労働組合の功罪 -NTTドコモ-
厚生労働省の「平成15年労働組合基礎調査」によれば、労働組合の組織率はついに20%を割り込んだ。戦後の一時期に50%を超える組織率であったことを考えると、大幅に減少していることがわかる。
だが、ある企業において組織されている労働組合が解散するということは極めて稀である。したがって、組合員数に比べて組織数の減少幅はそれほど大きいものではない。主に製造業を中心とする大手企業の組織率は依然として高い。また、就職人気ランキング上位に位置する多くの企業では、労働組合が組織されている。
就職(もしくは転職)を考えている多くの人は、就職先(もしくは転職先)に労働組合があるのかどうか気にする人は恐らくほとんどいないであろう。実際に労働組合が組織された企業で働いていても、その存在を気にすることはそれほどないこともある。しかし、一言で「労働組合」といってもその影響力は千差万別である。社員の親睦会に限りなく近く、ほとんど存在感のない労働組合もある。一方で、主に旧国営企業や公益企業などでは、労働組合の影響力が強く、働く立場からもその存在を無視できない場合も多い。
NTTドコモは、技術進歩や価格・サービス競争が激しく、一見華やかな携帯電話という業界に属している。しかし、電電公社時代からの体質も強く残しており、間違いなく労働組合の影響力が強い企業でもある。ある意味不思議な企業と言える。
NTTドコモの労働組合は、NTT労働組合の一部である「NTT労働組合ドコモ本部」として位置付けられている。当然のことながらNTTグループの一員である。
ノー残業デーに労働組合の役員が見回りに来て、残業している人がいると早く帰るように促したり、残業する時にはその都度労働組合が事実上の承認を行うというのは、まさにNTTグループに見られる独特な習慣である。残業管理をきちんとしているという点で評価することもできるが、電電公社時代の「時間当たりいくら」という昔ながらの考え方に則っていると言えなくもない。どうしてもやらなければならない仕事であれば、家に持ち帰ってでもやらなければならないのだから。
一方、報酬面についてもNTTグループの一員であることが色濃く出ている。言うまでもなくNTTドコモは、グループの稼ぎ頭である。しかし、人事制度についてはグループ各社ともにある程度共通であることが求められており、賞与についても別会社となって以降横並びの時期が続いてきた。ようやく3年前からグループ内の企業ごとに賞与水準に差がつくようになった。今春闘ではNTT主要8社のうち、NTTドコモとNTTデータを除く6社は4.5ヶ月であるのに対して、NTTドコモは5.48ヶ月プラス業績反映分で妥結した。
この結果を受けて、「いや、もっともらえるはずだ」と捉えるか、「ようやくNTTグループから独立してきた」と捉えるかは人それぞれである。しかしNTTグループの各社の支給月数を基準として、多すぎる、いや少なすぎるといった議論は当面続けられることになるだろう。
見た目よりも意外に伝統的で労働組合の影響力の強い企業。NTTドコモの体質は、よくも悪くもNTTグループから逃れられないと言える。
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読者コメント
確かにこの会社は普通ではないようです。私の友人が就職しましたが、数年で人間が変わってしまいすっかり傲慢になってしまいました。以前は年2回の賞与に加え、特別ボーナスが支給されていたと聞いています。ほとんど公務員感覚みたいですね。
トヨタでもNTTドコモでもそうだし、大企業では多いのかもしれないが、残業の承認なんて組合がするべきではない。残業の法的命令権限はあくまでも経営者にある。組合が承認するということは、結局その組合は企業の下請けだと言うことを示している。組合員は給料削って、労務管理され、企業は組合に押し付けて労務管理の費用を削減しているだけだ。
記事内容で主張しようとしている事は理解できますが、伝統的に労働組合が社内で強固である事と携帯業界が華やかだという広告イメージとが相反するのは当然という主張は理解しにくい論理です。単に元公社であったために失業者が溢れている現在でも経営基盤が強く労働組合が衰えていないという事が主張したい事なのか、それとも企業の広告イメージと現実社内体質のギャップが言いたいことなのか。
サービス向上に期待というが、いったいどんなサービスをして欲しいんだろうか?聞いてみるとみんな何も言わない。言えない。ましてや使い切れてないサービスも多い。それを安い高いと感じるのは個人次第。無意味な価格競争と思うのはナンセンス。実際はもっと安くできるのに高いのもナンセンス。結局もっと価格競争が起きてさらに安くなるでしょうね。
偉そうな社員がとにかく多い。にもかかわらず規模だけで高待遇を得ているのが非常に腹立たしい。孫さんの参入で少しは目を覚ましてくれることを祈るのみ
よくもわるくもソフトバンクの参入は歓迎。ドコモの独壇場を終わらせて欲しい。
消費者ってそんなに偉いんですかねえ?という規範意識にあと7~8年で変わると思う。
社員も消費者だという観点が抜けてます。社員の給料を削れば日本全体の市場が縮小するだけです。ま、メーカからみるとドコモの本社の人はめぐまれているのは確かですけどね。(YRPの技術系はメーカと変わらないけど)
ドコモの労働条件だけ特別厚遇されるということはありえません。社員よりも消費者を優遇するという思想を持たないと企業としての競争力は減退の一途をだどります。市場経済とは本当に厳しいものです。もっと厳しい条件下で必死に働いて下さい。それこそが企業として永続的に成長を遂げるために必要不可欠なことなのですから。
料金下落に伴う収益低下が労働条件、環境の悪化(賃下げ、サービス残業の横行)を引き起こすのではないか?と懸念されるのでしょうが、現在のデフレ環境下では当然の結果です。
低料金で優れたサービスを提供することが、消費者にとって最も有益なことです。自由競争による価格逓減はどの業界でも避けられません。このご時世護送船団的に保護される聖域は無いのですから。
孫さんの言ってる「世界で最も高い料金」をそのまま信じてる人がいるとは。下の人の書いてる通り、日本のサービスは世界のサービスとは全く違うといっていいほど先進的なんです。エリアカバー率をはじめ、世界は、ネット接続すらない携帯がほとんどですよ。ヤフー参入は反対です。各社には、無意味な料金競争よりサービス強化に力を入れて欲しい。安いだけの携帯はこれからの時代にあまり必要性を感じない。
ヤフー参入は歓迎しない。一時的に料金は下がるかも知れないが、技術・インフラを買い叩いて料金を下げ、事業をマネーゲームに使うやり方は、最終的に産業自体を衰退させる。利用者(というより日本人全体)が不利益を被る結果となるだろう。現状がベストとは思わないが、私は既存の事業者の変化に期待したい。「世界で最も高い料金」は孫が煽っているだけで、日本のサービス内容などを考えれば一概にそうとは思わない。
トップが交代し、一応は海外投資の責任をとる形となった。今後は顧客サービスの強化を明言しているし、他社の追い上げの激しさも充分承知しているので、状況は改善されていくだろう。料金も徐々に下がっていくと思う。また、他社が基盤技術を外部に頼っているのに比べ、自社技術で勝負できるのは強み。独自路線に固執してはダメだが、外部の技術をうまく取り込むためにも技術力は必要で、この辺りもドコモに期待している。
ただ、ドコモの本社は、立派なビルと場所にありますね。世界で最も高い利用料金を消費者に請求する一方で、海外の通信会社株への投資で一時は9千億円だったか、過去に例を見ない評価損を上げたのには、目も当てられませんでした。しかも、上が責任を取ることもないですし。悲しいのは、他の通信会社も同様だってことです。日本の携帯電話利用者は、ヤフーの参入に期待するしかないように思います。
ドコモも含め、携帯電話事業を営む会社は、急成長した為、組織体制の整備が追い付いておらず未整備であり、また、従業員も優秀とは言い難いように感じます。あと、花形とか思っている人もいますが、実は、仕事はごく地味で、社風的にも、ごく普通の会社と何ら変わりありません。
ノー残業デーは幻想。組合が見回りに来るときはファミレスに非難し、その後会社に戻りサービス残業するのが現実。仕事は甘くない。KDDIと戦うためにも社員にかかる負担は大きい。そのため、ドコモの離職率はそれなりに高い。
企業内組合に入ったとき、組合が会社当局よりも威圧的だと感じることがあります。私たち若い世代にはオジサン方に「組合が君たちを守っている」と説教されてもピンと来ません。「それより経営者と癒着するのを止めてくれ、組合費をチェックオフで引き落としておいて飲み食いに使ったりしないでくれ」と言いたいと思います。
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