敷地内禁煙「客待ちタクシーも禁煙」の病院、やる気のない病院
虎の門病院(東京・港区)に掲げられている看板「『禁煙タクシー』のみ許可致します」乗り入れているのは、国際自動車(km) |
2003年に健康増進法が施行され、病院を含めた公共施設での受動喫煙の防止が明記されました。とはいえ罰則もなく運用は現場任せです。
一部の病院では、客待ちタクシーの規制に取り組みはじめ、禁煙車に限定する病院も出てきました。そのひとつ、虎の門病院(東京・港区)を訪ねてみました。
◇虎の門病院「『禁煙タクシー』のみ入場許可」
虎の門病院は、地下鉄銀座線・虎ノ門駅から徒歩3分という便利な場所にありますが、そのすぐ隣のビルは、JT本社(日本たばこ産業)の大きなビルです。
JTのおひざ元で、「客待ちタクシーの敷地内入場は、『禁煙タクシー』のみ許可致します」「禁煙タクシー以外の入場は堅くお断り致します」という方針を打ち出して、これを実行している虎の門病院の英断に全国の禁煙運動関係者は、心から拍手を送っています。
虎の門病院の庶務課によれば、看板「『禁煙タクシー』のみ許可致します」は2006年1月に設置したそうです。
虎の門病院・呼吸器センター内科部長であり、禁煙推進ワーキンググループの委員長である吉村邦彦医師が喫煙調査を実施したところ、職員の16%が喫煙者だとわかりました。禁煙推進ワーキンググループが2005年秋、タバコ問題の啓蒙活動の一環として職員向け冊子でタバコ問題の情報を提供する中、タクシー会社の国際自動車(港区)の担当者と吉村医師が話す機会があったそうです。
そして、禁煙車の導入サポートを国際自動車から受ける中、「患者さんに、いい条件で帰ってもらいたい」と、3カ月の準備を得て、「禁煙タクシー」のみ乗り入れ許可となりました。
最初は、禁煙タクシーが入ってくると職員が注意したり、患者からも「期待して乗ったのに、禁煙車じゃなかった」といった意見もあったりしたようですが、現在では、客待ちタクシーの間でも虎の門病院の噂は広がり、病院への投書でも「禁煙タクシーでよかった」という声も届いているとのことです。
「臭いのないタクシーが当たり前となってきて、よろこばれています」(吉村医師)。しかし、「まだタクシーの供給が追いついていない面があります」と吉村医師は言っていました。
虎の門病院が協力を得ている「国際自動車」では、ボディが黄色と黒の2種類のタクシーがありますが、禁煙車はニューカラーの黒で、「km」のマークの隣に禁煙マークがついています。
国際自動車は、「禁煙タクシーは社会的なサービス」だと言い、「虎の門病院以外の都内の病院にも配車できるようにしている」と言っていました。現在、1,593台のうち約3割が禁煙車で、これからも増やしていく予定だそうです。
しかし、禁煙タクシーの乗り入れを先駆けでやってきた虎の門病院は意外にも、敷地内全面禁煙ではなく、喫煙場所が1カ所あるとのことでした。
◇札幌社会保険総合病院が敷地内全面禁煙
長年、公共の場である「病院」も、セブンスデー・アドベンチスト協会が運営している東京衛生病院など特別な例を除いては、タバコ規制は全く実施されていませんでした。東京衛生病院は、1930年代の発足以来、キリスト教の医療機関として「全面禁煙」で運営を続けていた唯一の病院だったと思われます。
そんな中、本格的なタバコ規制対策を実施したのは、「札幌社会保険総合病院」で、2000年1月1日から“敷地内全面禁煙”を実施し話題となりました。
当時、院長だった佐野文男医師や副院長の秦温信医師が中心となって、1997年に「禁煙対策推進委員会」を設置し、アンケートの実施、禁煙ポスター展などの他、院内の啓発活動や禁煙ビデオの放映など、「禁煙」に向けての環境づくりを積み重ねていきました。
この動きは、日本禁煙推進医師歯科医師連盟の総会やタバコ問題に熱心に取り組んでいる医師のメール網でも盛んに取り上げられ、各地に広がっていきました。
神戸市立中央市民病院では、薗潤医師が積極的に働きかけ、2003年1月1日から、敷地内全面禁煙をスタートさせています。
2003年5月から「健康増進法」が施行されました。その第25条では、受動喫煙の防止をうたっており、「病院」にも対策を求めています。ただ強制力も罰則もない甘い法律で、相変わらず現場任せの状態は続いています。
「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のタバコの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」受動喫煙を完全に防止するには、敷地内全面禁煙とするのが望ましいことは、明らかです。
◇敷地内全面禁煙&未検討「病院」名一覧
現在までに判明している「敷地内全面禁煙」実施病院、分煙実施病院、および検討中、未検討の大手病院を調べてみました。
敷地内禁煙 | 分煙 | 検討中 | 未検討 | |
---|---|---|---|---|
【北海道・東北】 | 札幌社会保険総合病院/北海道大学病院/札幌医科大学付属病院/旭川医科大学病院/東北大学病院/仙台社会保険病院/秋田大学医学部付属病院/福島県立医科大学付属病院 | 岩手医科大学付属病院/山形大学医学部付属病院 | 弘前大学医学部附属病院 | |
【関東甲信越】 | 筑波大学付属病院/日赤医療センター/聖路加国際病院/順天堂大学医学部付属病院(練馬・お茶の水)/東京大学医学部附属病院/東京医科歯科大学医学部付属病院/慶應義塾大学病院/東京衛生病院/昭和大学病院/東京慈恵会医科大学付属病院(本文参照)/東京女子医科大学/聖マリアンナ医科大学西部病院(横浜市)/新潟大学医学部付属病院/NTT東日本関東病院 | 獨協医科大学病院/埼玉医科大学病院/防衛医科大学校病院/千葉大学医学部付属病院/帝京大学病院/東京医科大学病院/東邦大学病院/日本大学病院(板橋)/日本医科大学付属病院/東海大学医学部付属病院/聖マリアンナ医科大学病院/山梨大学医学部附属病院/信州大学医学部附属病院/虎の門病院(本文参照) | 自治医科大学付属病院/群馬大学医学部付属病院/杏林大学病院/日本大学病院(駿河台、練馬)/横浜市立大学付属病院/北里大学病院/ | |
【北陸・東海】 | 富山大学附属病院/金沢大学医学部付属病院/金沢医科大学病院/福井大学医学部付属病院/岐阜大学医学部付属病院/名古屋大学医学部付属病院(2006年度内)/名古屋市立大学病院/愛知医科大学病院/藤田保健衛生大学病院/三重大学医学部付属病院 | 浜松医科大学医学部付属病院 | ||
【関西】 | 滋賀医科大学医学部付属病院/京都大学医学部付属病院/大阪市立大学医学部付属病院/神戸大学病院/神戸市立中央市民病院/和歌山県立医科大学附属病院 | 近畿大学医学部付属病院/奈良県立医科大学/兵庫医科大学病院(禁煙を決定したが) | 京都府立医科大学附属病院/大阪大学医学部附属病院/大阪医科大学附属病院 | 関西医科大学付属病院 |
【中国・四国】 | 徳島大学病院/愛媛大学医学部付属病院/高知大学医学部附属病院(2007年10月1日より)/広島大学病院(2006年度内)/鳥取大学医学部付属病院(2007年4月1日より) | 岡山大学医学部付属病院 | 島根大学附属病院/川崎医科大学附属病院/山口大学医学部付属病院/香川大学医学部付属病院 | |
【九州・沖縄】 | 福岡大学病院/大分大学医学部付属病院/佐賀大学医学部付属病院(2007年4月1日より) | 産業医科大学病院 | 九州大学医学部付属病院/久留米大学病院/長崎大学医学部付属病院/宮崎大学医学部付属病院/鹿児島大学医学部付属病院/琉球大学医学部付属病院 | 熊本大学医学部付属病院 |
医学部附属病院における喫煙対策の実態調査依頼(2006年8月18日) |
タバコを販売している病院は、弘前、岩手医、防衛医、東京医、東海、久留米、大分、宮崎、琉球などがあげられています。
■医学部附属病院84施設における喫煙対策の実態調査
敷地内全面禁煙に変更する病院も出てきています。また慈恵医大のように(後述)敷地内禁煙とアンケートには答えていても、実際喫煙所がある病院もありました。引き続き、たばこ問題情報センターでも調査していきたいと思っています。
◇日大病院駿河台「敷地内禁煙」と言うが・・・
関東近辺で「敷地内禁煙」について未検討である日本大学病院(駿河台)の庶務課に電話で、いつ頃、検討するのかを聞いてみました。
「敷地内禁煙をしています」と最初言われたので、ここもよい方向だと思ってさらに聞いてみると、実態は違っていました。
医学部における敷地内禁煙化の写真集サイトより |
職員も喫煙できないことになっているようですが、吸いたい場合は同じその「喫煙スペース」で吸っているそうです。禁煙タクシー乗り入れについては、「特にやっていません」と言っていました。
「病院は病気を治すところであって、敷地内禁煙だと思います」と伝えてみると、「少しずつ動いています」と庶務の人は言っていました。
さらに、敷地内禁煙について「検討中」である日本大学医学部付属板橋病院では現在、「建物内禁煙ですが、外で吸えるスペース(患者用に1カ所、職員用に2カ所)があります」とのことでした。
「病院の中でも、全面禁煙の方向で話が進んでいます」と言っていました。その話も「いずれ」ということで、時期は具体的ではありませんでした。禁煙タクシーのみ乗り入れについては、「タクシーには規制をかけることはありません」とのことです。
◇「吸う立場」を重視 やる気がない病院
この日大病院の話は、先に虎の門病院を訪ねた後に立ち寄った慈恵会医科大学の「話」とほとんど同じでした。「いずれ」とか「少しずつ」というのは、全くの言い訳にしか過ぎず要するに「やる気がない」ということなのです。
そして、その大きな原因は、院長をはじめ病院管理(経営)の中心メンバーが
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「敷地内禁煙」病院も広がってきている。順天堂大学HP(上)と滋賀医科大学医学部付属病院HPより。
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読者コメント
>セブンスデー・アドベンチスト協会「セブンスデー・アドベンチスト教会」ですよ。
「禁煙」か「喫煙」かのどちらかに決めるのではなく(この件以外の事でも)「100%ダメ」か「100%OK」ではなく、この車は「禁煙ですよ」、この車は「喫煙OKですよ」と分けて、選択権を与えて欲しい。
日常性、常習性、罹病率、受動喫煙等々を含め、ご指摘の諸問題と喫煙との共通点・相違点は掛園さんその他の方々がご指摘の通り。くるま問題ならトヨタ自動車を「狙い打ち」した訴訟があります。「ワタシの目に留まるところで…」とは次元が異なります。ブタ、ウシ、サケもしかり。見えませんか。従来の禁煙ファシズム批判と比べ、比喩や立論が突飛で、問題提起の趣旨、着地点をはかりかねます。ディベートの練習?
最優秀新人賞様。結論を引き延ばしてはいけません。論破されたからといって議論のすり替えをしていると思われるだけですよ
なぜ煙草ばかり狙い打ちされるのか理解に苦しむんです。「結果的に」死の原因になるからという理由では納得出来るわけありません。コンビニ弁当。アメリカ牛。マーガリン。ディーゼル車。マック。工事現場。酒。挙げればキリがありません。それなのに「自分の生活地帯から煙草を排除する」という暴論を展開するなら、ワタシの目に留まるところで自動車走らせないでクダサイ。という理屈も成り立ちますね。
nami様、結論を急いではいけません。あまりの論理に開いた口がふさがらないだけの話です。
建物内で喫煙室した場合、タバコ煙に含まれる発がん物質は換気されるか或いは紫外線等で分解されるまで建物内に入る人すべてが吸い続けます。日本では、他人のタバコ煙で1.9万人/年が殺されています。従って、兵庫県庁舎や茨城県庁舎も建物内にあった喫煙所をすべて閉鎖して、建物内禁煙にしました。みなさんの庁舎はどうですか。建物内禁煙でないとこれは自治体が健康増進法違反している事になります。
発がん性薬物について、「だましている」という表現がありましたが、以下とも比較して下さい。(1)マクドナルドのハンバーガー「食べ過ぎると健康被害に遭います」(2)マーガリン「これはトランス脂肪酸で作られた【食べられる形をしたプラスチック】です」(3)自動車「日本国内の最高制限速度100km/hを超えるスピードが容易に出ますが法令違反と同時に他人を殺す可能性があります。」
発がん性の薬物まで加えた【死の煙】を吸ったために40歳でがんになり亡くなる人が続出すれば誰もたばこなんて吸わないでしょう。当然止める苦しみなんてちっぽけなものになるでしょう。70歳で死ぬ原因がたばこだとして、その恐怖に怯える人がどれほどなのか?例えるなら、「自動車運転すると交通事故起こすから止めろ」と言うのと同じで単なるありがた迷惑です。何をしても何を食べてもリスクは少なからずあるものです。
佐賀県武雄市の公式HPwww.city.takeo.lg.jp/goiken/kaitou/20060613.html
タバコはやめられにくいように発がん性の薬物まで加えてあります。最初からこの事実をタバコパッケージに記載されていたら、タバコ会社に騙されて吸う人はもっとすくなかったでしょう。この事実を元小泉首相は国会で認めました。 このことは、佐賀県武雄市の公式HPにも記載されています。
お話がスタートラインに戻っています。掛園さんを始め多くの方々の賛否両論入り乱れたご意見・ご指摘をリセットする大胆なコメントかと存じます。個人的な体験にかまけず「苦しんでいる人」を捜してください。本日中に見つかります。喫煙が喫煙者の自己責任、本人のみの健康被害でコトが済まないことも既に指摘されている通り。
喫煙してます。たばこを止めたくても止められないで苦しんでる人がいるのならどこに居るのか教えて欲しいです。周囲にはおりません。また、疫学的に健康被害があることは存じておりますが、自己責任ですのでアスベストとは明らかに主旨が異なりますね。アスベストは吸っても美味しくないですから。
WHO(世界保健機関)からの世界禁煙デーのメッセージが届きました。その中に人類が死亡する第一位は栄養失調で、第二位がタバコ煙です。WHOは1973年にアスベストに発がん性がある事を各国に伝えましたが、日本はこれを無視しました。これと同じように、タバコの有害性を日本が無視するなら、多くの犠牲者が出てきます。htt://www.nosmoke55.jp/wntd2007.html
喫煙者は、タバコを吸い始めた動機、理由が何であったか 覚えているのかな~?今ではその呪縛から逃れられず、苦しんでいるのでしょうね。「人間が煙突みたい」、「濃縮一酸化炭素ガスを吸い込んで何が楽しくて面白いのか」と思っていましたから、いままで全くの病気知らずです。いまもうまそうに吸う人は CMに巧みに踊らされていることに鈍感なのでしょうか?
日大板橋に4年前に1ヵ月入院していましたが、夜になると看護師休憩室(病室の隣)から濛々と煙が上っていました。看護師さんもたばこ臭いしたまりませんでした。
ただ今治療から戻りました。ちまたでは酒も合法的に販売されているので、24時間いつでもどこでも飲めることを知って喜んでおります。お客さん、オレは酔ってないってば。
強引な嫌煙権を主張する人はタバコが合法的に販売されていることを知らないか、精神異常的なわがままですよ。掛園さんや渡辺さんはまず病院でしっかり精神治療をしてもらいたいものです。
統計とったわけじゃないですが、知り合いの看護士によると医療関係者の喫煙者って多いらしいです。彼女はストレスのせいといってますが、それが事実なら敷地内禁煙に消極的な理由の一つになりそうですよね。
タバコを吸う人は、タバコ税以上の医療費がかかります。その為、タバコを吸わない人の健康保険税まで値上げしなければなりません。タバコを吸う人は、受動喫煙意外にも医療費の経済的負担までかけています。 病院にいって、今後タバコを吸って保険税があがらないように、病院でしっかり禁煙治療もしてもらいたいものです。
全ての病院が禁煙になるとしたら、喫煙者はまず禁煙治療を行なわないと入院生活が送れないかもしれませんね。全員が自分の意思で禁煙できるなら禁煙外来なんていらないでしょう。少なくとも病院は患者が好んで行くわけじゃないから、喫煙者を受け入れる体制はタバコが流通している間は必要でしょう。短時間の我慢で済むタクシーと病院を一緒にしちゃいけないですよ。
タバコをすわない者ですが、「分煙」されていれば問題はないと思います。でも「分煙」って結構技術的に難しいでしょう。どんなに仕切ってもスキマがあれば煙はもれますからね。JR東日本の特急の全面禁煙(一部を除く)も分煙設備に金を使う必要がないから踏み切ったのでしょう。
禁煙をプロパガンダ商売にしてるのこそ渡辺文学さんじゃないですか(笑)「禁煙」であることは商売に一切つながりませんよ。パイを自ら狭めるだけですから・・・「分煙」なら十分商売になりますけどね。
禁煙を商売に出来るんだなぁ。新しいビジネスモデルだね。
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■たばこ問題情報センター(代表 渡辺文学)
■個人タクシー運転者安井幸一氏が、受動喫煙を強制し続けた東京タクシーセンターを提訴した「タクシーセンター訴訟」第5回口頭弁論:4月25日(水)午後4時~ 東京地裁626号法廷