社会起業家特集の「別世界」感
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週刊ダイヤモンド4月11日号 4月6日(月) 発売 |
社会起業家特集ということで、ダイヤモンドを読んだ。
去年、光文社から出した単行本『やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!
第一に、社会起業家のとらえかたが古臭い。社会問題の解決を目的とした活動をしている、というなら、たとえば世代間格差問題の解決を訴える城繁幸氏だって社会起業家だ。ジャーナリストなど、ほとんどボランティアワークなんだから、その多くは社会起業家といえる。だが、この特集では昔ながらのNPOに限定している。
第二に、キャリアの視点がない。これが決定的な問題。成功事例として紹介されているのに、代表者の月収0円とか20万円とか。これだけ年金不安、将来不安だらけの国で、いったい、どうやってそれで生きていくつもりだろうか。いずれも親のスネかじりとか遺産相続とか、特殊な裏事情があってはじめて成り立ってるんだろうね、という感じ。
ほとんどのサラリーマンはこの特集を読んでも、「これじゃ話にならんよ。子供育てらんないじゃん。世の中には変わりモノもいるもんだ」と、見向きもしないだろう。世の中は案外冷たい。「私こんなにエラいことやってるの!」といくら訴えてみたところで、稼げなければ野垂れ死ぬだけだ。
私が本のなかで指摘したように、こうした社会起業家を考えるうえでのキーポイントは、「キャリア構築」と「動機の見極め」である。社会問題を扱う組織の経営は、普通の株式会社の経営より難易度が高いから、経営スキルが不可欠となる。学生が勢いとやる気だけでできちゃうような甘いもんじゃない。それを賛美するような特集は、社会起業家の卵を潰すだけである。
だから、キャリア構築という切り口に絞って、『スローキャリア』などの著作がある高橋俊介氏ら専門家に登場いただいて、「NPOの経営」についてもっと理解を深めるほうが、よほど役に立つ特集になっただろう。
■金子先生が登場しているSFCが社会起業家を輩出している云々だが、卒業生として言えるのは、とにかく入り口の時点から決定的に違う、ということ。つまり、在学中の教育の成果とかはあまり関係なくて、最初から「そういう系のモチベーションを持った人、つまり起業系・NPO系の動機を持った人たち」が集まっているから、卒業後も自然とそうなる、ということ。私も明らかにそうだし。
SFCには、塾高あがりのなかでも、一番上と一番下がきていた。上位2割くらいはかなりデキる感があった。IQの平均レベルでは経済学部のほうが上だが、デキる奴の絶対数ではSFCのほうが多い、というイメージだ。
■いろいろ紹介されているなかでは、「ヨセミテ」は知らなかった。インターネットで公共サービスを改善するのがミッションだという。楽天出身の津田氏と、ミクシィ出身の塚田氏が、ともに株式公開にともなう莫大な財産をもとに作り運営している会社ということで、なるほど、納得。
こういうのはアリだと思うが、あまりにもハードルが高すぎて一般の参考にならない。「千3つ」と言われるIPOの世界で3つのうちに入った人が2人集まりましたじゃ、宝くじの世界だ。
というわけで、私のように複線型キャリアパスを動機とマッチさせてサラリーマンをうまいことエグジットして、社会のお役に立つ仕事をするのがこれからの王道だと思うわけです。詳しくは下記本にて。
やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!
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週刊ダイヤモンドの社会起業家特集に対する反応
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読者コメント
私は社会起業家に期待している一人ですが、まぁどういう事例を見ても、決定的に足りない一つががマネジメント能力だと感じています。社会起業家のマネジメントなんて考えている学者さんはほとんどいませんし、体系だっていません。
ここに一般企業のマネジメントノウハウを入れつつ、整合性を計っていく作業を社会活動と同時に行う必要が、今の社会起業家にはあるので、相当のパワーが必要です。
まずは社会起業家の下について勉強して、そこからスキル・キャリアを構築し、マネジメントを学んだ後、独立した方がいいかもしれません。なんにせよ、まだまだ日本における社会起業家ブームは発展途上です。
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