イラク報道の森住卓氏が産経児童出版文化賞受賞を拒否
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【受賞作品】 |
イラク戦争に関して産経新聞は、一貫して日米両政府を支持し、攻撃と占領を肯定してきた。一方、受賞を辞退した森住氏は、子どもたちをはじめ、爆弾を落とされる側から徹底して取材している。特に米英軍が使用した劣化ウラン弾の被害報道に関しては第一人者だ。その森住氏の著作に産経新聞が賞を与えたことで注目されていた。
受賞の知らせを聞いた森住氏は「産経新聞の論調は、イラクの独立のために抵抗している人々をテロリストと呼び、アメリカの戦争に協力的です。イラクの子どもたちの事を書いた本が賞をもらうことはとても嬉しいことですが、この新聞社からもらいたくないというのが、率直な私の気持ちです」と自身のホームページで心情を語っている。
以下、森住氏の了解を得て受賞辞退の手紙を掲載する。
第51回産経児童出版文化賞の受賞を辞退させていただきます。「私たちはいまイラクにいます」に登場するイラクの子ともたちの写真は悲惨な戦争のなかでも、それを乗り越えてたくましく生きていました。彼等は無法なアメリカの侵略戦争を身をもって告発していました。空爆された跡に立つ少女や劣化ウラン弾の影響と思われる白血病の少年がじっと見つめる瞳はこの戦争を止められなかった大人たちの責任を静かに追及しているようでした。
この戦争を産経新聞社はどのように伝えたのでしょうか?日本政府のこの戦争に加担する姿勢を一度でも批判したのでしょうか?
この賞を受けてしまったなら、イラクの子どもたちに2度と顔向出来なくなってしまいます。
2004年5月10日
森住 卓
同賞は、産経新聞社が、優れた児童書籍の刊行を奨励する目的で1954年から毎年授与している歴史ある賞。第40回(平成5年度)には、「DAYS JAPAN」の編集責任者である広河隆一氏が「チェルノブイリから ニーナ先生と子どもたち」で受賞している。
森住卓プロフィール(HP内)
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読者コメント
武富士から名誉毀損で2億円請求されたり(寺沢有さん)、盗聴されたり(山岡俊介さん)っていう事実こそが、ジャーナリストにとっての本物の勲章だと思う。
ノーベル賞も、所詮は事前「選挙運動」に加え、特に文科系の場合は選者への迎合(西欧への迎合アジア侮蔑・日本自虐→大江健三郎!)だから、真実とは遠く、正当な評価には程遠いのが実態。
石牟礼道子、ジョンレノン、サルトル、本多勝一、ほかに事例をご存知の方がいましたら教えてください。「もともと『賞』というものはすべて基本的に愚劣なのだろう」(本多)との意見に賛成。
「げんに、たとえば石牟礼道子氏のような良心的作家は、大宅壮一ノンフィクション賞を直ちに拒否した。…レノンや石牟礼氏や、ノーベル賞を拒否したサルトルなどは、やはりケタの違うことを認めざるを得ない。」(「職業としてのジャーナリスト」本多勝一)
「今から17年前(1964年)、あれは私がニューギニア高地(西イリアン)にいたため留守の間のことである。この出版社が、私のルポ『カナダ=エスキモー』に対して『菊池寛賞』を出した。むろん私は知らなかったが、当時の私の上司が代理として受け取った。私自身も、文春の現在のような本質など当時は知るよしもなかったので、帰国してからこれを知っても拒否する気はなかった。」
それから4年後の1969年秋、ジョン=レノンはこの勲章を女王に送り返した。理由を書いた手紙には、ナイジェリア・ビアフラ紛争へのイギリスの介入やベトナム戦争へのイギリスの対米支持などが挙げられていた。
ビートルズは65年秋にエリザベス女王からバッキンガム宮殿でMBE勲章を受けた。同時に受賞した年配者の中にはビートルズ受賞に不満をもらす者が多かった。格が下がるというのだ。これに対しジョンレノンは語った。『文句をつけてる人の中には戦争中の英雄として勲章をもらった人がたくさんいますね。人を殺してですよ。ぼくたちは人々を楽しませたことでメダルをもらったんです。』(ジュリアス=ファスト『ビートルズ』)
賞を受賞することがニュースになることはあっても、受賞拒否が公になることは少ないと思います。今回の場合、産経新聞の報道姿勢に対する批判という意味合いが濃く、記事中で引用されている受賞辞退の手紙は痛快です。林さんのコメントにもまったく同感。 産経新聞がこの著作に賞を与えようとした理由は分かりませんが、「産経」の名前を冠した賞は、戦争を否定する著作・著者にとって、箔にはならないと思います。
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