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東進ハイスクールのナガセが裁量労働制を悪用し“定額働かせ放題” 現役社員「残業100時間超でも一律35時間分だけ支給、深夜残業代・休日出勤手当はいっさい支払われていません」

情報提供
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裁量労働制を悪用して「深夜・休日出勤手当」を一切支払わない宣言(違法)まで行っている東進ハイスクール・ナガセの人事部
 違法行為が続々と明らかになっている東進ハイスクール運営のナガセ(永瀬昭幸社長、東京・吉祥寺)で、またブラック労働の実態が明らかになった。同社では、本部に勤務する百数十人に裁量労働制が適用され、月35時間分の一律手当が「みなし」で支給されるが、実際には35時間で収まることはほとんどなく、平日は22時でも、本部ビルの全階で明かりが点灯。情報システム部では徹夜作業もあるという。出社時刻に社員の裁量はなく、残業100時間を超える月もあり、必然的に22時以降の残業や休日出勤も発生するが、深夜残業代や休日出勤手当はいっさい支払われていない。折しも国会では、裁量労働制の適用範囲を、一部の営業職や契約社員、最賃労働者にまで拡大できるよう、法改正の議論が進められている。裁量労働制が適用されると、どれだけ長時間・無賃労働が増えるのか――「自分も100時間の残業をする月が実際にある」と証言する現役社員が、“定額働かせ放題”の実態について、告発手記を寄せた。
Digest
  • 「定額働かせ放題」の実態
  • 対象者数は本部の100人超
  • 「忙しい月は残業100時間超」未払い賃金の実態
  • 時間管理と比べ、20万円分タダ働きの月も
  • 情報システム部は徹夜作業も、無賃労働に

「定額働かせ放題」の実態

私は、株式会社ナガセの本部に在籍している現役社員の一人で、裁量労働制が適用された職場で働いています。社員に従来型の時間管理制を選択する余地はなく、裁量労働制が事実上、強制的に適用されています。

裁量労働制の適用においては、労働者側の同意が必要のはずですが、私自身について言えば、同意を求められた記憶が一度もありません。そもそも、うちのようなトップダウンの会社で現場が拒否できるはずもないですから、事実上の強制です。裁量労働制に同意せず従来型の時間管理で働いているという社員は、一人も聞いたことがありません。

 同社では、本部は「主任」(学卒3年目~)以上で、全面的に裁量労働制となる。「裁量労働の条件等について、書類を書いた覚えはあるのですが、回収されてしまいました」――別の若手社員はそう証言する。その場でサインだけさせて回収し証拠を残さない手法は、同社のアルバイトにも適用している違法行為(労基法・パートタイム労働法で書面交付は義務)。冒頭画像の通り、書類の内容自体に違法性が高いことから、社員に控えを保有され、弁護士などに相談されることを恐れているようだ。労働条件に関する書面を交付しない手口はブラック企業でよく見られるため、従業員は必ず要求しなければならない。

残業時間は、実態よりも大幅にカットされています。なかでも、深夜・休日出勤しても一切、支払われないばかりか、人事部も永瀬社長も「支払わない」と宣言しており、実際に違法な無賃労働がまかり通っています。

現在、国会で裁量労働制の適用拡大が議論されていることもあり、この制度が拡大すると、このような違法な賃金カットをする会社が、うちのような上場企業ですら普通に発生するということをお知らせしたいと思い、内部告発します。

4、裁量労働制社員には、みなし時間外手当として時間外勤務35時間分を一律に支給する。

5、当社の職務給、資格給は超過労働に対する賃金として就業規則に定めているが、裁量労働制社員には上記みなし時間外手当以外に、深夜労働、休日労働のある無しに関わらず、職務給、資格給を一律に支給する。

6、業務都合上、やむを得ず深夜または休日に労働することも、事前に所属長の許可を得れば可能であるが、社員の健康のため極力そのような事がないように配慮する。(超過労働に対する手当は職務給、資格給ですでに支給されているので別途支給はない。)

これは、私の職場で共有されている人事部の「裁量労働制導入の趣旨と運用について」という社員への通達文書です(冒頭画像)。深夜・休日労働を行っても賃金はいっさい支払わない、と宣言しています。そして、実際に、この文書のとおりに現場で運用されています。私自身、裁量労働制が適用されていますが、深夜残業代や休日出勤手当は、いっさい支払われたことがありません。

永瀬社長が、毎月の全社研修会で話している内容も、この違法な通達の内容に沿っています。すなわち、「いくら遅くまで働いても、残業代は払わない。本人が働きたいと言って長い時間、働くことの、何が悪いのか」といった話をよくしています。まさに“定額働かせ放題”宣言です。

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就業規則の「裁量労働によるみなし労働時間勤務規程」

一方で、就業規則(右記参照)の「裁量労働によるみなし労働時間勤務規程」のほうには、全く逆のことが書いてあります。

第5条 業務の都合上、やむを得ず深夜または休日に労働する場合は、事前に所属長に申請して、許可を得るものとする。この勤務時間は、みなし労働時間に含まない。

こちらは社外の社労士などが監修しているのかもしれませんが、国の法律に沿った合法的な内容が記されています。つまり、こちらが建前で、労基署にはこちらを見せている可能性がありますが、実際の運用は冒頭の人事部通達の通りとなっています。

永瀬社長の命を受けた(または永瀬を忖度した)人事部としては、就業規則の通りに運用してしまうと追加で人件費が発生してしまうので、それを払いたくないがために、ケチって、虚偽の通達を行い、嘘を信じ込ませ、違法な運用を現場で行っているわけです。本来支払うべき従業員の深夜残業手当や休日出勤手当を、会社の利益に変換していることになります。これは、従業員に対する詐欺行為なので、即刻、未払い賃金を返金していただきたいです。

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30歳前後の給与明細。「超過労働に対する手当は職務給、資格給ですでに支給されているので別途支給はない」(人事部)と賃金踏み倒し宣言を行っているナガセ。「調整手当2」が、いわゆる裁量労働手当(みなしの35時間残業分)に相当するという。時間外勤務手当は項目があるだけでゼロ円。まさに会社の思惑通り、“定額働かせ放題”となっている。

【編集部解説】

人事部自らが文書を出し、率先して違法な労務管理を行っている点が、最高裁でも認定済みのナガセのブラック企業ぶりをよく表している。

そもそも、裁量労働制を適用しているにもかかわらず、「裁量勤務手当」という項目が給与明細には見当たらない。社員によれば、「調整手当2」というのが、35時間分のみなし残業代に相当するようだが、わざとわかりにくくして煙に巻こうとの意図がうかがえる。

 さらに、「超過労働に対する手当は職務給、資格給ですでに支給されているので別途支給はない」などと身勝手な宣言を行い、割増が法で義務付けられている深夜残業代や休日出勤手当を支払わない点は明確に違法で、永瀬昭幸社長の「従業員搾取経営」の姿勢がよくわかる。


対象者数は本部の100人超

私が所持する資料では、平成26年当時で、合計117名が裁量労働制適用となっています

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「専門業務型」で該当労働者数が多いのは「学習参考書等の編集業務」。労基署に届け出る必要があるが、審査は甘く罰則もないため、「定額働かせ放題」となっているのが裁量労働制の現状である。

こちらは、「企画業務型」のほうの、裁量労働制に関する決裁届(一部)。社長室、総務、人事、広報など。対象範囲は現状でも広い。

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