休日が受験勉強に消えるID社の強制“自己研鑚” ITエンジニアを追い詰める“資格ハラスメント”の実態
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東京都千代田区にある、インフォメーション・ディベロプメントの本社(撮影=筆者)。 |
- Digest
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- 国家資格試験不合格で降格処分に
- 「自己啓発」と謳いつつ事実上強制
- 合格率10%台の難関試験
- 「実務には役立たない資格」と仕分け人も指摘
- 「試験勉強は業務時間外に」
- 「自宅への立ち入り調査」も強要か
国家資格試験不合格で降格処分に
「平日の夜は残業で勉強の時間などめったに取れませんし、必然的に土日や祝日を資格試験の勉強に充てなければならなくなりました。家族と過ごしたり、心身を休めるための時間は、もう2年近く持てていません。正直、今は毎日がつらいです。何を希望に生きていけばいいのか、わからなくなっています」
沈鬱な表情でそう呟くのは、中堅社員のITエンジニア・中西さん(仮名)だ。
中西さんの勤めている株式会社インフォメーション・ディベロプメント(本社東京都千代田区、舩越真樹代表取締役社長、以下ID社)は、IT関連のエンジニアを雇用し、メーカーなどクライアント企業に派遣する特定派遣業者。グループ全体で2000人を超す従業員を抱え、2013年3月期には164億4603万円の連結売上高を達成、04年にはJASDAQ上場を果たしている。
そのID社に11年12月19日、「キャリアパス制度」なる人事規程が導入された。ID社では従前より、派遣するエンジニアを技能レベルごとに6階級でランク分けする「等級制」を実施。賃金もそのランクに応じて支払っていた。「キャリアパス制度」の導入によって、この昇格、降格に関するルールが、全面的に改められたのである。
そしてこの査定においてとりわけ重視されるようになったのが、「基本情報技術者」「応用技情報技術者」など、経済産業省が検定する「情報処理技術者」の資格(ITの国家資格)だった。ID社では社員ごとに取得すべき資格を会社側が指定。エンジニアの場合、最も低い6等の社員であっても「基本情報技術者」を取得しなければならないとされ、取得しないうちは昇格対象にすらならなくなった。
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53人の降格者を出した際の通達。4等級→5等級への降格が一番多い。昇格者も96人いるが大半は一番下の5等級への昇格。![]() |
また6等から5等への昇格には「応用情報技術者」、4等級への昇格にはネットワークや情報セキュリティの「高度スペシャリスト資格」と呼ばれる資格が必要とされ、その時点ですでに5等以上の社員がこれらの資格試験に落ちた場合は、下の等級への降格もありうる、と通達された。
実際にID社では、導入から1年を過ぎた2013年7月1日の辞令で、96名が昇格した一方、降格処分となった社員も、実に53名に達している(左記「通達」参照)。
ID社は筆者の取材に対し、「試験の不合格により降格処分になった社員もいるのは事実」と認めているが、一方で「弊社の人事権の裁量の範囲内で行ったものであり、不利益変更にあたるものではない」との認識だという。
「自己啓発」と謳いつつ事実上強制
降格も伴う人事考課の根拠として、現に資格の取得が機能しているにもかかわらず、ID社は筆者の取材に対し、「(資格の取得は)社員自身が個々に行う自己啓発であり」「社員のキャリアアップに役立つものとして推奨している」、「強制にあたるものではない」などと主張している。
だが中西さんらID社の社員にとっては、これは会社から命じられて受けた、業務命令以外の何物でもなかった。
「キャリアパス制度導入の通達が出された翌2012年1月には、品質管理部から資格試験の通信教育・eラーニングを受講するよう求める新たな通達も出されました
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「有料」の研修に参加を要請するかのように読めるアンケート。
情報技術者試験が俎上に載せられた、2011年11月23日の行政刷新会議「事業仕分け」の模様。写真はU-STREAMの行政刷新会議のチャンネルより。
早期退職の募集告知
「自宅への立ち入り調査」を認めさせる誓約書
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合格率一割弱。実際この稼業は土日が稼ぎどきやのに日曜開催、しかも年に二回って、ほんま職人なめくさってますわ。
ふーむ
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読者コメント
前に社長が資格がいかに大切であるかを講和で説明しようとしたら、外部から来た講師が「資格なんてあってもしょうがない」みたいな事言って滅茶苦茶慌ててたな。無いよりはあった方がいいんだろうが、強要じゃなくて自主性って言葉を役員は知らんのかね?
キャリアパスを作ったのは役員Kでしょ?
自分達がまずキャリアパスにのってる国家資格を取って欲しいね。
ブラック企業の本質は「詐欺のような昇進制度」にある
「いずれ昇進」を餌に、過重労働を強いられる構図
上がれるのは数%だけと注釈をいれるべきですね。課長など限られたポストに付く条件とし語学資格を求める会社はあるけど、全社員、各段階都度に資格となると息がつまる。心を壊す社員が出ると、辞めさせることしか考えない。経営陣は自分が生き残るための経営しか考えないのだから、他の社員が幸せになれる筈がない。
相談先は探せばいくつもあるはずです。ネットで『詐欺のような昇進制度』という記事を読み理解が深まりました。あと、前から疑問なのですがMyNewsJapanのコメント欄には会社側に雇われた業者(有料で監視及び書き込みを行うサービス会社)が書き込みしているのではないでしょうか?書き込み業者さんのような書き込みがどれを言ってるかわかりますよね。
社員にとってきついのは無意味だと思うことをさせられること。社外ヘルプライン(法律事務所)に通報しようと思ったら、そこの所長がうちの会社の取締役になっていました。これってうまく機能するの?
資格で打ち止め又は降格。このキャリアパスを作った人の功績は凄い。大量の人を切り、降格させたのだから間違いなく出世コース。人事部の幹部は銀行からの天下りなのね。さすがだ。このキャリアパスによって楽にいらない社員を切れるし適正な賃金にいつでも落とせるようになったようだ。
平成25年度秋期試験の申込は8月26日(月)13時まで!
本日、紙面でも資格ハラスメントの問題が報じられてました。一社だけの問題ではないようですね。資格で追い詰められた結果、過労死に至り、労災が認められた判例も紹介されてました。判例があるということを知っただけで、かなり救われました。何かあったときは、会社からのハラスメント行為を記録して遺書に残しておきます。資格による追い込みの発案者、関わった上司、こんな人権侵害が許されてるのは先進国では日本だけです。
そういえば、ITILの資格をやたら取れ取れって、凄い迫ってきたけど、ITILの試験協会に加入したからなのね。俺ら必要なのは会社のしがらみでの資格じゃなくて、技術なんだよな。
これ以上、慣れないところに異動させないで、一つの技術を
むしろ伸ばさせて欲しい。
IT資格は理系だから、簡単に合格しません。文系の試験よりずっと難関です。そう考えると、一生、資格漬けですね。お客がのぞんでるんですか?国家資格を取れって?疲弊して苦しんでる彼らを使いたがるかな?私は休日は完全にオフじゃないと耐えられませんね。過労死や自殺者が出ないことを祈ります。
銀行や証券、生保・・・いずれも高所得者たちですね。彼らはそれなりのステータスと収入を得ているし、就職する前から業界全体としてそういうところだってことは知ってて、それでも覚悟して入ってるのだから文句は言えないのでは。それにしても記事に書かれてる会社は資格に、どうしてここまで固執するのか。学歴主義じゃなく、資格主義?過剰に感じますね。そんなに価値があるのかな?
派遣元が費用掛けずに派遣先に高く売り込むための仕組みでしょう。しかし人件費が高くなれば派遣先は元を取ろうとそれだけ酷使しませんか?そして派遣先で疲弊・病気になった時はやる気無い、使えない奴とレッテル貼られませんか?もしも、健康管理は自己責任という考えが土台にあってのこの人事制度だとしたら、恐ろしいですね。病気になったら会社が治してくれますか?会社側に治療義務と公表義務がありますか?
資格地獄で実質休みのない業界はIT以外には銀行とか証券、生保・・金融系かな。
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