B 不良企業予備軍
【魂抜かれ型】
(仕事3.0、生活4.0、対価2.0)
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「自社株を持ってて含み損を抱えている社員が続出しているんです。自分の周りでは、まずその話題が多いですね。自分はせいぜい数十万でしたが、年配社員のなかには暴落前の時価で1千万円近く持っていた人もいたそうです」(社員)。オリンパスは3年ほど前から自社株取得を奨励するため、5%分を会社が上乗せする制度を導入。100円で105円分の株を買え、財形貯蓄のように毎月の給与と夏冬賞与からコツコツと積み立てられるようにしたため、若手でも実害を被った社員が多かったという。
【Digest】
◇持ち株で含み損
◇言わなきゃよかったのに…という反応
◇技術系はほとんどメディカルに配属
◇事務系は代理店営業
◇「内視鏡冥利に尽きる」とき
◇チャレンジシステムは年10人ほど
◇食事手当てが廃止に
◇狭くて古くて1万円の独身寮
◇計画停電でも出社する愚直な社員たち
◇減った残業、有休はとれる
◇持ち株で含み損
2007年に5千円を超えたこともある株価も、マイケル・ウッドフォード氏の告発と社長解任後に急落。監理銘柄に指定され、1千円を大きく割り込み、一時は400円台に下落。10分の1である。
「だから直接の引き金を弾いたマイケルについては、お前は何なの?という感覚もあって、宮田耕治前専務がオリンパスグラスルーツというサイトを開いてマイケルを社長に呼び戻す活動をしてますが、あまり盛り上がらない。社内では外人アレルギーが強まって、買収されるなら日本企業のほうがいいよね、と話しています」(同)。消化器内視鏡で世界シェア7割とあって、サムスン、キヤノン、テルモなどが噂ではあがっている。
菊川剛・前会長は、1999年に財務担当役員だった当時から、バブル期の財テクによる損失隠しを引き継いだとされ、2001年から10年間、社長に君臨し続けた。その間、2008年の英医療機器メーカー「ジャイラス」買収に際し、ケイマン諸島にあるコンサル会社に660億円の報酬を支払う形で、損失を穴埋めするなどした。
「一番は、雲隠れしている菊川(前会長)ですね。社員の前に出てきて説明しろ、謝れよ、とみんな思っていますよ。社員は自社株で大損してるのに、ジャイラス買収の翌年、2009年の菊川の年収は1億5800万円でしたから、許せません」(同)
今回の損失隠しは、様々な点で日本的な現象だった。まず、菊川氏の実像である。10年に及ぶ長期政権で損失を飛ばし続け、投資家を欺きつつ巨額の報酬を貪る“黒い経営者”、保身のため外国人社長を解雇…といえば、典型的な独裁者のようでもあるが、実際にはそうでもない。
「菊川が絶対君主だから“飛ばし”が発覚しなかった、というわけではないと思います。少なくとも財務部の人はおかしいと分かってたはずなんですが、“言わない空気”がある。無駄な正義感は発揮しないカルチャー。上司に意見をしないし、出る杭は打たれますから。魂を抜かれてた、という感じ」(同)
2000年のITX(旧日商岩井系の情報通信企業)の買収もシナジーがあるとは考えにくく、社内では「なんで?」という感じもあったが、スルー。ジャイラスのM&Aコンサルフィーが相場の10倍以上という、明らかに不審な支出があっても、異論を挟む者はなかった。そしていつしか社内では、菊川と共謀していた森久志副社長(当時)が次期社長になる、と見られていたという。
「若いのに、なぜあのスピードで森が出世しているのか、という不思議さはありました。もしマイケルじゃなくて森が社長になっていたら、今回の件は闇に葬られていたはず」(同)。森氏の出世に不思議さはあっても、マイケルが調査に乗り出すまで、やはり実際に動く者はなかった。外部の監査法人も証券取引等監視委員会も、全く機能しなかった。
魂を抜かれていたのは、経営に対するチェック機能も期待される労働組合も同じだった。
「労組は、何も追及できないんです。数年前、業績がよくなかった年があったのですが、労組からのボーナス額要求に対して、会社側が『もっとあげますよ』という感じで、労組の要求以上の金額を逆に出してきたことがあったほど。労組出身者がエラくなる会社なので、御用組合ですね」(同)。主犯である菊川氏自身が労組委員長の出身という事実が、その魂の抜かれっぷりを雄弁に物語っている。
菊川氏は、メディア対策として、日本経済新聞社の専務を務めた来間紘氏を、2011年6月に社外取締役に据え、少なくとも日経には書かせないよう口止め策を打ち、各マスコミに莫大な広告宣伝費を投じることで、口封じをした。だが、雑誌『FACTA』やフィナンシャルタイムズ(FT)の口を封じることまではできなかった。
「日本のメディアが書き始めたのは、菊川が退任してからです。それまでは、FTから情報が最初に出た。あれは日経出身の来間が頑張った結果でしょう」(同)。社員にとって、来間就任の意味が分からないはずはないが、行動を起した者はなかった。驚くべき、不正容認的なカルチャーである。外国人であるマイケルが調査に乗り出さなければ、未だに損失隠しは明るみに出ていなかった可能性が高い。
◇言わなきゃよかったのに…という反応
『薄々疑問はあっても、モノ言わぬカルチャー』。それが今回の損失隠し問題の本質といえる。そんなカルチャーを象徴する出来事の1つが、オリンパス現役社員の濱田正晴さんによる公益通報の是非を争った裁判だ。
濱田さんは2007年6月、上司が取引先企業からの社員引き抜きを行っていることが不正競争防止法に抵触する恐れがあるとして、社内のコンプライアンス窓口に通報。すると、なんと通報の秘密が守られることなく、濱田さんの直属の上司に情報が漏洩されたあげく、営業職として15年間も積んできたキャリアとは全く別の研究職へ飛ばされ、年収も下げられた。
東京高裁は2011年8月、配転命令は無効だとし、会社側に220万円の賠償を命じる判決を言い渡した。つまり、(権力追従的な)裁判所が認定したほど、濱田さんには正義があった。この4年前の濱田さんは、今回のマイケルの相似形とも言える。社内ではどう見られていたのか。
「濱田さんについては、『べつに、言わなきゃよかったのにね』と.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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