「おくりびと」は評判どおり
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私は目覚まし時計を持っていない。午前中に1回しか上映してないのでケータイのアラーム機能まで使って起きて観に行ったかいはあった。あっという間に終わった感があり、ひとつも分かりにくいところもなく、鑑賞後感がとてもよい。
このテの、宗教、科学、生死といった人類共通のテーマをジャーナリスティックに描いた社会派映画は私が一番好きなタイプだからツボにハマった。「コンタクト」や「もののけ姫」と同じ部類に入る映画だと思う。深淵なテーマには久石譲の音楽がまたよくハマる。
アイドルグループ「しぶがき隊」のモッくんが白髪が交じる歳になり、立派な俳優になっていてビックリ。しかも、このテーマの企画立案者が13年前のモッくん自身だということで、2度ビックリ。
かなり現場の情報収集や確認を重ねたと思われ、まさに宮崎駿ばりのジャーナリズム活動だ。そして自分で主演してしまうのだから、日本では類のない、日本版ジョディ・フォスターのような男だ、と思った。滝田洋二郎氏がいちおう監督になっているが、この映画の本質を伝えているのは滝田ではなく本木だと思う。
映画の中身はネタバレ自重であまり書かないが、まあ映画だから、それはないでしょ(夫の職業を何ヶ月も知らない…)とか、ちょっと出来すぎなプロットで予想できてしまう展開(失踪親父の最期…)になっていたりするのだが、予想を越える部分の重さが感動を呼ぶのだと思った。
クライマックスを演じる父親役は、峰岸徹だった。私の記憶にあった昔の峰岸徹ではない。そして現実の峰岸氏も、昨年10月に亡くなってしまう。既に撮影の時点で癌が進行していただろうから、演技だけではなかったわけである。
この映画の示唆はいくつもあるのだが、この峰岸氏の役柄が象徴していた。まず、親子関係は長さではなく、深さ・瞬間・密度である、ということ。
そして、命ははかない、死を意識して生きよ、ということ。納棺の場面は何度も出てくるが、そこで遺族や友人、後輩たちからどう送られたいのか。それを考えると日々が変わる、職業観も変わるのである。このテーマはキャリア形成にも深く関わり、私の興味分野だ。以下に、いくつか紹介しよう。
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どれに似たようなことを言っているが、その通りである。この映画は、20代のあるべきキャリア形成にも役立つので、死を意識する年齢になって観るよりも、むしろ若い人のほうが見たほうがよい。
たまたま私が行った回は、平日午前なのに、レディースディだとかで混んでいた。爺さん婆さんやおばちゃんグループが多かったが、観察していると、眼を赤くしている人はほとんど見かけず、サバサバしたものだった。達観しているというか、年とともに感受性は鈍り、涙も枯れていくのかもしれない、と思った。
1万円くらいの価値はあったので、強くオススメしておく。
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読者コメント
今更ですけど、DVDにて視聴しました。良い作品ですね。井沢元彦の指摘する日本人のケガレ思想とかもあって納棺師は誤解されている職業のようだ。しかしマイニュースジャパンで紹介されている悪質な企業の方がよっぽど子供に言えるのその仕事って思えた。
グラン・トリノを見て「自殺の値打ち」がテーマだと感じました。クリント・イーストウッドへの讃歌が おくりびと受賞なんだと思う。岡田有希子のM。でも涙は心の汗。東大的感受性落第のホリエモンにとっては 数十億円の値打ちがあったでしょう。彼の宇宙旅行事業のテーマは ゲーテの「外国に行っても その国のことは分らないが 自分の国のことは分る」なのでしょう。そんな彼にこそ映画を作って欲しい。
涙の枯れた61歳ですが、ジャッキーチェンの新宿インシデントには グッッと来ました。加賀まりこと野獣会してた峰岸徹も出てました。
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