名誉毀損だから記事を削除せよ、という裁判がメディア会社やジャーナリスト個人に対して提起されるのは日常茶飯であるが、今回は斬新な展開として、サーバー会社のみを被告として訴えた点に新規性があるので、いちおう後世のために記録しておこうと思う。マイナーな話題ではあるが、興味のあるかたは末尾より訴状をご覧いただきたい。
原告は、三重県の「株式会社ヒューマン」という派遣会社。被告は、米国のアマゾンウェブサービスインク(アンドリュー・ジャシーCEO)。ジャシーは創業者ベゾスがアマゾンの二代目CEOに選んだ人物(2021年7月5日就任)である。提訴は2020年12月11日だから、まだAWSのCEOだった。
三重の田舎会社が、世界最強の米国クラウドサーバー会社を訴えるという、アリ対ゾウみたいな戦いの構図だ。
ようは、以下の記事が名誉毀損だから削除せよという裁判を、実に不可解なことに、ウチが利用しているサーバー会社だけに言ってきたのである。せめて知らせてくれてもいいようなものだが、姑息な手段に出たものだ。
こんな裁判が成立して判決で削除命令が出たら、表現の自由がなくなる。たとえば朝日新聞の記事が気に食わないからasahi.comが契約しているサーバー会社だけを訴え、朝日の知らぬ間に削除せよという判決が確定してしまうわけだ。すると、法的拘束力が生まれるから、サーバー会社は判決に従うほかなくなる。
そもそもこんな裁判は、当事者性がないのだから、成立しえないはずだ。ところが、なんと東京地裁民事部はこれを受け入れ、実際に裁判が始まってしまったのである。
当事者であるウチが知ることになったのは、提訴から7ヶ月も経った7月21日のことだった.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。