My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

「東進」はワタミのような職場――「MNJの記事・見出しは虚偽」と言い続けたナガセの哀れな結末 最高裁上告”即行”棄却で完全敗訴確定

情報提供
ReportsIMG_J20171220200928.jpg
ナガセの上告を即行で棄却した最高裁判所。MNJの勝訴が確定した。
 「東進衛星予備校」での過酷な労働体験を報告した記事の見出しに「東進」の表現を使ったのは虚偽だ――にわかに理解しがたい主張によって、株式会社ナガセ(永瀬昭幸社長)が当サイト(MyNewsJapan)を相手に約3千万円の損害賠償請求を求めた裁判で、最高裁第二小法廷は11月17日、ナガセの上告を棄却した。見出しにも記事にも違法性はないとした二審東京高裁判決が確定した。2015年1月の提訴から2年、記事の削除を求める内容証明郵便が送りつけられてからだと2年4ヶ月にわたる争いは、「ナガセによる言い掛かりに過ぎず、違法性はない」と削除にも修正にも和解にもいっさい応じなかったMNJ側の完全勝訴=ナガセの完全敗訴=で決着した。
Digest
  • 最速で棄却されたナガセの上告
  • 「虚偽」だと言いながら反論文掲載を拒否
  • 解読困難なナガセ通知文 
  • 意味不明確な訴状
  • 「被告に立証責任」のルーツ
  • 旧刑法「誹毀の罪」から戦後の「名誉毀損」

全面敗訴したナガセの永瀬昭幸社長。悪評の削除と批判封じが目的の高額訴訟だった可能性が高い
 もとより批判封じ目的の恫喝訴訟(SLAPP)だった疑いが濃厚であるが、MNJからの反訴は棄却されており、応訴に要したMNJ側の多大な負担は、まったく報われていない。立証責任を全面的に被告側(記事執筆者や媒体)に負わせる一方で、訴える側はずさんな訴えでも責任を問われず済んでしまうという、およそ民主主義社会とは言い難い、裁判制度を悪用した「言い掛かり」や恫喝に対する歯止めがない日本の名誉毀損法制の本質的問題が、あらためて浮き彫りとなった。

最速で棄却されたナガセの上告

11月17日、マイニュースジャパン(MNJ)代理人の小園恵介弁護士に最高裁から書類が届いた。MNJが掲載した記事〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉に対し、見出しが「虚偽」であるなどとしてMNJを訴えた民事裁判の上告審の結果である。そこには次のような記載がされていた。

裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定。

第1 主文

1 本件上告を棄却する。

2 本件を上告審として受理しない。

3 上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 鬼丸かおる

裁判官 小貫芳信

裁判官 山本庸幸

裁判官 菅野博之

〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉という見出しがウソだというナガセの訴えに対して、MNJの見出しと記事にいっさいの違法性がないとする判決を東京高裁が出したのは今年6月8日のことだった。

ナガセ側(代理人:小原健・齋藤勇司弁護士)はこれを不服として上告したが、最高裁は5ヶ月後に棄却決定をした。上告理由書の提出から3ヶ月。ナガセは10月に追加の補充理由書も出しているが、そこからわずか1ヶ月での棄却だった。ほとんど相手にされず、最短の期間で棄却されたことを意味する。

フランチャイズ(FC)方式で運営する某東進衛星予備校を「東進」と略したのは「虚偽」表現である――とするナガセの無理筋の言い分に対して、東京高裁判決は「社会通念上許容できる省略範囲を逸脱していない」――とMNJに非がないことを明言した。これに対してナガセは、上告理由書で「(特定の)東進衛星予備校の省略形はせいぜい『東進FC○○校』である」べきだ、などと苦しい反論を展開した。しかし、抵抗もむなしく最高裁では一顧だにされなかった。

むろん、冤罪事件をはじめとして最高裁が問題ある判断をすることは珍しくないが、今回の件に関してみれば、常識的なごく当たり前の判断だろう。

2016年1月29日の提訴から1年10ヶ月、「記事は虚偽であるから全部削除せよ」という内容証明郵便がナガセからMNJに送りつけられた2015年7月末にさかのぼると、2年4ヶ月もの時間が、不毛に費やされたことになる。

この間、MNJが掲載した記事の本文や見出しは「虚偽」であるとナガセは言い続けてきたのだが、結局、MNJの記事は正しく、ナガセのほうこそ「嘘つき」の名にふさわしいことが、裁判所の場で明確になったわけだ

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り6,232字/全文7,652字

2014年7月29日付でナガセからMNJに送られた内容証明郵便。記事削除をもとめている。ナガセとMNJの対決はここからはじまった。

関西地方のとある東進衛星予備校(FC方式でナガセが運営)での出来事を報告した記事の見出しに「東進」という表現を使ったのは「虚偽」だというナガセの主張を裁判所は退けた。広島市内の東進衛星予備校。

虚偽という言葉がなんどもでてくるナガセの訴状。問題にしている記述の特定を求めても回答せず、その後記事本文に関する訴えをすべて取り下げるという奇妙な行動に出た。

MNJ代理人を務めた小園恵介弁護士。DHCが弁護士を訴えた恫喝訴訟で、弁護士側の代理人をして勝訴した経歴がある。恫喝訴訟を受けた記者側で裁判をたたかう実力をもつ数少ない弁護士のひとり。

ナガセ社長の永瀬昭幸氏

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

 2018/01/27 18:29
 2017/12/27 22:52
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約7700字のうち約6200字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)

企画「CMリテラシー」トップページへ
企画「言論弾圧訴訟(SLAPP)」トップページへ
企画「他のメディアへの配信/MyNewsJapanからのお知らせ」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、info@mynewsjapan.comまでご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。