私は、20代後半から30代前半の大企業現役社員を、会社を通さず独自のネットワークで5年にわたって直接取材、働く側の視点での評価をニュースサイトに連載し、5冊の単行本にまとめている。サイト読者(会員)の平均は31.5歳で、取材先300人強の平均も、ほぼ30歳だ。今を生きる30歳にとってのよい大企業とは、どういう会社なのか。(本原稿は『週刊東洋経済』12/14発売号の原文です)
【Digest】
◇出世シーリングにぶち当たるアラサー
◇資産設計に変更迫られるアラサー
◇社会人10年で独立的な立場になれるか
◇出世シーリングにぶち当たるアラサー
まず、今のアラサー世代は、大企業で新入社員のときから成果主義だった、という人がごく普通に出現する世代だ。ソニーは2004年に家族手当や住宅手当を全廃し、グレード制を導入。当時、院卒24歳で入社した社員は来年30歳になる。同様に、パナソニックと日産が2004年、NECが2002年、三菱商事が2000年に、成果主義を導入している。いわば成果主義しか知らない第一世代が今のアラサーだ。
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朝日新聞の月収推移
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その一方、多くの大企業では、昔ながらの年功序列的な仕組みがそのまま残っている。業界によって成果主義の導入スピードは異なり、ざっくり言うと、競争環境が緩い(規制業種で、代替物の脅威が少ない)ほど遅い。アサヒビールや全日本空輸、朝日新聞社などは、いまだ、ガチガチの年功序列型を維持している。
ちょうど変革途上に入った新聞業界を例に説明しよう。
上記が朝日新聞の現在の年齢別月収で、年功序列により、ピークは50代にやってくる。現場取材に赴くこともなく、「デスク」や「支局長」ポストに座っていれば年収1700万円ほどが保証される典型的な“ノンワーキングリッチ”だ。
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日経新聞の「若手搾取型」制度変更
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日経新聞もほぼ同じ年功序列型だが、人件費負担に耐えかね、ついに来年4月から成果主義を導入することが決まった。「職能給」から「役割給」への移行だ。ポイントは、上位の役割と下位の役割で、報酬水準がクロスしなくなることだ(右図参照)。
コンサル業界や、「役付き」という概念があるメガバンクでは、既に事実上そうなっているが、戦後日本の一般産業界に広く普及した職能資格制度では、社員の能力に対して給与を払う。
そして年齢とともに能力は毎年上がるという考えのもと定期昇給させるため、仕事上の役割にかかわらず給料は上がっていった。
ところが、これは右肩上がりの経済成長で若い層が増え続け、ポストも増え続けることが前提の「ねずみ講」的な世界でしか成立しない.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
