「会社選びの時点に戻りたい」 過労自殺したウェザーニューズ新入社員の遺族に聞く
京都市内でインタビューに応じるAさんの兄 |
ウェザーニューズ社のプレスリリースはこちら→「本日の提訴に関する当社のコメント」(2010年10月1日)
Aさんの時間外労働は、ウェザーニューズの36協定で現在定められている上限の6倍近い。同社は「同じことが繰り返されない措置を約束する」という和解条件を受け入れている。この措置が、時間外労働は36協定の上限時間を超えないとする内容であると仮定した場合(超えると労基法違反になる)、気象予報部門のスタッフを約6倍に増やす必要があるように思われる。今後、どのような措置が取られるのか、スタッフの方からの情報提供をお待ちしています。情報提供は画面左側にある「情報提供」欄からできます。 |
Aさんが付けていた気象観測ノート(遺族提供) |
◇小学生のときから気象観測に興味
Aさんは2008年4月にウェザーニューズに入社。身長175センチ、体重55キロほど。学生時代はバンドを組んでライブ活動をしたり、友達のために作曲もすればギターも弾き、ミスターチルドレンのコンサートに何度も行くなど、健康で明るい青年だった。よく兄弟でスキーにも行っていた。職業として気象予報士を目指し始めたのは大学生のときで、インターネットで気圧の配置図を見て天気を予想したりもしたそうだ。
兄によると、Aさんが気象に関心を持ち始めたのは小学生のころ。積雪の多い地域の出身で冬が好きだったこともあって雪に興味を抱き、観測を始めた。小学校3〜4年生になると、朝晩の気温を温度計で測り、雪が降れば何センチ積もったかといったことをノートに記録していたという。観測ノートは「10冊以上あるんですよ」と兄は言う。
「気象予報士の試験にパスしたときには、本人も親もすごく喜んでいました。会社が決まったときも、第一志望に入れたということで喜んでいました。入社前の秋くらいから契約社員としてウェザーニューズで働き始めました。忙しかったと思うのですけど、それでも友達とスキーに行ったりとか、好きなことをしていましたね」
2005年3月に大学を卒業し、4月には電気関係の会社に就職。仕事をしながら気象予報士の資格試験を受けたものの不合格になったため、試験勉強に専念するために退社し、翌年の試験で合格した。それから就職活動をおこない、2007年6月にウェザーニューズに内定。さらにこの年の秋から同社で契約社員として働き始め、2008年4月に入社した。
Aさんは、気象予報士になるという夢を叶えていた。
遺族がまとめた月別の時間外労働(訴状から) |
◇時間外労働は6カ月で1000時間
しかし、入社後に待っていたのは、複数のテレビ局向け天気予報の原稿執筆で締切に追われる生活だった。訴状には仕事の内容について、「ライターはいくつものテレビ局を担当し、テレビ局ごとに原稿を作成する。原稿の締切に追われ続け、作業は分刻みとなる」と書かれている。その結果、4月から9月までの6カ月間で時間外労働は1000時間を超えた。1カ月平均にすると約168時間にもなる。
Aさんの死後、遺族が会社資料や同僚への聞き取りなどからAさんの勤務時間を算出したところ、入社した4月だけで79時間10分の時間外労働をしていたことが分かった。もっとも長時間勤務だった7月の時間外労働は232時間54分に達し、前月の6月にも216時間15分の時間外労働をしていた
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第一準備書面の一部。会社の対応について触れている。
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読者コメント
世代が近いし他人事とは思えない。Aさんのご冥福をお祈りします。
民間TVはほとんどここを利用。お天気キャスターは局に派遣され、担当番組だけ責任を持つ感じ。TVKは2番組3人でローテーション。結局裏方は少ない人数で回すという事か。
まったく同じ仕事をしてました。良くも悪くもあの会社は中小企業なんだよね。昔は給与遅配もしてたし。まあせっかく法律を武器に使えるようになったんだからきっちり訴えあげてやってください。
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