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TOTO洗面化粧台、「出火原因」と国に認定されても否定 ずさんな鑑定が示す住宅火災の深い闇

情報提供
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TOTO製の洗面化粧台が出火して自宅が火事になったのに、TOTOは責任を取らない、と訴えるK氏(35歳)。撮影場所はK氏の現在のオフィス。仮眠ベッドが置いてある

福岡市在住のK氏(35歳)は東日本大震災直後の3月19日、自宅マンションが火災となり、家財も一切合財を失った。消防署は、出火原因はTOTO製の洗面化粧台と判定。さらに今年1月には本件につき、消費者庁もTOTO製品を名指しで出火原因と公表したが、TOTOは根拠も示さぬまま「火事の原因は自社製品ではない」と言い張る。その裏には、消防・警察の天下り先となっている「日本科学鑑定」なる調査会社がいた。マンション管理会社と結託し、知識の乏しい消費者につけ込んで、火災が起きた際にTOTOなどメーカーや施工会社に有利になるよう、架空の調査担当官を捏造してまで、火災原因を不明にしていたことが分かった。すべての住宅購入者が知っておくべき「住宅業界の闇」を報告する。

Digest
  • 「ピンで震災を味わったのと一緒」
  • 消防署が「出火原因は洗面化粧台」と判定
  • 架空人物のコメント根拠に「出火原因不明」
  • 実在しないとバレた途端、調査結果を変更 
  • 国がTOTO製品が出火原因と公表
  • 「出火原因はわからない…」TOTO本社

「ピンで震災を味わったのと一緒」

被害に遭ったと訴えるのはK氏(35歳)。K氏は昨年まで、福岡県博多市内にある、15年の付き合いのあるオーナーの派遣会社でサラリーマンをしていた。そして、2011年初頭、そのオーナーが所有し、会社の事務所として使っていた分譲マンションを、約1,700万円で購入する予定で、分割で支払っていき、全額支払うまではオーナーの持ち物をK氏が借りる形で、完済したらK氏のマンションになるという売買契約を結んだ。

そのマンションは、2006年4月に新築した福岡市中央区にあるデザイナーズマンションで、25平米の部屋だった。「風呂場にはテレビもあり、お気に入りの部屋でした」とK氏は語る。

しかし、この引っ越しから2カ月半後、K氏の人生を激変させる事件が起きた。

それは2011年3月19日(土曜日)のこと。この日、K氏は、会社の社長と一緒に食事をして、その後、友人とレストランへ行き、23時頃に帰宅した。K氏は、玄関を開け、「風呂に入ろう」と思って、ガス給湯器のお湯張りボタンを押し、その後、リビングに横になって音楽を聴きながらくつろいでいた。K氏は語る。

「横になって、それからしばらくすると、部屋に煙が入ってきたような気がして、おかしいな、と感じました。でも、まさか、そんなわけがないと思い、それから3、4分経過しました。でも、どうしても気になって、ドアを開けたら、洗面台から煙がボワッと出ていました。

『うわ! これはいけない!』と思い、慌てて洗面台に備えつけてあるシャワーを持って、火を消そうとしました。でも、水を出すと、今度は逆に火が出てきて、そのうち、シャワーの水も止まってしまい、みるみるうちに火の手があがってきました。

『これはいけない!!』と思い、台所の鍋やフライパンに水を入れて、火を消そうとしたのですが、火の手は大きくなる一方でした。

すでに火災警報のベルが鳴り響いていました。私は、携帯電話から、119番に電話した後、部屋の外に出て、『マンションの住人に知らせなければ!』と思い、隣の部屋のドアをドン!ドン!と叩きました。すぐに住人が出てきたので『火事だから知らせてくれ!』と言って、自分の住むフロアの上と下の階の部屋のドアも叩いて回りました。すでにマンション中に警報ベルが鳴っている状態でした。その後、消防車がきました」

こうして火は消防隊が消した。当時の部屋の様子をK氏はこう語る。

「火の出た洗面所のところは全焼で、リビングの家財もドロドロに溶けてヘチマみたいになっていて、エアコンもトロトロに溶けていました」

なお、かろうじて隣の部屋までは燃え広がっていなかったが、自室の家財はほぼ全て焼損してしまった。

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上はK氏が入居していたたマンション。下は火災直後の部屋の状況。上段が消防署が撮影したもの。下段はK氏が携帯で撮影した洗面台とエアコンの写真

火が消えた後、K氏は消防署の調書をとってから、明け方、ビジネスホテルに泊まった。しかし、寝つけず、ゴホゴホと咳き込み、徐々に気分も悪くなってきた。翌日病院へ行くと、「これは煙を吸っていますね」と医師に言われ、約2週間、治療するハメになった。診断書によると、右手首の火傷で全治2週間、気道熱傷で全治1週間、である。

引っ越し直後ということもあり、K氏は家財に火災保険をかけていなかった。そのため、テレビやパソコンといった家電製品や、ベッドやソファーといった家具、スーツやバックなどの生活用品、ゴルフセット、アクセサリーなどを、一瞬にして失ってしまった。さらにプライベートな写真や手紙、パスポート、クレジットカードなども、全てなくしてしまった。その後、K氏は2週間、会社を休んだ。

火災に遭った直後の心境をK氏はこう述懐する。

「ちょうど3月11日に震災があり、火事は3月19日でした。あの当時は震災のことばかり考えている中で火事に遭ったので、なんていうか、被災者の人々と一緒のような気持ちになりました。ピンで震災を味わったようなものなので…他人事ではありませんでした」

なお、火災したマンションはその後、オーナーに返す形になったが、柱もダメになり、生コンも打ち直さなければならない状態で、オーナーが加入していた火災保険の550万円の補償程度ではどうにもならないほど損傷しており、今現在も、人は住めない状態という。

消防署が「出火原因は洗面化粧台」と判定

火災から2週間経ち、K氏は職場に復帰した。その後、「日本科学鑑定」という会社が「火災現場の検分をしたい」というので、K氏は何度も立ち会った。「日本科学鑑定」とは民間の鑑定会社で、後述のように、にわかには信じられない程、いい加減な鑑定をした会社である。

同社は、マンション管理人との火災保険の契約により、火災鑑定をしていた。日本科学鑑定の本社は福岡市博多区内で、同社HPによれば、「消防OB、警察OB」による「徹底した鑑定、調査」のウリにしているそうだ

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消防署の「火災原因判定書」

上がTOTOの文書。舌が日本科学鑑定の「調査報告書」

日本科学鑑定の「再調査報告書」

消費者庁が2012年1月20日に公表した「消費生活用製品の重大製品事故に係る表」。TOTO製品の型番、メーカー名が明記されている。下は、くだんの洗面化粧台LMJ951B3H

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読者コメント

こう2012/02/20 22:57
加藤 貴敏2012/02/20 13:11
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長らく被害者を実名報道していたが、本人より「就職活動で支障が出る」との申し出を受け、イニシャルに修正した(2023年1月28日、本文修正済み)。
本文:全約9600字のうち約7400字が
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