〈「東進」はワタミのような職場〉に違法性なし ナガセに逆転敗訴を下した東京高裁の当り前すぎる判決、一審原克也裁判長の際立つ無知無能
ナガセがフランチャイズ方式で運営する特定の東進衛星予備校での過酷な労働体験を報道した記事の見出しに「東進」という表現を使ったのは「虚偽」だというナガセの訴えに対し、違法性はいっさいなく、 記事本文にも真実相当性があるとしてナガセ敗訴を言い渡した東京高裁の判決文。 |
- Digest
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- 逆転勝訴
- 切り捨てられたナガセの詭弁
- 「記事も見出しも”特定の”話だとわかる」
- フランチャイザーの責任にも触れた判決
- 「批判に答えず高額訴訟」はブラック企業の特徴
逆転勝訴
6月8日午後1時15分すぎ、東京高裁717号法廷で、村田渉裁判長は事務的な口調で判決を言い渡した。
1、本件控訴に基づき、原判決主文第1項および第2項を取り消す。2、被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3、控訴人のその余の本件控訴を棄却する。
4、本件付帯控訴を棄却する。
5、訴訟費用は 第1審、2審を通じ、本訴、反訴を通じてこれを三分し、その一を控訴人の、その余を被控訴人の負担とする。
「控訴人」とはマイニュースジャパン(MNJ)、「被控訴人」は株式会社ナガセのことである。ナガセがMNJを訴えた民事裁判で、一審東京地裁は、見出しに「東進」という表現があることが虚偽にあたるなどといった、意味不明というほかないナガセの屁理屈を追認し、見出しの削除と40万円の支払いを命じていた。
これを不服としてMNJが控訴したところ、上記のとおり東京高裁は一審判決を破棄。ナガセの主張は一つも認められていない。MNJの完全逆転勝訴である。
MNJの記事は「虚偽」だと言い続けてきたナガセに敗訴を言い渡した東京高裁。 |
MNJの代理人は、瑞慶山茂・小園恵介・松本啓太の各弁護士、ナガセ代理人は小原健・齋藤雄司の各弁護士が務めた。
「東進」で起きた問題を報告した記事の見出しに「東進」とつけたことに違法性はない、という当たり前すぎる結果だ。
それでも、大企業が批判封じ目的で高額の名誉毀損訴訟を起こすことが頻繁になり、裁判所もろくに審理せず大企業の肩を持つ判決を書く傾向が強い昨今の「言論の冬」的状況を考えれば、それなりに画期的だろう。
数々の組織的な違法行為に手を染めているナガセの永瀬昭幸社長。今回の「言い掛かり」をつけてきた件では、高裁がmynewsjapan側に違法性なし、と認定。 |
そのような言い掛かりをつけて裁判を起こしてくるナガセ社長・永瀬昭幸の自己中心的で歪みきった性格がよくわかる裁判でもあった。教育者として完全に失格と言える。
経緯を振り返ると、〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉と題する報告記事がMNJに掲載されたのは2014年10月。約9ヶ月後の2015年7月に、「記事は虚偽である」などとして記事削除を求める内容証明郵便が、ナガセ代理人の小原健・齋藤雄司の両弁護氏名で届いた。
さらに半年後の2016年1月、ナガセはMNJを相手どり、3000万円の損害賠償と記事削除、謝罪広告を求める裁判を提起した。ナガセは、事実関係の正確さから勝ち目がないと悟ったのか、一審の審理のなかで、記事削除は取り下げ、争点を見出しの表現だけに設定してきた。
内容証明郵便が届いてから2年、提訴からだと1年半を経て、「ナガセ言論弾圧事件」はMNJ側の逆転勝利という形で、一応のケリがついた。
なお、逆転敗訴したナガセはこれを不服として、6月22日付で最高裁に上告兼上告受理申し立てを行った。よって判決は確定していないが、常識的に考えれば、上告や上告受理申し立てを最高裁が認める余地はきわめて小さい。
「東進」グループを経営・運営する株式会社ナガセ本社(東京都武蔵野市吉祥寺)。永瀬昭幸社長によるワンマン経営ぶりについては、社員やフランチャイズ契約をしている経営者らが口をそろえて指摘する。 |
切り捨てられたナガセの詭弁
ナガセがフランチャイズ方式で運営する特定の「東進衛星予備校」での過酷な労働体験記の見出しを、〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉としたことが、なぜ虚偽になってしまうのか。「東進」のことを「東進」と表現しただけなのに、どうしてウソつき呼ばわりされるのか。わけがわからないというほかない。教育産業大手とは思えない「日本語力」である。
ナガセの理屈はこうだ。
ナガセ直営の東進ハイスクールを含む全国の東進グループで起きていることのように誤読させる、だから虚偽だ――
かたやMNJ側は、見出しの表記が会話調になっている点や、記事表現が「私は」という体験者の一人称で書かれている点、冒頭部分を少し読めば特定のフランチャイズ校での体験であることははっきりとわかる点などを指摘し、「誤読」の余地はないと反論した。そもそもナガセの理屈は「誤読」「虚偽」という代物なのか、とも主張した。
恐るべきことに、一審東京地裁はナガセの言い分を、何も考えずそのままなぞる形で「虚偽」認定した。早い話が、ナガセが「批判されている」「不快だ」と感じれば「虚偽」になるというわけで、この独自の理屈と日本語解釈に、裁判所がお墨付きを与えたデタラメ判決だった。
人の心の中に生じる「印象」で虚偽かどうかを判断しているわけで、これでは中世ヨーロッパの異端審問を彷彿とさせる前近代的な判決ではないか--。筆者は一抹の戦慄を覚えた。そのくらい、原克也という裁判長は、現代の常識に照らせば、無知無能というほかない判決を平気で書いたのである。
一審判決文等は、〈記事内容の正確さ裏付ける結果に――内心の「印象」で見出しだけ削除を命令、“異端審問官”原克也裁判長の歴史的言論弾圧判決〉で報告したとおりなので、ご覧いただきたい。
千葉県内の東進衛星予備校。経営合理化を求めるナガセの方針により、フランチャイジーでの労働環境が悪化している例があるという。また本社の指示によって、売り上げの水増しが横行しているとの声もある。 |
「記事も見出しも”特定の”話だとわかる」
東京高裁がこれをひっくり返したのは、ナガセの主張とそれを鵜呑みした一審判決があまりにも粗雑すぎて、ナガセを勝たせたままやりすごそうにも、さすがにやりようがなかったのかもしれない――筆者は想像する。
以下、判決理由を引用したい
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批判に耳を貸さないワンマン経営者との評判がある永瀬幸昭ナガセ社長(同社HPより)。
MNJを訴えた裁判の控訴審で、ナガセが東京高裁に出してきた答弁書。「悪意をもって披控訴人の名誉を毀損することでビジネスをしているような事案については、請求金額は大幅に増額すべきである」「本件のような事例に、正しく制裁が加えられることによって、事実に則ったより良質の記事が作成される機運が生まれる」などと述べ、企業批判の弾圧を奨励するかのような暴論を唱えている。
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東進グループによる被害者を減らすためにも、ナガセに反省させるためにも、二度とこのような言い掛かり訴訟ができないよう、この会社には、すべての膿を吐き出させる必要がある。FC企業「モアアンドモア」社の倒産とナガセによる支援
http://www.mynewsjapan.com/reports/2322
に関しては、特に深い闇を抱えていることがわかってきている。
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