希望どおり新卒で救命に配属された若手看護師「運び込まれる人は、自殺のリピーターさんも多いんです」
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救命救急は『救命病棟24時』でも描かれた、1分1秒を争うドラマチックな職場。ドラマでは第1~第5シリーズを通じて毎回、男性看護師はいても1人だが、現実には男性が半数を占めるのも普通だ。「白衣の天使」のイメージが覆される壮絶な職場で興奮状態が収まらず、「抗不安剤・睡眠導入剤を飲まないと続けられない」という。一方、産婦人科で出産をサポートする助産師は「保健師助産師看護師法」によって性別による国家資格の取得が制限され、女性だけがなることができ、看護師がさらに1年間の教育を受けて取得する。「産まれるときは毎回、涙が出る」という感動の仕事だ。看護師のなかでも特殊な、「救命救急」と「助産師」(産婦人科)の実情について、それぞれ若手に語って貰った。
【Digest】
■救命救急看護師編
◇高度救命救急センターに配属
◇運び込まれるのは4回目という自殺リピーターも
◇「思ったよりもハードだった」救命病棟の1日
◇救命のジレンマ「見守るだけの人手がいない」
◇大学病院のほうが、患者としてもよい
◇狭すぎる看護師のキャリアパス
■助産師編
◇女性職場だがドロドロはしていなかった
◇7時半出勤、助産師の1日(日勤の場合)
◇赤ちゃんの心拍音が、帰宅しても聞こえる
◇母子手帳に自分の名前が載る仕事
◇残っていると「管理職になれ」のプレッシャー
■救命救急看護師編
◇高度救命救急センターに配属
自分は、親からの愛情を貰えなかった記憶があって、その反動から、他人に愛情を与えたくて、看護師を志しました。看護師には、そういうタイプが多いと感じます。私大病院付属の看護学校(3年制)を卒業し、その私大病院(1千床クラス)の救命病棟に配属となり、3年ほど勤務しました。救命救急には1次~3次までありますが、そこは3次なので、もっとも重篤な患者が運び込まれてきます。全国に36施設ある「高度救命救急センター」の1つで、ドクターヘリ基地もあります。
1次:入院や手術を伴わない患者向け。 2次:入院や手術を要する患者向け。 3次:2次では対応できない重篤、緊急を要する患者向け。救急車やヘリで運ばれてくる患者のみに対応。
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その病院は、半分以上のナースを系列の看護学校から採用しており、内部から上がってきた人が主要ポストに就くカルチャーでした。上が詰まっちゃってるので、なかなか「師長」や「部長」にはなれません。
私も系列の看護学校から入職した1人で、学校の同期80人のうち、国試で5人落ちて75人が就職。8割がたが、その大学病院に就職しましたが、救急は8人で、あとは内科系と外科系で半々ほど。その先のキャリアは、保健師・助産師の学校に入り直す人が1人2人いるくらいです。
救命は、人気が高かった。自分は、第一志望で救命に配属となりました。実習で、師長に気に入られたからだと思います。救命は、暴れる患者を押さえて処置したり、急いで移動させたりといった力仕事もあるため、男性看護師が半数くらいと多めでした。
救命が人気の理由は、内科、外科、精神科…とメジャーな診療科は実習が3~4週間ずつあるのですが、救命は、学生がいても何もできないし邪魔なので、1週間だけなんです。期間が短いので表面的な部分しかわからないから、なんとなくイメージだけで希望を出してしまう、というのがあると思います。現実を知ったら希望者が減るのでは…。
チームは約30人で、3交代シフト制。ベッドは6人分あって、「常に救急患者用に1つは空けておく」というルールになっていました。救急は、ナース1人で患者2人まで。常時、看護師3人+看護リーダー1人+看護助手(看護師ではないサポート役)1人、という看護体制でした。
◇運び込まれるのは4回目という自殺リピーターも
一般のイメージでは「交通事故で瀕死の重傷を負って運び込まれる」だと思いますが、実際には、事故よりも、自殺のほうが多いんです。鉄道自殺を図って死ねなかった、というケースが多かった。あとは、場所がら(地方)もあるのでしょうが、農薬自殺、睡眠薬による自殺、手首を切る自傷自殺。故意ではない事故のほうだと、火事による火傷、交通事故など。脊髄損傷といった重傷者もよく診ました。
鉄道自殺や交通事故だと、手足が1本ない状態で運ばれてくることもありました。自殺でやってくる場合は、リピーターさんも目立ちました。「うちに来るのは4回目」という人もいました。3次救急は、救急車かヘリしか受け入れませんから.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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最大に機器がついているパターン |
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インタビューに答える若手助産師 |
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10年で9割増となった男性看護師の就業者数推移(『平成27年 看護関係統計資料集』日本看護協会出版会編集より)。ただし助産師には絶対になれない。 |
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就業している助産師で、一番人数が多い年齢層は25~29歳。一般の「産婆さん」のイメージとは異なり、意外に若い層が活躍している。看護師は同じく35~39歳がピークで高め。(2014年末時点) |
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産婦人科の看護組織(ある私大病院) |
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