献とカネ儲けのトレードオフ

ところが、社会貢献度が高い公共性の高い仕事は、そもそも軌道に乗せるのが難しい。本来なら政府や自治体が行うべき儲からない仕事を、ビジネスとしてやろうというのだから、儲かるわけがない。通常以上の経営力が必須となる。

儲からなければ再投資できないから、事業は拡大しない。収入が低いから貧乏になる。「貧すれば鈍する」で負の連鎖にはまり、本来の目的も果たせなくなる。右図でいうと、右下である。

逆に、公共性の低い仕事は儲かりやすい。最近のグリーやモバゲーを見ているとよくわかる。CMで「無料です」と言って貧乏人をケータイゲームに引き込み、ゲームに熱中させてアイテムを買わせ、ケータイ料金と一緒に請求して、カネを巻き上げる。どちらも、もともとゲーム会社ではなかったが、理念などそっちのけで儲ける方向にシフトした。右図でいうと、左上である。

 このように、社会貢献度の高さと報酬は反比例する。

左上にいる人たちは、右下の人たちが「社会企業家」だと持ち上げられるのが面白くない。

『週刊東洋経済』(2009年12月14日発売号)の特集「30才の逆襲」でも若者の社会企業家志向について議論され、サイバーエージェントの藤田晋社長がインタビューに答えて、「社会企業家は逃げてるように見える」と問題提起していた。

堀江貴文氏もライブドア社長当時、「人をたくさん雇って納税しているだけで十分、社会に貢献している」と繰り返し述べていた。

僕がよく着ている「GAP」のシャツはバングラデシュ製だし、ユニクロもグラミン銀行と合弁で、バングラデシュで現地向け低価格衣料の製造販売と雇用拡大を進めると発表した。やっていることはマザーハウスと変わりない。雇用拡大のインパクトはむしろ大資本のほうが大きいし、マザーハウスの商品は高すぎて現地の人は買えない。

だから、マザーハウスの山口氏が「社会起業家」の『社会』という言葉に違和感を示すのは当然だ

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