2010年3月、有名私大を卒業してユニクロに新卒で入社。2店目で勤務中に、月300時間超の長時間労働(残業140時間超)などから鬱を発症し休職。一時は寝たきりに。2011年6月に退職。「ユニクロは『休職するのも普通』な会社。柳井社長を尊敬することは、全くありません」
|
サービス残業をしないと終わらない、そうかといって会社に通報すれば店長が降格になるから言えない――。そんな「完全犯罪」とも言える巧妙な仕組みで長時間労働を常態化し、その結果、うつ病を患う休職者が続出しているユニクロ。“モーレツ病で超ワガママ”なトップが現場を振り回し、社員の健康を利益に換えつつ、2020年に売上高5兆円でアパレル世界一を目指すという壮絶な経営が進行中だ。「休職者をこれだけ出しておいて平気でいられるなんて、柳井社長は人として終わってると思います。いったい、他人(ひと)の人生をなんだと思ってるのか」と訴える元社員に、2010年の入社から倒れて退職に至るまでの日々を、詳細に振り返ってもらった。
【Digest】
◇人材使い捨て企業
◇「隔離」で住む物件も勝手に決められ
◇URCは大型店からスタート
◇人生を握られる感覚
◇7:45~21:15勤務でサビ残激増
◇「なんていう仕組みだ!」ベルリッツ
◇「店長が悪いわけではない」からホットラインできず
◇鬱が悪化、寝たきり状態で7カ月も休職
◇労災申請もできず、泣き寝入り
◇「ヒトの人生を何だと思ってんだ」
◇「使われる」とはこういうことだな、と
◇人材使い捨て企業
私は2010年3月に新卒で入社し、半年後、2店舗目で長時間のサービス残業によって鬱を発症して休職し、寝たきり状態になって、2年目の夏に辞めました。退職して1年余りですが、今でも通院し、薬を飲みながら、何とか社会復帰しつつあります。
私がよく知る同期20人のなかでは、入社後2年のうちに14人も辞めていますが、大多数は、私と同様、鬱などの精神疾患によるもの。同期全体は把握できませんが、2年で半分ほどは辞めている印象です。
入社前は、ユニクロが、人を病気になるまで違法に使い倒して、使えなくなったら捨てて、また「次」を採用する、というような“人材使い捨て会社”だとは、私自身、全く思ってもみなかったので、これから入社を考えている人のためにも、私がユニクロでどのような環境に置かれ、辞めざるを得なくなったのか、率直に実際に起こったことを、お伝えしようと思います。
◇「隔離」で住む物件も勝手に決められ
就職活動では、1つの会社で勤め上げるつもりはなかったので、「しっかり働いて成長できる会社」に行きたかった。「独立したい」という気持ちもありました。それで、「グローバル総合職」「リーダーになろう!」といった採用メッセージを打ち出していたユニクロに決めました。
4~5月に内定した人たちは、9月から内定者バイトに入るのが一般的で、私もやりました。今では事実上「ほぼ強制」と聞いています。10~12月は繁忙期で、特に人手が足りないため、内定者がかり出されるんです。
正社員として正式に入社したのは、翌2010年3月1日(※ユニクロは入社日が毎年3月1日)。同期200人は、ほぼ全員が大卒で、第二新卒者も一部いて、最高齢の新卒は28歳でした。約9割を文系が占め、男女比は半々。1つ下の代(2011年3月入社)は、6:4~7:3で女性が多いと聞きました。
配属の希望地域は、「関西」「関東」「東海」「北陸」といったブロック単位までしか出せませんが、女性は地元への配属が多い印象。でも、地元であっても全員、1人暮らしをさせるのがユニクロの徹底した方針です。
私の配属先は東海地方にある大型店で、自宅から通える距離でしたが、店から2キロ以内のところにある、会社が契約する「レオパレス」管理の借り上げ物件に入り、自転車通勤となりました。新卒社員は全員強制で1人暮らしさせられます。自分は実家からドアツードア40分で通えたのですが、住む場所、住む家すら選べず、勝手に決められてしまいました。
家賃は会社が7割を負担し、月8万円ほどの物件でしたから、自己負担が3割の24000円。通えるのに1人暮らしさせるとは、いったいどんなコスト感覚なんだと思いましたが、これは今思うに、「隔離」が目的なのだと思います。実家の親兄弟から引き離すことで、なるべく相談をさせない。毎日の長時間労働を(親族の助言で)おかしいと気付かせない、ということでしょう。
◇URCは大型店からスタート
新人の多くは、まず大型店で実地訓練を受けるのが一般的です。その店は約800坪の売場面積を持ち、11時~21時までが営業時間でした。
|
ユニクロのキャリアパスと報酬水準。ポイントは、早ければ半年後から店長にしてしまって、管理監督者扱いとし、残業代ゼロの「名ばかり管理職」とされる点。 |
|
総勢100人前後のスタッフを擁し、店長クラスが3人もいます。統括店長(S4→左記キャリアパスの図参照)が1人、上層階と下層階に、店長(S2、S3)が1人ずつ。そして、異動がない「地域社員」が5~6人。あとは、有期雇用の準社員・バイトが約90人。
※準社員=8時間×週4以上働く人で、社会保険完備、3か月ごとに契約更新する契約社員のこと。
ここに、新卒が2人、配属されました。
B1~4Fまであり、私は3Fの担当になりました。新人は「URC(ユニクロルーキーズキャンペーン)」と呼ばれます。これは、いきなり「店長候補者」となり、半年間で成果をあげれば、ルーキーなのに入社半年後から、「J3」を飛び越して「S2」の店長に昇格でき、実際に店長ポストも用意される、というキャンペーンプログラムを意味します。
望むと望まざるとにかかわらず新卒は全員がURCで、会社は、半年後に店長にならせる前提で新人を頑張らせ、「頑張らざるを得ない環境」にぶち込みます。この半年でなれないと、収入面でも.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
「休職に入った11月には、すぐに、辞めよう、と思っていました。この会社で働くイメージは湧かないな、と」 |
|
|
ユニクロから送られてきた社会保障費立て替え分の請求書 |
|
