入り口の議論はいい加減、終わらせよ
![]() |
正社員と非正規社員の賃金格差。賃金だけでなく雇用の安定性でも圧倒的な格差があり、ほとんど奴隷制度があった時代のごとしなのに、放置されている。 |
2/1のサンプロ『どうする?日本の雇用』。やはり議論する人数というのは、4~5人がよい。だが、相変わらず堂々巡りで核心に迫っていない印象だった。
この問題、下(非正規)を上げて、上(正社員)を下げるしか解決策はありえないし、そのためには、1にも2にも、とにかく「均等待遇」を法制化するしかなくて、その具体論を議論すべきなのだが、その前段階の話を延々とやっているのが滑稽なのだ。
最悪なのが、現状維持派の團野(連合)と財部。團野氏は、雇用流動化絶対反対、安定第一、つまり正社員の既得権をひたすら守り、あとは野となれ山となれ、という、絶望的な論調。ベルリンの壁が壊れる前にタイムスリップしたかのようで、深い絶望感を感じた。
小泉が「自民党をぶっ壊す」と言って構造改革を進めたように、次の民主党政権が「連合をぶっ壊す」と言えない限り、この国はよくならないだろう。奴らは道路族みたいなもので、役割を終えている。さっさと失せろ、と言いたい。
■次に悪質なのが、財部誠一氏。年収500万の期間工と、その1.3倍も貰っているという超レアな派遣社員の話を持ち出して、「路頭に迷っているというのはインチキだ」と真顔で言っていた。
この、大局を見失ったバランスの悪さは、大企業の太鼓持ち取材ばかりしている日経記者の構図にそっくり。広報を通した取材がラクでラクで仕方ないから易きに流れていくのは、食べていくためには仕方ないのかもしれないが、ちょっとイタすぎるだろう。
会社を通さずに現場の従業員ばかりを苦労して探し出して取材してきた私から見ると、大企業の経営者ばっかり取材してPRする報道ばかりしていると、こんなふうに洗脳されてPRマンになっちゃうんだろうな、と思わざるをえない。
■残りの3人(奥谷、城、モリタク)は、少なくとも「上」と「下」の中間に持っていくべきという点では似ているが、森永氏は緊急避難的にワークシェアして景気回復したらまた戻せ、という精神論で、解決策にはまったくなっていない。
国が全企業にワークシェアを義務付けられるわけないし、ワークシェアを1社だけ率先してやったら、優秀な人材から他社に流出して、会社が潰れるだろう。
企業に人格の高さを求めても無意味であることは、『暴走する資本主義』(ライシュ)などを読んで勉強してもらいたい。内部留保を吐き出させる話ばかり言うが、仕事もないのに出社だけしてぷらぷらしている派遣社員に賃金を払い続けるような会社には誰も投資しないから、会社ごと潰れて全員解雇されて終わり。アホか。この人は論理の世界に生きていない。
■城氏の、賃下げ半分補助法は、理想としては分かるが、賃下げによって生まれた原資をそのまま人件費に回すことを義務付けられない問題があるのと、政策プロセスに実現性が乏しすぎる。おそらく「リストラ賃下げ促進法」みたいな名前が『日刊ゲンダイ』あたりの一面見出しにつけられて、残業代ゼロ法案(ホワイトカラーエグゼンプション)と同じように血祭りに上げられて一巻の終わり。
実現可能性を考えると、「均等待遇法案」を通すしかない。均等と言われると誰も反対できないので、政治的に通りやすいのだ。もちろん、従来の正社員と非正規社員の中間の権利(整理解雇や賃下げの難易度)で均等とし、「企業内同一労働同一賃金」で働く時間による差別をしてはならないことを明示して、重い罰則を設ける。
つまり、均等にするということは、自動的に正社員の賃下げ、雇用の流動性強化につながっていくわけだが、「均等」「同一労働同一賃金」という理念を前面に押し出すことで、政治的に、誰も反対しようがないものにするのだ。
もちろん連合は、最後まで手を替え品を替え、議論をすり替え、反対するのは確実だ。これは道路族の江藤隆美や古賀誠が絶対に変わらないのと同じ。変わったら自我が崩壊してしまうから、死ぬまで絶対に変われないのだ。人事院の谷総裁も同様で、妥協したら自分の人生をまるごと否定することになるからできない。
したがって、連合を「抵抗勢力」と言い切り、断固、改革を実行できる政治家が出てくるか否か、にかかっているのだ。
いいかげん、入り口の議論は終えて、現実的な均等待遇(企業内同一労働同一賃金)の議論を進めていただきたい。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
全世界規模で知恵比べが始まった感がありますがキューバやブータンのような小国でも、知恵のある国の方が生き残っていく気がします。
キューバは教育と医療が無料で食料も全国民に配給される唯一の国ですが、医者をベネズエラなどに派遣し見返りに石油を半値で輸入するという、
商売人顔負けのバーター取引を外交でやってます。ブータンは30歳以下の全国民が英語を理解し、若い国王が指導力を発揮しています。
日本のように、政府やマスコミや連合など支配層がここまで無能だと、次世代が21世紀に生き残る確率は低いですね。簡単であたりまえのことが理解できない、そして実行できない、無責任な老人のなんと多いことか!
田原総一郎さんは結構連合の既得権に切り込もうとして1人でがんばっているように思えましたね。朝生でも連合は罪深いと言ってました。
「さて、どうするか?」という議論から抜け出せていないというのは同意ですが、当然国民もそこからまだ抜け出せていません。小泉元首相のような強烈なリーダーシップで注目されるならば、スピードも上がるのでしょうが、自民・民主共にそれが期待できません。
まだまだ入り口議論から進むのは先の話になりそうですね・・・
日本の国力(人口減少)を考えれば、給料や物価はもっと下がるべき。そうすれば、もっと仕事も増えると思う。開発途上国の公務員の月給は100ドルぐらいが普通です。その給料でくらしています。ただし、貧富の差は、ひどいです。
記者からの追加情報