半世紀前の1952年、利根川下流の洪水被害軽減と1都4県への都市用水供給を目的として計画されたダムが、21世紀の今頃になって本着工されようとしている
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半世紀以上前に国によって計画され、首都圏最後の巨大ダム計画と言われる群馬県吾妻渓谷の「八ッ場(やんば)ダム」。全国一の事業費4,600億円が投じられ、一都五県(わが国人口の約1/4)に水を供給する計画。2007年の本体着工を控え、昨年11月より1都6県の納税者で構成する「ストップさせる会」が同事業への支出差止めなどを求める住民訴訟を一斉に起こしている。
その東京訴訟では、東京都の住民34名が原告となり、都知事・石原慎太郎らを被告として、都に負担金の支出差し止めや損害賠償の請求などを求めており、第3回口頭弁論が6月3日、東京地裁にて開かれた。
⇒訴状
42席の傍聴席は満員。被告側は、公金支出の手続きなどを説明。ダム費用の支出命令の権限は都知事から各担当課長に委任されているため知事に責任はなく、原告は被告とすべき者を誤っている、と主張した。
また、河川法に基づく都の支出について被告側は「国土交通大臣の判断によるもので都知事はそれに不服することができない」と述べ、知事に責任はないとの見解を示した。
裁判後に弁護士会館で行われた原告側の説明会では、被告の言い分である「課長に権限を委任しているため知事を訴えるのはおかしい」との責任の矮小化や、「国交省大臣の判断で知事はそれに従わなければならない」との責任転嫁といえる主張に対し、傍聴者から「納得できない」との声が続出した。
同訴訟は、被告側が、そもそも住民訴訟の趣旨に反したもので事実審理をするまでもなく訴えを退けるべき、と反論。ダム建設の違法性を問えるかどうかの入り口の論議が続いている。
次回期日は7月25日午前11時、東京地裁606号法廷。原告側が被告の主張に反論する。
同訴訟の裁判長である鶴岡稔彦氏は、学生無年金障害者の違憲判決や圏央道の土地収用の執行停止、アフガン人男性の強制送還取り消しなどの画期的判決を下し、国や自治体の関係者に恐れられた藤山雅行氏の下で陪審員をしていた。「そうした意味でも鶴岡稔彦裁判長には期待している」と原告側弁護団の高橋利明氏は語る。
同事業では、「脱ダム」の流れに逆行する国土交通省が2003年11月、八ッ場ダムの事業費を、当初の2,110億円から、全国一の4,600億円に修正する計画変更案を発表し話題になった。関連事業や利息を含めると総額は8,800億円に上る。
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会の試算では、東京都民は約940億円の負担となり、納税者1人あたり1万円を超える計算となる。
⇒裁判資料など
⇒八ッ場ダムを考える会
・国土交通省関東地方整備局(八ッ場ダムを管轄)TEL:048-601-3151
・東京都知事への提言:広報広聴部広聴管理課 TEL:03-5388-3113
