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開業弁護士 「普通のビジネス感覚があれば十分、稼げる資格です」顧客ゼロから独立、2年目で年商1600万円の若手に聞く商売の実情

情報提供
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若手弁護士「経営についての考えがしっかりしていれば、十分、食える資格だと思います」(法律事務所にて)
 法科大学院閉鎖のニュースが相次ぐ法曹業界。2004年以降に74校が開校したが、2017年までに青学・立教・信州大など計35校の法科大学院が募集停止に追い込まれた。合格率が2割未満に低迷→生徒が集まらず定員割れ→赤字で廃校、というパターンが多い。だが司法試験合格者数は、2016年度で1583人と、かつての年500人以下だった時代に比べれば断然、受かりやすくなっている。法律ばかり専門的に学んで経営に疎い弁護士もいるため、合格者急増にともなって一部に「食えない弁護士」が発生している現実もあるが、実際には、常識的なビジネス感覚があれば、まだまだ十分に稼げる現実もある。学部卒業後、ロースクールに2~3年通うコストは回収できるのか。顧客ゼロから独立開業して弁護士事務所を経営する若手弁護士に、商売面の実態を聞いた。
Digest
  • 顧客基盤ゼロ、サービス分野も実務経験ナシでスタート
  • 週40時間しか働いていないが…
  • 最大のコストは広告費だった
  • 交通事故は双方の保険次第
  • 労働紛争は成功報酬が人気
  • 企業法務は3社だけ
  • お客の顔が見えるやりがい
  • 経営に関する知識に疎い弁護士も

顧客基盤ゼロ、サービス分野も実務経験ナシでスタート

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司法試験合格者数の推移。直近では、資格の不人気化から廃校が相次いで母数が減り、受験者の質も上がる要素がないため、実質的に、どんどん受かりやすい資格になりつつあるのが現状。

インタビュイーはいわゆるブル弁(ブルジョア弁護士=企業向けに法務サービスを提供する中堅以上の法律事務所)からキャリアをスタートし、まだキャリア10年未満という若手弁護士だ。

独立開業時は、顧客ゼロからのスタートだった。つまり、ノキ弁(軒先を借りる弁護士)やイソ弁(いそうろう弁護士)のように、どこかの法律事務所で働くなかで先輩弁護士からの仕事を引き継いだり、その事務所時代の顧客を持ったまま独立したのではなく、いきなり自分で始めた。

さらに、相談を受ける分野として、それまでのキャリアで経験した企業向けサービスではなく、ほとんど専門的にやったことがなかった個人向けの交通事故や労働紛争を事業の柱に選んだため、開業前に実務経験者からのアドバイスを念入りに受けて集中的に勉強したという。

つまり、顧客基盤ゼロ、サービス内容も実務経験ナシ。それだけに、(企業法務ではない)もっとも一般的な「町の弁護士事務所で、ゼロから始めて、どれだけ食えるのか?」を知る上で、最適なケースといえる。

週40時間しか働いていないが…

――まずは、肝心の、売上高とその内訳について。

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設立2年目の青色申告決算書。経費を差し引いた所得の額としても十分、残っている。(末尾にPDF)
「初年度は、完全に赤字でした。着手金(手付金)ゼロのプランを選ぶお客さんも多いので、収入がない一方で、費用が出て行くばかり。その後、解決に至る案件が出てきて、広告宣伝も軌道に乗り出し、2年目は終わってみれば年1600万円超に。実は独立後、個人的事情があって、週40時間ほどに労働時間を抑えているため、活動時間を増やしていけば、もっと売上を増やせる感触はあります。

 売上の内訳は、多い順に、①交通事故5~6割、②労働紛争3~4割、③企業法務1割強、です」

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経験年数別の収入(平均値)。「法曹の収入・所得、奨学金等調査の集計結果」(法務省)より。

顧客ゼロからの2年目としては、予想以上に高い印象ではあるが、2016年7月発表の「法曹の収入・所得、奨学金等調査の集計結果」(法務省)によると、2015年の調査では、平均で、7年目に年商1600万円に達する(新試験1605万、旧試験1759万)。

22歳で学部卒、25歳で法科大学院卒、司法修習を経て働き始め、7年目だと最短32~33歳。経費を考慮しても、十分に奨学金の返済が可能な水準である。年500人弱しか合格者を出さなかったかつての特権階級ぶりが異常だった、というだけだ。

未払い残業代の請求といった労働紛争は、ブラック企業が社会問題化するなか、弁護士にとって「消費者金融への過払い分請求訴訟の、次の飯のタネ」とも言われてきたため理解できるが、交通事故を1つの柱に据えているのはどうしてなのか。

――分野として、なぜ交通事故をやろうと思ったのでしょうか。

「友人の弁護士で

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弁護士保険販売件数の推移(弁護士白書2016年版より)

月別の売上高。月によって、収入がこれだけブレる。(末尾にPDF)

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法科大学院募集停止2022/08/09 02:08会員
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