My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

東大合格者数が急減の東進ハイスクール 2週間だけの“講習生”もカウント、ネット受講も可、特待制度で受講料タダ生も入れ…それでも水増し限界か

情報提供
ReportsIMG_J20180514202810.jpg
ナガセが好きな「昨対」で28人も減らした東大合格者数。早稲田塾などグループの数字もぜんぶ足しているものだが、急減した。
 数々の違法行為発覚の末にSLAPPの敗訴まで確定し、ブラック企業としての地位を世間に知らしめた『東進ハイスクール』のナガセ(永瀬昭幸社長)。その影響からか、合格実績も急減、2018年の東大合格数は3年前よりも少ない725人に暴落した。昨年まで掲げた「日本一の実績」との宣伝文句も引っ込め「4年連続700名突破」に。だがこの数字すら、実力ではない。「東進基準」では「通期講座1講座分にあたる教育サービスを受けた生徒」を合格者数に数えると定義しているが、実は、日本語の「通期」が意味する「1年間」では全くなく、自宅からのネット受講も可能なビデオ授業を20回(20コマ)受ければ基準を満たすため、最短10日~2週間だけの実質“短期講習生”も含んでいる。しかも、受かりそうな学生は片っ端から受講料タダで受けさせる特待制度で、『鉄緑会』など他の塾で実力をつけた生徒が「無料で自習室や過去問を利用する」等の目的で腰掛け的に受講する人も多く、その数字も加え水増しする。誇大広告の化けの皮が剥がれ、東進の情弱ビジネスは限界にきている。
Digest
  • 人よりも広告宣伝に3倍カネをかける会社
  • 通期=1年間を意味するが…
  • 通常校舎でも特待生度で受かりそうな生徒を引き込む
  • 直営校は185人だけ
  • 校舎別の合格実績――東大合格ゼロが直営で21校も
  • 保護者「東進の実力じゃないんだな、と思いました」

人よりも広告宣伝に3倍カネをかける会社

東進ハイスクールは、著作権法違反労基法違反に加え、ブラック企業ぶりを伝える報道に対し高額の嫌がらせ訴訟まで仕掛けて記事を消そうとした(記事に違法性がないことは2017年12月に最高裁も認定)、真っ黒な会社だ。敗訴確定後も、未だ謝罪しない点から反省の色はみえない。そのいかがわしさは全方位に及ぶが、生活者にとってもっとも接点が大きいのは、バスのラッピング広告から駅の看板広告、新聞広告テレビCMなど、メディアにおける広告宣伝だろう。

同社が年49億9千万円(2017年3月期)も投じる広告宣伝費は、従業員給料(16億円)の3倍超にのぼる。教育者など「人」には投資せず、マスコミに莫大なカネを支払い、信用をカネで買って集客する、典型的な情弱ビジネスだ。中身の薄いものを広告宣伝の力で過剰に売りさばいている姿が、浮き彫りとなっている。

ReportsIMG_I20180514194506.jpg
上:2018年の合格実績。東大合格者数が減ったため東大の棒グラフはナシ。「日本一の東大現役合格実績」を引っ込め、「4年連続700名突破!」に変更。「日本一の現役合格実績と自負しています」と主観的な「自負」であることを明記した。 下:2018年5月現在、開示されている「東進基準」

その宣伝効果を最大化するために編み出したのが、東大合格者数という“実績”であった。その実態について、SLAPPの訴訟を通じて情報が社内外から次々と弊社編集部に集まったことに加え、他メディアが訴訟に怯えて書きにくい内容なので、改めて報道する。

ナガセは「東進の基準は他の予備校とは異なります。」とわざわざ基準を開示している。「講習生や模試生は含まない」「通期講座1講座分以上にあたる教育サービスを受けた生徒」が対象だと書いてある。その意味するところは、短期講習を受けただけの生徒を合格者数に含めて水増ししていません、と、他の予備校を批判し、自らの正当性を主張する内容だ。

通期=1年間を意味するが…

「通期」という日本語には1つの意味しかない。もっとも多く使われるのは企業決算で、「通期決算」といえば1年、「半期決算」と言えば6ヶ月、「四半期決算」といえば3か月を意味する。これは野村證券出身で企業経営者である永瀬昭幸社長が一番よく分かっているだろう。つまり、通期講座といえば、「1年間」かけてじっくり学ぶコースという意味になる。それ以外の解釈は、一般常識に基づかない、独自の強引な意味を創作したものとなり、通期を2週間の意味で使えば、もちろん「嘘」になる。

東進は、1年間を通してじっくり教育し、自らの教育によって実力を伸ばした生徒しか合格者数にカウントしていません、他の予備校と違って、短期で夏期講習だけみたいな講習生なんて合格者数に入れていません、だから信用してくれ、とPRしているわけである。普通に読めば、通期講座1講座だから、週に1回の授業があり、年50週なので50回受けて、1講座だ。途中から始める人は、週2回×25週でも1講座受けたと言って差し支えないだろう。

少なくとも見る者は、そのような印象を持つ。ところが、これが真っ赤な嘘なのである。

この「東進基準」表には、以下の重要なことは何も書かれておらず、意図的に誤解させようとしている。景品表示法で違法とされる「優良誤認」の疑いが強い。

①1講座とは20コマ(1コマ90分×20回)を意味すること。
②ビデオ学習なので自宅から20回受けるだけで基準を満たすこと。
③実際に10日~2週間の短期で1講座だけ受ける人もいること。
④成績優秀者は、各種特待制度で受講料が無料となること。

10日だけ「通期講座」なるものを受講した生徒は、同社が「含まず」とわざわざ主張する「講習生」と、いったい何が違うのだろうか?名称が違うだけで、実態は同じだ。駿台予備校や河合塾は、弊社の取材に対し「講習生を含めている」と素直に答えた。東進も同じで、通う必要すらない自宅受講生や無料の登録者まで入れてしまっている分、悪質とすらいえる。

通常校舎でも特待生度で受かりそうな生徒を引き込む

ReportsIMG_H20180514194507.jpg
上:開成高校の生徒を特待生にする申請メール。 下:本郷高校の生徒の特待生申請に了解を出した大山専務のメール。

ナガセ社内では、この数字をかさ上げすべく、通常校舎とは分離して「東大特進」という特別な対策コースを作り、受かりそうな生徒に値引きして在籍を促している。これは前回報道した通りで、東大特進コース案内資料(2018年)にも記載されている

それ以外に、通常の直営校舎でも特待制度を適用し、受かりそうな生徒に20コマ受講させることで、数字を作っていることが今回、あらためて分かった。

社内では「特待制度の適用についてのご相談」といったタイトルのメールが飛び交っている。これは、校舎長やブロック長から、承認権限を持つ大山専務(ハイスクール本部長)やその部下にあたる川村部長に向けてのもので、東大合格者を増やすための手段として利用されている

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り3,418字/全文5,575字

東大合格者数(2017年3月10日時点=計748人)の内訳を示す表。直営の『東進ハイスクール』からは実は185人しか受かっていない。「東大特進」が2割を占め、全国1千校もある衛星予備校では、平均で0.4人しか受からない。6つの科類別でも傾向がある。最難関の理Ⅲに至っては、65%が衛星予備校所属である。

直営校の校舎別実績。東大合格者数ゼロの校舎は、直営校でも、実に21校にのぼる

今年のパンフを手に取材に応じる、高校生の子どもを持つ主婦(40代)。『鉄緑会』などに普段は通っている人が1講座だけ10日や2週間の短期で利用する人もいる、と社員から説明を受けたという。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

講師が教え子を脅して2020/01/14 20:00会員
元社員2018/07/09 18:05
元社員2018/05/17 00:02
2018/05/15 10:18
英語科の西きょうじ先2018/05/15 03:39会員
 2018/05/15 00:16
 2018/05/15 00:14
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約5600字のうち約3600字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)

企画「CMリテラシー」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。