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もう一度非大衆のカリスマへ 『考える技術』

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 世界的な経営コンサルティング会社「マッキンゼー」の付加価値はそのロゴである、とは如何にも皮肉めいた表現である。その域に至るまで、相当の艱難辛苦があったものと推察するが、いずれにしても同じクオリティのレポートであってもマッキンゼーのロゴの有無で、値段が10倍違うといっても言い過ぎではない。

したがってマッキンゼーから独立したコンサルタントは、同じクオリティの仕事、いやむしろポリティカルな側面がない分クオリティの高い仕事の場合が多いと思うが、実態として価格は落ちる。マッキンゼーのロゴがないからである。

前置きが長くなったが、本書の筆者はマッキンゼーのロゴに現在のような付加価値を加えた立役者であり、マッキンゼーのロゴがなくても、個人名で仕事ができる数少ない一人である。

今回ふとしたきっかけで、ゲラ段階での本書を手に取る機会を得た。「ビジネス書史上に燦然と輝く金字塔、あの『企業参謀』から30年」というキャッチフレーズに非常に魅かれて本書を週末一気に読み上げた。

非常に読みやすい。わかりやすい。内容も冴え渡っている。

しかし出版元を知り若干危惧していたが、かなり「売れる本」を意識した大衆迎合型の文体である。要するに(商業的な観点での)読みやすさを重視したために文体に含蓄がない。

少なくとも前述のキャッチフレーズには確実に負けている。内容は大前節だが、文体が(企業参謀の頃の)大前節とはかけ離れている。

話を変えるようだが、氏が都知事戦に負けたのは、大衆性がなかったからだ(少なくとも私はそう思う)。そしてなぜ大衆性がなかったかといえば、氏の孤高とも言える優れた地頭から導かれた主張と、そこに至るまでのあまりにも論理的な合理性が(選挙のマジョリティである)大衆に共感を伴って納得させるほどの説得力を持つものではなかったからだ。

本書には、その反動としての氏の大衆性の重視と「売れる本至上」の出版社の思惑が一致し、結果かつての大前節は姿を消し、平易な読みやすさが行間から垣間見れる。

 現在、筆者は幅広なファンを持ち、商業的にも大成功をおさめている。個人的には、もう一度非大衆のカリスマの観点で、思い切り硬派で、内容的にも文体的にも大前節全開の本を出してもらいたいと強く思う。

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Jota_Shimazaki2012/07/14 01:07

非常に透徹した思考力の持ち主である大前さんの書籍 どれを読んでも切れ味が凄い 今の日本に必要な参謀だと思うが、大衆が彼を理解しないのは残念 [大前研一][マッキンゼー]

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