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「東進」若手校舎長が突然死 ナガセ標語『毎日登校、毎日受講』で社員も休めず、1人で2校かけ持ちも――「こんな労働環境じゃ人生が破たんする」

情報提供
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額縁に入れて校舎に張り出されていることもある「東進」の標語、其の一。毎日登校するためには、校舎は毎日開いていなければならず、社員は休めない
 東進ハイスクール運営のナガセは、直営校・衛星校ともに、看板である人気講師による「特別公開授業」を参加費無料で行い、新規勧誘の入口として活用している。2014年3月、その特別公開授業の開催準備に追われていた東進衛星予備校・東北大病院前校の校舎長(当時30代前半)が、自宅で急死した姿で発見された。出社して来ないため自宅を訪れたら、死亡していたという。社内で説明された死因は、心筋梗塞。その状況から、社員らの間で「過労死だ」と話題になった。「それまで普通に元気でしたし、東進の過酷な労働環境だったらいつ倒れてもおかしくないですから、氷山の一角ではないでしょうか」。自身も校舎長を務める現役社員が、典型的なブラック企業ともいえる東進衛星予備校の殺人的労働環境について、手記を寄せた。
Digest
  • このままでは、業界も社員の人生も破綻する
  • 「やりがい搾取」で、タダ働きの構造

このままでは、業界も社員の人生も破綻する

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編集部で給与明細や月次労務実績データ表を複数月分、確認したところ、データ上も2日しか休みがとれていなかったり(うち1日は実際には出勤)、基本給が最低賃金とほぼ同水準だったり、手取り給与が20万円を割っていたりと、ブラック企業そのものだった。

私は、全国の約1千校ある東進衛星予備校のうちの1つで現在、校舎長をしています。

この過労死と考えられる事件は、私も故人とミーティング等で同席し、よく知っている人でしたから、ショックでした。もとから心臓が弱かったという話は聞いていませんし、私自身の経験から言っても、過労死だと思います。

有名講師を呼んで行う特別公開授業は、お試しで学生に講座を受けて貰う「招待講習」などの販促時期に合わせて行い、学生を獲得していきます。

この校舎長が亡くなった3月は年度末期にあたり、3月末までの1年間の売上高によって、ナガセが徴収するロイヤルティー率が決まるため、ナガセのエリアカウンセラー(AC)からもプレッシャーをかけられ、複数の仕事が重なって、ハードワークになります。

この時期に、時間外労働が月80~100時間以上(※つまり厚労省の過労死基準超え)になることは、校舎長をやっていれば、ごく普通なことです。

私自身、20連勤以上、つまり20日間連続出社を何回も経験し、今年に入ってからも「月の休日が1日だけ」というありえない働き方を強いられました。年度末~新年度の新規勧誘で忙しい時期は、月あたりの実質残業時間が200時間を超えましたが、実質の手取り給与総額は固定残業代を入れて20万円未満で、基本給は、ほぼ最低賃金と同額。ほとんどがサービス残業となっているのが現実です。

長時間労働による肉体面の負荷だけでなく、特別公開授業の外部動員数(内部生以外の新規見込み客をどれだけ呼び込めたか)と、そこから入学に至った人数の目標値が設定され、ナガセのエリアカウンセラーが連日、1日に何回もプレッシャーをかけてきますし、社内のミーティングでも上司から詰められますから、その精神的なプレッシャーによる負荷も重なります。いつ過労死しても不思議ではありません。

 この突然死事件については、当時在籍していた別の社員も、「公開授業の準備と三月末締め切りが重なり休めていなかったのは間違いないです」と業務による過重労働が原因との見方を示している。会社側は「死因は心臓の病気」としたうえで、「当社の労務管理とは因果関係がないと考えております」と、業務との関係を否定している。

私は「東進」の複数の校舎で校舎長として働いてきましたが、真面目で一生懸命な人ほどつぶれる職場だな、と感じています。

衛星授業シェアトップの東進がこのような労働環境では、すき家や個別指導塾で既に起こったように、「ブラック認定→人材不足→残った人の労働環境がさらにブラックに…」という悪循環が加速し、業界全体が破綻するでしょうし、働いている人の人生も破綻してしまいます。

心身を病んで休職する人も含め、私が勤務する会社の離職率も高いです。ベテラン社員で、元旦を含め365日開校する校舎を担当し、体を壊して入院している人もいます。

東大合格者数を全面に出した広告で集客する「東進」。ハイスクールと衛星予備校の内訳は示さない。

東進部門は特にハードなので、新卒には難易度が高く、経験のある中途採用の人が配属される傾向にありますが、それでも、部署全体の人数に対して過去2年で3割ほどが退職しました。

ブースの数に対して既にキャパを超えていて、生徒からは「何で高3をこれ以上増やすのか」と詰め寄られ、上司からは「もっと売り上げを」と数字を詰められる。その板挟みで潰されてしまうケースも見てきました。

つまり、生徒のためにもなっていないのです。

これが正常だと言うなら、感覚が麻痺しています。ナガセの永瀬昭幸社長は現状を直視し、フランチャイザーとして責任を持って対応してほしい、というのが私の願いです。以下で、「東進」の問題点を説明します。

他の校舎での体験談を2本読みましたが、「休みは元旦だけ」「給料は20万円未満」「高い離職率」など、あまりに労働環境が酷似していて、驚きました(→1本目2本目)。同じことに悩む人が他にも複数いるということは、東進の仕組み全体に構造的な問題があるのだと思います。

①校舎を毎日開けざるを得ない

東進衛星予備校に特有の第一の問題は、校舎を休みにしにくい点です

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保護者向けの説明資料や生徒への入学オリエンテーション等でも、「毎日登校、毎日受講」を指導している

生徒200人の業務時間モデル(ナガセの特別研修会資料より抜粋)

ナガセがFCに求めるロイヤルティー率。「年間予想売上高」(3月末までの1年)が高いほどロイヤルティー率を下げる仕組みとすることで、売上げ増のインセンティブを与えている

ブランド表現には細かいルールを設定。ロゴの面積まで指定している。自由度は低い。

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oguratesu2016/05/29 12:34

そういう校舎もあるんだなぁ。怖い怖い。

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kamiokando2016/05/29 10:47

校舎長で20万切るのか。フランチャイズの塾の方が儲かるかもな。

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takshiaikou2016/05/29 02:38

東進ってこんなやばい会社だったのか

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読者コメント

 2016/05/29 00:00
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