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「金が私を狂わせた」――詐欺で実刑判決受けた元トップセールスが告白する、大東建託の“人間破壊経営”

情報提供
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大東建託所沢支店のトップ営業マンのAさんが4月9日に懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けたさいたま地裁川越支部。
 賃貸アパート販売・管理業最大手の大東建託(熊切直美社長)がひた隠す詐欺事件の存在が明らかになった。同社で最優秀の成績をあげていた営業マンのAさん(39)が4月9日、「実在しない『退去費用』として会社から1650万円を詐取した」などとして、詐欺などの罪で実刑判決を受けたのである(さいたま地裁川越支部、その後、控訴)。契約を取らねばならないという圧力を受け、費用を立て替えて架空契約を行うなどの不正が支店ぐるみで横行するなか、ヤミ金地獄にはまった挙句の破滅だったという。「契約をとって完工すれば、何百万円という報奨金が入る。それを見込んで自腹を切るうちに、おかしくなった」。判決前にインタビューに応じたAさんが、人間を破滅に追い込みかねない〝大東商法〟の内幕を筆者に語った。
Digest
  • ヤミ金の返済に苦しんで
  • 「退去費用」名目で1650万円を浮かせた
  • 支店では当たり前だった「テンプラ契約」
  • 事件があっても大東建託は利益を挙げた
  • 全国で成績1位になったことも
  • 社内調査の結果は・・・

◇懲役3年6月の実刑判決

去る4月9日、さいたま地裁川越支部で、Aさんに対する判決が言い渡された。懲役3年6月(求刑同5年)の実刑判決だった。問われた罪は4つ。公文書偽造・同行使、詐欺未遂・詐欺。現在、東京高裁に控訴中だ。

判決によれば、Aさんが犯した罪は大きく2つある。ひとつは三菱UFJ銀行のカードローン「バンクイック」を、上司の免許証を使って他人になりすまして作ろうとした事件だ。

昨年10月、Aさんは当時勤務していた所沢支店の上司の免許証を借り出し、それを持って三菱東京UFJ銀行の無人機でカードを作ろうとした。ところが銀行側の照会で、なりすましが発覚、警察に通報されて現行犯逮捕された。これが公文書偽造・同行使・詐欺未遂という重大な罪となった。これは、ヤミ金の返済に苦しんだ挙句に思いついた犯行だった。

もっともこれ自体は、支店ではたいした問題としては受け止められていなかった、と元支店員はいう。それよりも、逮捕をきっかけに発覚したもうひとつの事件のほうが、大きな問題に発展した。

発覚したのは、実在しない「退去費用」をでっちあげて、大東建託から「1650万円をだましとった」というものだった。結果的にこれが詐欺に問われ、実刑を避けられないものにしてしまった。

一見すると、とんでもない不良社員のようにみえる。大東建託は、社員の詐欺によって被害を受けた。それが、表向きの話である。しかしよくみてみると、「詐欺」に遭ったはずなのに、会社はしっかりと利益を上げているようなのだ。Aさんは会社にさんざん使われて、捨てられただけではないのか。Aさんから話を聞いているうちに、そんな印象を受けた。

会社のために一生懸命働いた結果、犯罪者として追われるというのではあまりにも無残である。以下、Aさんとのインタビューを紹介したい。

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大東建託本社ビル(東京都品川区)。年間売り上げ1兆1669億円(前年比7・3%増)、営業利益840億円(同2・5%増)を計上している。しかし、好業績の裏で、業績を上げるための架空契約が横行していると元従業員らは証言する。

ヤミ金の返済に苦しんで

――銀行で上司の免許証をつかってローンカードを作ろうとした。そこで現行犯逮捕されたのがきっかけですね。なぜそんなことをしたんですか。

 ヤミ金に借金があって、返済資金がなかったんです。で、上司の免許証をつかって…。大東は(アパート販売の)契約とって完工すれば、何百万円という報奨金(インセンティブ)がもらえるんです。そんなに罪悪感はありませんでした。たぶん上司もたいしたことじゃないと考えていたんじゃないでしょうか。それほど金銭感覚が麻痺していたんです。

――ところが、逮捕をきっかけに、1650万円を会社から騙し取ったという話に発展します。順を追って聞かせていただけますか。

 あるオーナーさん(土地所有者)と賃貸アパートの契約の話を進めていたんです。2億円弱くらいの契約でした。ところが、そのオーナーさんがガンで亡くなってしまった。そしたら奥さんは、もうアパートやりたくないと言い出したんです。

――死亡した場合、契約はどうなるんですか?

 亡くなった場合は解消です。私は解消してもよかったんです。でも上司はなんとか契約にならないかと言ってきたんです。支店の成績が悪いと会議でしかられたり大変なんですね

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Aさんが勤務していた大東建託所沢支店。実在しない「退去費用」を本社に請求し、顧客に割り引いてアパートを売るといった「不正」は支店ぐるみでなされていたと複数の元社員らが証言する。解約を前提にした「架空契約」は「テンプラ契約」と呼ばれて日常的だったともいう。

Aさんは成績を上げるために契約金などをたてかえているうちに、ヤミ金地獄に陥った。そして上司の免許証を悪用して銀行のローンカードを作ろうとして逮捕された。Aさんが逮捕された三菱東京UFJ銀行所沢支店。

契約がとれて完工すれば、数百万円単位の報奨金が入った。金銭感覚が麻痺したとAさんはいう。上司の免許証をつかってローンカードをつくるといった行為も、支店のなかではさほど悪質だという認識はなかったという。金を立て替えてでも契約を取ることのほうが重要だった。Aさんが上司の名を書いたことで公文書偽造・同行使・詐欺に問われた「バンクイック」の申込書。アコムが保証会社となった商品。

Aさんの逮捕・起訴について、大東建託はいっさい公表していない。また、内部調査を行ったと取材に回答したが、その結果も不明だ。全国で調べれば相当数の架空契約や不正な経費の請求が浮き彫りになるはずだと元社員らは口をそろえる。

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鈴木悦雄2016/05/13 11:40会員
鈴木悦雄2016/05/12 16:23会員
三宅勝久2013/07/31 23:35会員
東関東営業部長2013/05/01 15:51
残酷な国の住人2013/04/30 10:46
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