ユニクロとの裁判用に経緯を記録したノートも既に一冊分を終えようとしている
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サービス残業や長時間労働など過酷な労働実態を綿密な取材に基づき指摘した書籍『ユニクロ帝国の光と影』に対し、日韓で出版差し止め訴訟まで起こして「なかったこと」にするつもりのユニクロ。法廷にさまざまな証拠類が提出された結果、当初27ヶ所を問題視したユニクロだったが、うち21ヶ所は認めざるを得なくなり、残った争点は6ヶ所だけに絞られた。ただ、取材先の社員を守らねばならないことから証拠が不足しており、このままだと事実がねじ曲げられる形で敗訴に終わる可能性もある危機的状況だ。本当の実態を知っているのはユニクロの元社員・現役社員のかたがただけ。ぜひ正確な事実認定が行われるよう、著者の横田増生氏へのご協力をお願いしたい。
【Digest】
◇時系列
◇関係者の協力求む!
◇守秘義務契約は無効
◇残業代は取り返せる
◇証人探しが一番大変
◇柳井氏出席の決算会見にも参加禁止
◇狙いは恫喝によるマスコミの萎縮
◇韓国語版も差し止め請求
◇時系列
2011年3月23日 | 『ユニクロ帝国の光と影』(文芸春秋社)発売。 |
2011年4月14日 | ユニクロが「通告書」を文芸春秋社に送付。 |
2011年6月 3日 | ユニクロが27箇所の事実関係の間違いが名誉毀損として、2億2千万円の損害賠償(うち弁護士成功報酬6千万円)と出版差止め、発行済み書籍の回収求め文芸春秋社を提訴、記者会見を開く。 |
~2012年7月末 | 準備書面(文春側が4通、ユニクロ側が4通)と、証拠書類を双方が提出。次回は2012年8月31日までに証拠を出し、9月6日に裁判所で打合せ。2012年度内に一審の判決が出る見通し。 |
横田増生(よこた・ますお)=1965年、福岡県生まれ。関西学院大学卒業。米アイオワ大学ジャーナリズムスクールにて修士号を取得後、物流業界紙『輸送経済』の記者、および編集長を経て、ジャーナリストとして独立。著書に『アマゾン・ドット・コムの光と影』、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』など。
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中国取材での名刺を提出したことで、ユニクロ側の「そのような人物は存在しない」という言い掛かりは破綻し、争点から落ちた(ボカシは編集部による) |
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8月上旬現在の状況としては、当初27ヶ所あると言っていた事実関係の嘘のうち、21ヶ所についてはユニクロ側が「争わない」ことに同意し、争点は残り6ヶ所だけに絞られました。国内3、海外3です。
なぜ21ヶ所も落としてきたのかというと、国内で取材に応じてくれた元社員が陳述書を出してくれたことと、中国で取材した際に工場関係者から受け取った名刺や、現場工員に書いてもらった実名を提出したことで事実関係が裏付けられ、ユニクロ側も、認めざるを得なくなったためです。取材ノートも提出しています。
国内の3点については、162~164ページの以下の記述が争点です。
1.現在でも、店長職の従業員に月300時間超の労働があること
2.タイムカードを押してから就労を続けるサービス残業があること
3.サービス残業をうすうす知りながら本社が黙認しているであろうこと
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海外の3点は、浙江省寧波の申洲工場での4人(営業マン1、女性工員3)の証言(197ページ~)についてです。こちらはユニクロ側が、かなり苦しい反論をしています。
1.営業マンが、ナイキやアディダスと比べてユニクロは条件が厳しいと述べているが、その人は当時、中国国内担当だったから、比較できる立場にないはずだ
2.女性工員のうち2人を名簿で確認できない
(うち1人は確認する氏名をユニクロ側が間違えていたことが判明)
3.「アイロンがけ」の話が出ているが、この工員は「検品担当」だったから内容が疑わしい
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名刺を持たない女性工員には氏名を取材ノートに書いてもらい、写真も撮るという念の入れようで、丁寧な取材をしている |
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海外分については、中国人の全員について、名前だけでなく顔写真も撮っており、社員の存在など、大筋ではユニクロ側も認めざるを得ないはずです。
問題は、国内のほうです。現役社員については当然、迷惑をかけてしまいますから、取材源を秘匿しなければなりません。当人の許可を得ない限り、氏名や勤務先の店舗名を出すわけにはいかないのです。
◇関係者の協力求む!
このままでは、ユニクロの実態を裁判所に十分、伝えることができません。
実際には、上記の6ヶ所以外はユニクロ側も既に争わないことに同意するほど、本の内容は正確です。もちろん6ヶ所の記述も事実に基づいて書いています。ただし法律上、裁判所を説得するだけの証言が不足しているのです。
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ユニクロが出してきた2010年11月の店長労働時間。240時間が上限となっているため、無理やりデータを合わせるために239時間で申請している例が目立ち、申請外のサービス残業が多いことをうかがわせる |
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最近まで働いていた元ユニクロ社員からも、毎年10月~12月と、ゴールデンウィークがある5月の繁忙期には、実労働が300時間を超えるという話は聞いていますが、そうした証言が、まだ不足しています。
ユニクロは2007年4月に労務管理システムを入れ替えて以降は、月240時間を上限としており、サービス残業も存在しない、と頑強に主張しています。
したがって、2007年4月以降に一時でも在籍されていたかたでしたら、元社員でも現役社員でも問題ありません。
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ユニクロが自ら提出してきたサービス残業の懲戒事例。サービス残業の存在を自ら示している。 |
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ユニクロは、店長らによるサービス残業の懲戒事例(2010~2011年)を、『長時間労働を減らす取組み』を示す証拠として法廷に提出してきました。
これは、厳しく取り締まっていることを示しているつもりなのでしょうが、実際にはサービス残業が横行していることを示している証拠といえます。
それでも長時間勤務は「ない」と言い張るのですから、矛盾しています。
つまり、このままだと、わずか数ヶ所の記述において証言が不十分というだけで敗訴となり、ユニクロはまた記者会見をして、勝った、勝った、月240時間以上の労働実態もサービス残業もありえない、あの本は嘘ばかりだ、とまるで全ての内容が嘘であるかのように喧伝しかねないのだ。
そこで、嘘がまかり通る世の中にしないためにも、編集部からも、ユニクロの元社員または現役社員のかたに、ご協力をお願い申し上げる。
現場の実情を、文書で記していただきたいのである。現役社員の場合は実名は難しいため、匿名性を確保する形での協力をお願いしたい。いずれにせよ、ご迷惑がかからない形での協力で構わないので、ご連絡をお待ちしている。
募集対象:2007年4月~現在のどこかで在籍した元社員、現役社員
ご連絡先:info@mynewsjapan.com 、FAX:050-3488-3175
『MyNewsJapanユニクロ情報提供』係まで
または情報提供コーナーよりお願いいたします
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◇守秘義務契約は無効
以下、懸念される点について予め、記しておく。
仮に情報源が特定されても、2006年施行の公益通報者保護法によって、通報を理由に不利益な扱いを行うことは法律で禁じられているため、ユニクロが賃下げや異動やパワハラを行うことはできなくなり、地位は保護される。
月300時間労働(36協定なし)やサービス残業は労基法に違反する行為なので、その通報は確実に「公益通報」に該当する。実際、社員が違法行為を通報したオリンパスの事例では、最高裁で社員の勝訴が確定している。
元社員の場合、辞める際に、守秘義務契約書にサインさせられていることが多いが、当然、公益通報に関する内容に守秘義務は適用されない。違法行為が明るみに出ることを防ぐために行っているだけで、そのような契約は無効であり、悪質な行為といえる。
◇残業代は取り返せる
むしろ、本来は支払われるべきであった残業代を、取り返すことも可能だ。
ユニクロと同様、労組が結成されていなかったビックカメラの事例では、元従業員が残業代の支払いを求めて提訴し、2004年11月、新井社長(当時)を含む役員ら8人が労基法違反容疑で東京地検に書類送検となり、ビックカメラ労働組合が結成され、2005年3月、ビックカメラは、未払いだった賃金約30億円を従業員らに支払っている。
ユニクロはトップ企業だけに、残業代の未払いが当局(労働基準監督署)に発覚することを極度に恐れており、このような裁判まで起こして、事実をもみ消したいようだ。
ユニクロの店舗勤務の社員はほとんど全員が新卒入社のため、ユニクロの労務管理にとって都合のよい教育しか受けておらず、現実の法律に疎い人も多いと思われるが、今からでも遅くはない。取り返せるものは取り返したほうがよい。とにかく、まずは上記にご連絡いただきたい。
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勝訴で成功報酬2千万円を獲得できる九段総合法律事務所の弁護士たち。上から、的場徹、川口綾子、小杉健太郎。 |
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