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国民を犠牲にしても、自分と家族だけは守る役人たち

情報提供
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いつも官僚視点のPR記事をトップに据える新聞だが、珍しく生活者・有権者の視点でニュースの価値判断をしている。久しぶりに購入。
 日経新聞が30日朝刊一面トップで報じたスクープによると、建設省が、18年前の87年にアスベストの危険性を認識し、その後は、役人が住む官舎と省庁の建物だけは、使用禁止にしていたことが分かった。一般国民への使用が在庫品も含め禁止されたのは、つい先週(7/26)のことで、新築含む多くのマンションやビルに普通に使われてきており、国民は健康リスクを負わされている。

 企業利益を優先し、一般国民の生命は犠牲にするが、自らとその家族にだけは被害が及ばぬよう、公務員の宿舎と職場だけは、ちゃっかり安全にしていたことが分かった。

記事によれば、国有建物全般の発注を所管する旧建設省の官庁営繕部は1987年9月、各省庁の庁舎や公務員宿舎など国有建物の「建材の非石綿化を進める」方針を決定。その後は、同方針に基づき、石綿製品の使用を排除した。

営繕部は「当時は石綿が社会問題化しており、発注権限のある建物なら、非石綿化が可能と考えた」と説明しているという。

アスベスト(石綿)は発がん性の強い猛毒。クボタの旧神崎工場では、石綿管製造従事者の約5割が疾病にかかり、亡くなったか治療中である。

30年以上の潜伏期間があるため因果関係が証明しにくいが、日本の男性の死因でもっとも多いのは癌、そのなかでも肺癌が増え続け95年から最大の死因となっている一因と考えられる。

 タバコの煙とは異なり「閾値」がない(つまり、このくらいまでなら安全、という範囲がない)ことで知られ、実際に仕事で扱っていた作業者だけでなく、その家族や周辺住民など一般人からも死者が出ており、少量でも危険であることが分かっている。旧労働省は78年に、少量でも中皮腫(悪性の癌)が発生する可能性を指摘していた(7月26日日経新聞)。

 欧州諸国では80年代から禁止措置を講じた。米国でも90年には既に、日本の10分の1程度の使用量 に激減している。米国ではアスベストが使用されている建物は「少量でも健康リスクがある」ことから資産価値が10~15%下がっているという。一橋大学教授でM&A専門家の佐山展生氏は『報道ステーション』で1990年ごろの状況を語り、「M&Aで企業の資産査定をする際、最大の留意事項がアスベストリスクだった」と述べている。つまり役人は、規制の遅れで命だけでなく国民の財産も減らしたことになる。

日本においては、危険性を認識した建設省は、87年にまず自分たちの身の回りだけをいち早く安全化。一般国民向けについては、企業が代替品の開発を進める時間を考慮して規制せず、被害を拡大させた。薬害エイズ事件と全く同じ構図で、日本のお家芸ともいえる「国民の命より企業利益優先」を見事に実践してみせた。

 代替品の販売にめどが立ったことから、昨年10月に製造等を原則禁止したものの、企業が損をしないよう、在庫品は対象外とする抜け道まで用意してあげたために建材メーカーが販売を続け、45万枚あったスレート板などの大半を売り切っていたことが分かった(07月26日asahi.com)。批判を受けた厚労省は7月26日、「行政指導」で売却をやっと禁止している。

90年に利用のピークを迎えていた日本では、目に見える被害はこれから。今なお、ビルの解体現場や、マンションの壁裏、そして老朽化した駅のホーム屋根から飛散する目に見えない粉塵により、国民は着実に殺され続けている。リスク管理の専門家である早稲田大学の村山武彦教授によると、男性に限定しても、今後40年で最低でも10万人の死者が出る見通しだ(週刊『東洋経済』7月30日号)。

もし役人向けと同時期に、国民が利用するものに対しても同様に禁止しておけば、少なく見積もっても何万人かの命は助かった可能性が高い。

 役人は、国民の命よりも企業の利益を優先し、さらに自分とその家族だけは助かりたいという、倫理観ゼロの犯罪的行為を行っていた。政治家も、市民団体の意を受けて国会で質問した中村敦夫・参議院議員 を除き、ほとんど何もしていない。

10万人を殺しても、立法の責任者である政治家も含め、政治・行政、そして企業も、誰も責任をとらないままに、終わろうとしている。イラク戦争の死者数など、かわいいものだ。

 合法的に殺人が行われる、すごい国なのである。

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読者コメント

責任を明確にし処罰を2008/02/01 02:49
TR2008/02/01 02:49
jesus2008/02/01 02:49
編集2008/02/01 02:49
通りすがりの者2008/02/01 02:49
通りすがりの者2008/02/01 02:49
 クロッキー2008/02/01 02:49
匿名希望2008/02/01 02:49
一読者2008/02/01 02:49
一読者2008/02/01 02:49
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記者からの追加情報

これは役人と政治家による殺人事件。日経の記事は、役人が危険性を認識していたことを示す事実。在籍中も含め、日経が生活者・有権者の立場で本物のスクープをしたのは初めて見た。