“子供人間”量産政策の必然的結果
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「若者は社内で正社員のポジションにしがみつき、できれば一生いまの会社に勤めて、社内出世を目指したい。そのためには良心に反する手段でも指示通りの仕事をするしかない。起業なんてしたくない。」
生産性本部が新入社員に対して継続的に行っている調査で、上記のような傾向を示す指標が出ている(有効回答数2348通)。はっきりいって、絶望的である。
サラリーマン(=正社員)というのは将来、自分でやりがいのある仕事で独り立ちするための、20代のキャリアステップ、研修期間にすぎない、というのが私の持論なので、間違った意識を持っていることに非常に残念だ。
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「良心に反する手段でも指示通りの仕事をする」が過去20回で最高となった(40.6%)![]() |
これでは、個人も国も不幸になるばかりだ。日本のサラリーマンなど、独立した大人でさえない。自分で住むところも選べず、仕事内容も選べず、2週間連続で休むのもほぼ無理。自分の頭で正しいと思ったことを押し殺し、ストレスを溜めてでも良心に反する仕事をさせられる。その代償として、毎月一定額の小遣い(給与)を貰う。
ようは、それまで親の扶養下に置かれていた学生が、会社の扶養下に移るだけであって、本質的には子供だ。自分の頭で考えず、親の命令だから、と良心に反する指示にも従う。そういう“子供人間”でいいや、と若者に思わせているのだから深刻である。
その先に何があるかというと、まず個人のモラルは崩壊する。仮に人事部に配属されたとして、悪質なリストラや偽物の成果主義を推し進める担当になっても、会社の指示だから、と大人しく従う。「エノラゲイに乗って原爆落してこい」と言われたら躊躇なく従う。告発本を書いたり、私のようにウェブで会社を批判するなど、もってのほか。つまり、言論の自由がない社会になるということだ。
国についていえば、新規産業が生まれないわけだから、日本の経済社会は、長期縮小・停滞へと、ただただ向かう。グーグル、アマゾン、マイクロソフトといったIT産業は日本では起きず、日本人はそのプラットフォームに組み込まれて搾取され続けるのみである。
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なぜこうなるのかといえば、政府が「正社員になって会社に人生を預けるのが一番のお得だよ」というメッセージを発し続けているからだ。
正社員を過剰保護し、非正規との格差をこれだけ見せ付けられれば、正社員のイスをエグジットしたアウトサイダーになろうと思う人が減って当然。退職金優遇税制を残している限り、リアルタイムに実力で稼ぐよりも会社に定年までしがみついたほうがいい、と思って当然。
あらゆる政策が、正社員としてひとつの会社にしがみつく人間が一番有利になるようにできてしまっていて、それを政府が全く改めようとしない。秋に生まれる民主党中心の新政権では、日本で新産業を起こし育てる、という確固とした理念を打ち出し、ゼロベースで政策を作り直してほしい。
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読者コメント
最近は、東大行ける学力ある生徒がハーバードやオックスブリッジに流れているそうです。富裕層の子女ほど日本を既に捨てているような気がします。
私は、もう日本の政治家や政府には何の期待もしておりません。英語が得意なので日本でお金を貯めて将来は物価が安いインドにでも移住しようと考えております。
いつから夢も希望も無い国になったのでしょうね。
「会社に人生を預けるな、リスクをとれ」と勝間氏は主張する。「サラリーマンは自分の人生を他人に預けるようなものだ」と堀江氏は言う。昭和的価値観を捨てろ、と城は言う。終身雇用を信じるような主体性のない人間を量産しても、よほど無能な人間以外は誰も幸せになれない。大前研一氏は「2兆円を定額給付金に使うくらいなら起業家10万人に1千万円ずつ配ったほうがマシだ」と言う。これらの人たちはそれなりに影響力があるが、いくら正しいことを言っても政策に反映されることはない。経済のマイナス成長が3年くらい続いて、正社員の生活にまで深刻な影響が出てきて、将来のジリ貧傾向が明確に見えてくるまでは、残念ながら気づけないのでしょう。
まあ、ホリエモンが逮捕されて、明らかに量刑不当な判決が出されるのを見たら、起業しようって気は起こらんでしょう。
この国のお上は起業して大もうけしようとする若者を目のかたきにしてボコボコにしちゃうんだなあって感じると思いますよ。
失敗したら、セーフティネットが貧弱だから、再挑戦も困難だし。
実際、不況で中小企業の経営者がどんどん自殺してるしね。
都内なんか電車の人身事故がまた増えてきてるんじゃないの。
おっかなくて起業しようって気にならんわなあ。
それに税制の面でも起業が得とは言えないでしょう。
法人税40% なんて懲罰的な税率。
起業するなら、日本じゃなく、シンガポールか香港ですべきでしょ。
金儲けはいけません。って、言ってるようなもんだよねえ。日本は。
しかしこれでまだまだ若者も中高年も変わらずに城繁幸氏が言う「昭和的価値観」を共有している人が多いと言うことがはっきりとわかりましたね。
やはり破綻にたどり着くまで、この考え方は変わらないのかもしれないですね。ただ、今の若者を批判する気にはあまりなれません。あれだけ非正規バッシングをしていれば、自然と正社員志向になりますし、あの時には起業や個人事業主として働くという視点がスッポリ抜け落ちてたわけですから。彼等の選択肢としては正社員になる以外になかったのではないかと思います。
結局先にビジネスの世界に飛び込んだ我々が若者に対して「正社員になることが最もいいことなんだよ」というメッセージ以外残せていないことは、自省すべき点なのでしょう。
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