オーストリア気象局による3月15日の福島第一原発からの放射性物質拡散のシミュレーション。関東地域に飛散しているのが分かる。色は濃度を示しており、一番右の濃い赤色が濃度が高く、左の青色、紫の方が薄くなる
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悪化しているのかもよく分からない福島第一原発事故。国は20km圏内を避難、20~30km圏内を屋内退避と指示しているが、その算定根拠となるデータが非公開であることが、不安を増幅している。被ばく量の推定を行うにあたり重要なデータは、発電所から出てくる放射性物質の種類と量、風向きや風速といった気象条件だ。本来、そうしたデータをもとにしたシュミレーションがない限り避難指示は出せない。オーストリアの気象局は、福島第一原発から出る放射性物質の拡散を予測するシュミレーションマップを公表している。30km圏外の人たちも、このデータを利用することで、今後の、高濃度な放射性物質が飛散する日時を予測することができ、被ばくを減らすことが可能になる。
【Digest】
◇避難範囲設定の根拠を示さない日本政府
◇関東地方への放射能飛散を予測したオーストリア気象局
◇エックス線検査何回分というのは妥当な比較か
◇何ミリシーベルトで危険なのか
◇原子力情報資料室が情報開示求め政府へ申し入れ
◇オーストリア気象局のシミュレーションデータの見方
→13日~15日のシミュレーションを見る
◇避難範囲設定の根拠を示さない日本政府
福島第一原発事故は、深刻さを増している。地震と津波による冷却システム停止、1号機と3号機の炉内での燃料露出、水素爆発による建屋崩壊、2号機の格納容器損傷、停止中だった4号機の使用済み燃料プールでの出火・爆発。被害状況は日を追うごとに拡大の一途をたどっているといえる。
19日の自衛隊による大量放水と外部からの電力確保が事態収拾の分岐点になる事が期待されるものの、予断を許さない状況が続いている。
発電所から、周辺環境に放出される放射性物質の量も、この間、日に日に増えていると想像される。
1号機の原子炉圧力容器を下げるために放射性物質を含む蒸気の外部放出を始めた12日に、国は避難指示対象地域を半径10kmから20kmへ拡大。15日の2号機格納容器崩壊を受けて20km以上30km以内では屋内退避を指示した。
その後も、4号機をはじめとする使用済み燃料の発火、溶解など事態が進展しているものの、国の避難指示地域は、そのままの状態が続いている。
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図1放射性プルーム 出典:文部科学省原子力安全課原子力防災ネットワーク |
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アメリカは16日に独自のシュミレーションの結果、80km圏内から自国民の退避を勧告した。
発生源である福島第一原発からの放射性物質の放出が増え続ける状況の中、30km以上の地域でも被ばく対策をしなくて本当に大丈夫なのか。
原発災害では、様々な放射性物質が出てくる。気体状の放射性物質は煙のように風によって運ばれ、それを「放射性プルーム(放射性雲)」という。
その中には、気体状のものだけでなく、セシウムやプルトニウムのような粒子状の放射性物質が含まれることもある。
被ばく量の推定を行うにあたり重要なデータは、発電所から出てくる放射性物質の種類と量、風向きと風速といった気象条件など。そうしたデータをもとに国はシュミレーションを行い、避難指示を出していると思われる。しかし、そうした根拠となるデータが公表されないがために、不安を増している。
各県の放射線測定データは公表されるようになったが被ばく予防には役に立たない。
◇関東地方への放射能飛散を予測したオーストリア気象局
そんな中、遠く離れたオーストリア気象局が、日本周辺の気象データをもとに福島第一原発から発生する放射性物質(放射性プルーム=放射性雲)の拡散シュミレーションデータを、事故当日の12日から連日公表している。
記事冒頭の動画は、そのオーストリアの気象局の3月12日から15日かけてのシュミレーションである。
この季節、原発周辺の風は通常、西から東へ、陸側から海側へと流れている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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図2神奈川県川崎地区千鳥局の観測データ 3月15日に急増しているのが分かる |
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図3放射線量と人体への影響 |
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図4 3月17日に参議院議員会館で開かれた原子力情報資料室主催の緊急集会配布資料 |
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