「東進は本体も人材使い捨てです」ナガセ元社員が、毎週強制サービス出勤のブラック企業ぶりを証言――有名講師陣も続々と他社に流出
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ナガセ時代の名刺を提示するインタビュイー |
- Digest
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- FCで稼ぐナガセ
- 「土曜も出ろ」1時間半かけて日報を書く日々
- 日報の揚げ足をとる本部長
- 労務データは改ざんされている
- 「オレオレ詐欺のアジト」みたいな3月末
- 有名講師陣も続々と流出、授業の質は低下
- 「幕末の塾」か、スタディサプリ的AIか
- FC経営者も脳梗塞で“過労死”
- 質問に答えられず、逃げるナガセ
FCで稼ぐナガセ
私はナガセの衛星事業本部という、フランチャイズ(FC)事業展開を担当する部署に所属していた元社員で、その関係から、最近までの状況も知りうる立場にいます。ナガセでは違法な労務管理が横行しているため、報道によって変わることを願って、現場の実態をお話ししたいと思います。
ナガセは、直営94校のほか、全国に984(※2016年3月末時点)のフランチャイズ校を「東進衛星予備校」の看板で展開しています。その管理を行うのが衛星事業本部のエリアカウンセラー(AC)たち。25人ほどの組織なので、AC1人あたり平均で、約40校を担当する計算です。実際には、担当地域によって30~50校とバラつきがあります。
仕事内容のミッションは、この担当FC校の売上目標を達成すること。年間で1人あたり20億円程度の売上目標が設定され、年によって異なりますが、「前年比103%~110%」等が課されます。FC1校舎あたりの売上は、平均で5千万円ほど、担当地域の生徒数は3千人を超えます。
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ランク別のロイヤルティー率一覧表![]() |
ナガセがFC企業から徴収するロイヤリティー率は売上規模によって15~35%なので、ざっくり25%としても、20億円×0.25=5億円。私1人が担当するFCからだけで、5億円もの売上が入る計算です。
それ以外にも、FCは、本部からチラシを買わされるので、ナガセに、もっと払っています。
他業界のFC事業では、初期費用のうち本部が7~8割出すこともありますが、ナガセの場合は、加盟店側がほとんど全額を負担するので、ナガセはノーリスク。生徒が集まらず撤退しても、損失を被るのはFC企業側です。では、ナガセは何を負担しているかといえば、授業コンテンツなどノウハウの提供のほかには、バスのラッピング広告や頻繁に流すテレビCМといった莫大な広告宣伝費などです(2016年3月期連結売上の約1割強=46億円が広告宣伝費)。
私は末端社員なので実際の細かい数字まで見る立場にいませんでしたが、ナガセは、このフランチャイズ(FC)事業でボロ儲けしている、というのが現場の実感です。おそらく本体(東進ハイスクール本部)は利益がほとんど出ておらず、そこで蓄えたノウハウをFC事業に活用して利益を出す、というのがナガセのビジネスモデルの肝です。(※ナガセは有価証券報告書でも、このセグメント別業績を開示せず、一括で「高校生部門」としている)
「土曜も出ろ」1時間半かけて日報を書く日々
ACは、自分が担当するFC校の売上を達成するために、1日平均で3校舎程度をまわって、指導したり、施策を提案したり、本部の方針を伝えたりします。チラシや募集ツールを売り込むために、FC企業の人たちと一緒に、早朝(朝7時半~8時半)の校門配布を手伝うよう、ナガセから指示も受けています。朝早いから大変ですが、繁忙期には週1~2回ほど手伝います。
そして毎日、日報を書いて、部長、本部長らに提出。これはエクセルとワードを使って「A4」サイズで3枚、毎日です。成果が出ていても、いなくても、関係なく、毎日、提出します。無駄に時間を使っているな、と思いながら、3枚書くのに1時間半かかります。
本部長、副本部長クラスが「土曜も出ろ」と当り前のように言うため、我々ACは、土曜も出勤してFC校を回り、この日報を提出しなければなりません。ACがいる「支援部」は、支援第一部~第五部まで5つに分かれていますが、この計25人ほどの全員がそうやって毎週土曜日も、出勤していました。休むと怒られるのです。
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ナガセの求人票。堂々と「残業手当なし」と記されているが、社員が残業をした場合に残業手当を支払わないのは、もちろん明確に違法である。![]() |
中途入社の人は、労働条件が入社時の契約と明らかに異なるため、当然、人事にクレームします。その結果、今年の6月は、土曜が休みになったそうですが、7月には解除され、元に戻りました。その話を聞いて、人事部は力がないんだな、と思いました。人事部から「社員が辞めているから」と言われ、一時的に土曜を休みにしただけだったのです。人事はこのサービス残業の実態を知っているので、組織ぐるみと言っていいです。
中途採用の求人票を見ても、休日は「年間120日(内訳)土曜 日曜 夏期10日 年末年始4日」、所定労働時間は「8時間」とあります。もちろん、土曜に働いたら、休日出勤手当を支払わねばなりません。
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ナガセ衛星事業本部の組織概要と報酬![]() |
日報の揚げ足をとる本部長
人事の言うことも無視してブラック労働を現場に押し付けている幹部の筆頭は、加藤伸というみずほ銀行出身の本部長です。2004年から10年以上も代わっていませんから、人事が硬直化しています。
副本部長は服部哲士という上級執行役員で、証券会社出身。「衛星事業本部副本部長兼支援部長」という肩書きがついています。配下にいる支援第一部~第五部の部長も、従うほかなく、その下にいる我々も同様です。
日報には、よいことしか書けないため、あまり生産的な作業ではありません。悪いことを書くと対応策を求められ、ますます時間をとられるからです。たとえば、「生徒が前向きでない」と書いたら、どうやって前向きにするかを書かないといけないので、時間外労働が増えます。
ただでさえカツカツ、ギリギリで回しているのに、部長以上が細かく見ているので、1時間半程度かかるのです。特に、本部長(加藤常務)が見ていて、字の間違いなど本質でないことを指摘してきます。本当に役立つアドバイスや指示ならよいのですが、とにかく挙げ足をとる。それだけをやっている人だと思っていました。銀行出身で、学習塾経営のことは何もわからないから、そうなるわけです。
お飾りで銀行から天下りでやってきた人間が高い給料(年俸4千万円)で現場の揚げ足をとって、銀行員の経歴だから学習塾の現場のことなど何も知らない。これでは、現場がやる気になるわけがないです。
労務データは改ざんされている
おそらく永瀬社長は、「知らなかった」と言い逃れするつもりでしょう。加藤本部長がデータを改ざんして、週休2日にしている可能性が高いからです。なぜなら、私は土曜分の日報も出していますが、給与明細には、土曜日出勤分(休日出勤手当)の記録も賃金も、どこにも掲載されていないのです。
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ナガセの給与明細(40代社員)![]() |
給料は、みなし労働時間制で、「勤務時間:10:00~19:00(事業所外、みなし勤務)」となっていました。1ヵ月分の額がみなし時間分を含めて固定され、その12か月分+ボーナスが年間2か月分。単純に、年俸を14で割った額が、毎月支払われていました。毎月、同額です。
年俸は、自分が担当するFCの売上目標達成率によって、毎年、改訂されます。東日本大震災(2011年3月)で前年比7割ほどに落ち込んだときは、1年だけ猶予されましたが、結局、翌年も回復せず、年俸も下がったので、そのときに多くが辞めました。
つまり、会社としては「年俸制」と考えていて、年俸を払っているのだから、いくらでも働かせてよい、という発想なのです。しかし、管理監督者ではない現場労働者には、休日出勤分や、規定の1日8時間労働を超えた残業分の賃金などは、もちろん払わねばなりません。これを一度も払わなかったナガセは、ブラック企業だと思います。
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ナガセ40代社員の年収(市県民税決定通知書)![]() |
私は現場の平社員でしたが(管理監督者ではない)、どんなに長時間働いても、残業代や深夜割り増し分を一度も貰ったことがありませんし、土曜に休日出勤して働いても休日出勤手当を貰ったことはありません。労組もないので、社内に相談窓口すらない状況です。
「オレオレ詐欺のアジト」みたいな3月末
年度の締めにあたる3月末は、10日間、AC全員が、本社(吉祥寺)に集められ、朝10時~夜10時まで拘束されます。1人が1日150本くらい、加盟校に電話して、契約をとれるよう、発破をかけるのです。そこは、テレビ報道で見るオレオレ詐欺のアジトみたいな風景です
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読者コメント
林修氏はいつまで受験生に対して偉そうに説教を続けるのか。反社会的勢力としか言いようのないナガセ=東進の看板=林修は本当に恥ずかしい存在だ。受験生や社会に対して偉そうに能書きを垂れる前にしなくてはいけない事が山のようにある。
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