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チューリッヒ、パワハラ隠ぺい&被災者を愚弄する理由で解雇強行

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画像1:チューリッヒにパワハラを隠ぺいされ、被災地を愚弄する理由で不当解雇されたと訴える秋山氏(40歳)
 外資系保険会社チューリッヒ社員の秋山氏(実名、40歳)は、コンプレックスの強い部長に目を付けられ、執拗にパワハラを受けた。社内の内部通報制度で訴えたが、人事部は、それをもみ消した上、「パワハラによる重度ストレス障害」と書かれた診断書の受け取りを拒否。さらに、パワハラ隠ぺいの不正が明るみに出そうになった途端、東日本大震災で、被災地いわき市にある実家に親族捜索のため戻った秋山氏を、突然解雇した。被災証明も出ている実家だが、「親族が深刻な被災を受けたとの虚偽の申告」を理由に欠勤したことが解雇理由とされた。秋山氏は不当解雇だとして今年1月、東京地裁に地位の確認と、慰謝料など約3800万円を求めて提訴した。原告への取材と裁判資料などに基づき、“黒い解雇事件”の実像を詳報する。
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  • 上司に英語ができるふりをしたい部長
  • 小部屋に軟禁してパワハラ地獄
  • 「診断書はいらない」人事部
  • 東日本大震災を理由に解雇
  • 「日本人上層部のパワハラ隠ぺいのため解雇された」
  • 「訴訟を通じて主張していきたい」チューリッヒ

上司に英語ができるふりをしたい部長

秋山氏(実名、40歳、福島県いわき市出身、本人の希望により苗字のみ公表)は、アメリカのフロリダ州のプライベートカレッジ(私立大)を卒業後、スイスに本社をおく保険会社「チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド 日本支店」(以下チューリッヒ)に1998年に入社した。

秋山氏は入社してから、新規契約をとる部署や、客へ送る郵便物を扱う部署などを経て、入社から約3年すると、事故受付センターに配属された。ここは、社内ではクレームチームともいわれる部署で、CMに出ている、事故を起こした時の電話番号に客がかけると応対する部署である。それから約10年間、ずっとこの部署で秋山氏は働いた。勤務地は東京都調布市にある事業所だった。

秋山氏はここで課長補佐としてやっていたが、2009年に突然、パワハラ事件に巻き込まれた。パワハラを実行したのは、直属の部長である諸井(仮名、40代後半頃)という人物だった。秋山氏はこう語る。

「諸井は、何か責任を取らなければいけないものがあると、どちらに転んでもいいように保険をかけることしか考えません。うまくいけば『これは私が指示してやらせたんです』と言い、うまくいかないと『部下が勝手にやったことです』と言います。

いままで諸井から指示を受けて、次の日になると『オレはそんなこと指示していない』とか『知らん』と平気で言われて、責任を取らされて辞めていった人はたくさんいます。それでいて、諸井は、上には、いつもペコペコしています。

それに諸井は、英語がほとんどできません。でも上司には英語ができるふりをしたいのか、メールや書類で、しょっちゅう、私に代筆させていました。諸井は非常にコンプレックスが強い人物で、英語ができないことにもコンプレックスを抱いていました」

こういう人物と長年やってきた秋山氏は、ついに諸井の“餌食”になった。

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画像2:上が帝国ホテル。下がペニンシュラホテル。秋山氏はこうした高級ホテルやレストラン、航空会社に上客として扱われている

ことの発端は、「Zトラスト」という社内の新しいシステム導入を機に起こった。これはチューリッヒの保険金支払いの新システムで、日本支社のCEO(最高責任者)の旗振りで、数十億円かけて2009年に導入したシステムだった。

当時、Zトラストは、いっぺんに全ての部署に導入するのではなく、秋山氏のいる事故受付センターが、テストランをすることになった。この試運転直前の2009年11月中旬、こんなことがあった。

秋山氏の部署は導入に向け、Zトラストのマニュアルを作成していた。そのマニュアルの存在を、Zトラストチームのダレンという外人が知り、こう言ったという。

「このマニュアルはとてもいいから、僕らのところにも下さい」

この言葉を受けた、諸井とは別の上司である枚川(仮名)は、翌日有給だったので、枚川の指示で、秋山氏がメールを送ろうとした。すると、諸井は、突然、鬼のような形相で秋山氏をにらみつけて、こう怒鳴り出した。

「なんでこんなメールを勝手に作成しているんだ! こんなものを事故受付センターで作成して社内に出したら、ハレーションが起きるだろう。何か問題が発生した時、批難の矛先がこちらに向くではないか!」

さらに、諸井は、こう発言した。

「お前が、外で扱われているのと同じように、社内で扱われると思うな!」

この意味について、秋山氏はこう語る。「私は、私生活では、高級ホテル、レストラン、航空会社等で、上客として扱われていました。諸井は割とそういうところが好きでしたので、私にコンプレックスを抱いて、ああいう言葉が出たのだと思います」。

ちなみに、筆者が取材を重ねるなかでも、秋山氏が「上客」であることは窺い知れた。例えば、取材場所を、日比谷の帝国ホテルの会員制ラウンジに秋山氏が指定したり、銀座のペニンシュラホテルのロビーで待ち合わせして、秋山氏のいきつけの店で撮影をしたり、といった具合だった。

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画像3:調布事業所の入るビル

秋山氏のそういうところに、諸井は劣等感を抱いていた。

さらに諸井のコンプレックスについて、火に油を注ぐような事件が起きた。2009年11月18日夕方、チューリッヒ社内でZトラスト導入開始前のセレモニーがあった。その式典の直前に、Zトラスト導入の責任者だった波柴(仮名)から、諸井の内線に電話が入り、こういう依頼があった。

「調布事業所の代表として、秋山君にスピーチをしてほしい」

波柴は、諸井よりも格上のポストの人物。そのため諸井は不愉快そうに、秋山氏に対し、「なんで波柴さんが、お前にスピーチさせたがるのか? お前は波柴さんとよく話すのか? 親しいのか? よく飲みに行ったりするのか?」と問い詰めた。「いえ、全く親しくありません。会社の外で会ったことは一度もないし、Zトラストの会議でも、直接話したことはありません」と返答。しかし、セレモニー会場に向かう間も、ずっと、「なんで、波柴さんがお前を指名するんだ」とぶつぶつ文句を言い、秋山氏がスピーチしている最中も、威圧的に睨み続けていた。

ちなみに、秋山氏のスピーチは、会場で受けた。

そのあとにマイクを取った波柴は、こういってほめたそうだ。

「調布のいいところは、このような“タレント”を持った人材がいるところです。スピーチを依頼したのは、セレモニー開始のたった5分前でしたが、面白いスピーチをしてくれて」

この日以降、諸井の攻撃は加速していく。秋山氏に対する、あからさまな無視、会議に混ぜない、部下がメールで送るときも「秋山には送るな」と指示する、といった「村八分」のパワハラを毎日のように繰り返すようになっていった。

秋山氏は精神的に参ってしまい、2009年12月18日~翌年1月6日にかけて会社を休み、1月27日~2月7日も休んだ。そして、2010年2月11日、心療内科の渋谷もりやクリニックに通院し、「パワーハラスメントの影響による重度ストレス障害」と診断された。「このときは法知識が乏しかったため、診断書を取り、会社に提出することまで思いつきませんでした」と秋山氏は語る。

小部屋に軟禁してパワハラ地獄

さらに、諸井の“コンプレックス”に拍車をかける事態が起こった。2010年3月30日、調布事業所に、外国人2人が突然、サプライズ訪問した。それは日本支社のナンバー2のポートマンと、Zトラストのシステム開発のナンバー1のアマンダ・カーリーという人物だった

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画像4:秋山氏が通った心療内科の渋谷もりやクリニック

画像5:解雇理由書

画像6:都内の信濃町にあるチューリッヒ本社の入るビル

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 2012/02/07 22:14
きよ2012/02/07 18:57
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