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前代未聞 元期間工がトヨタを訴えた!労組脱退で雇止、会社は「自己都合退職」と離職票に虚偽記載――「雇用上限2年11カ月」の脱法性を問題提起

情報提供
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「非正規労働者の労働環境に一石を投じたい」とトヨタ自動車を訴えた元期間従業員の大沢浩二氏(50歳)
 トヨタ自動車の元期間工・大沢浩二氏(仮名・50歳)は、労働組合脱退を理由に2018年3月に雇止めされた。しかも大沢氏は、契約期間延長希望の書面を提出していたが、トヨタは「自己都合」と離職票に虚偽記載した。そのため雇用保険の給付日数が240日間から90日間に削減されそうになったが、労基署に働きかけて会社都合と認められた。大沢氏は納得がいかず、愛知労働局にあっせんを求めたがトヨタは話し合いを拒否。そこで19年9月17日、本来なら働けた残りの期間の給与と慰謝料を合わせ、約320万円の支払いを求めて名古屋地裁岡崎支部に提訴した。現在、原告被告双方の代理人と裁判所による進行協議が進められている。大沢氏は改正労働契約法の主旨に反する脱法的な非正規従業員の使い捨てを疑問視し、「若い世代のために」と、前代未聞の訴訟に踏み切った。(記事末尾で訴状ダウンロード可)
Digest
  • 史上初か? トヨタ期間工が会社を訴える
  • 期間工として日給1万円からスタート
  • 期間従業員もトヨタ労組を退会したら雇止め
  • 会社が離職票に虚偽記載
  • 労働契約法に真っ向から反していないか?
  • 2年11カ月で契約打ち事態に疑問

史上初か? トヨタ期間工が会社を訴える

元期間従業員(いわゆる期間工)の大沢浩二氏(仮名・50歳)がトヨタ自動車を提訴したニュースを聞き、過去に同じような例はないかと探したが、見つからなかった。

そこで、長年トヨタ社員として働き、御用組合に愛想をつかして全トヨタ・労働組合を設立した若月忠夫委員長(現在は定年退職)に、過去に元期間工がトヨタを訴えた事例はあるかと訊ねた。

すると、「まったくそういう例を聞いたことがありません」。労働問題に詳しい他の人物に聞いても同様の答えだった。報道されなかったり、労組が関わっていないことも考えられるため、過去に事例がないと断定はできないが、「史上初の期間工裁判」の可能性が高い。

大沢氏は、約17年間、自動車関連工場で期間従業員として働いてきた。「自動車やオートバイが大好きで、関係する仕事がしたかった」というが、期間従業員は契約期間の上限が定められている。

期限を終えると、一度辞めて半年間の空白期間(クーリング)をつくって再び一から働き始めるか、別の会社で職を得なければならない。

このような契約を繰り返して17年になる大沢氏が語る。

「私が自動車産業で働き始めたのは30代半ばくらいですから、そのころはこの年齢で正社員登用の道は、非常に限られていました。正社員とはいかなくても、一か所で長期間働けるようになれば、ありがたいのです」

自動車産業で働く期間従業員は、似たような考えの人が多いだろう。大沢氏がトヨタで初めて働いたのは、新型プリウスがモデルチェンジする直前の2011年だった。

トヨタの期間従業員の契約は6か月単位で、契約更新時にわずかな昇給がある。契約を延長して最長2年11か月間働けるが、そのあとは辞めなければならない。

無契約の期間をつくったり、他の会社で働いた後に、再びトヨタに戻って契約すると、まったくの新人として、低賃金で一からスタートする。

「トヨタでは、契約を10回以上繰り返している人もいました」と大沢氏は言う。

人によっては、合計で10年も15年もトヨタの工場で働くこともありうるのだ。実質的に正社員のようなものだが、労働条件も悪く、不安定のままである。

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雇入通知書 最後の契約で大沢氏がもらったもの。

期間工として日給1万円からスタート

大沢氏は、このとき最初の6カ月間あまりトヨタで働き、他社に移った。問題が起きたのは、2度目にトヨタで期間工として入社していたときだった。

大沢氏は2015年9月に期間従業員として二度目に入社。最初は3か月の契約で、その次からは6カ月ごとに契約を更新していった。毎年5月と11月に、日給額がわずかに上がる給与体系である。

・2015年10月 日給1万円
・2016年5月  日給1万150円
・2016年11月 日給1万円650円
・2017年5月  日給1万800円
・2017年11月 日給1万1100円

このように、わずかだが賃金は上がり、大沢氏が最後に受け取った賃金は、残業や深夜勤務手当も含めて、手取額が月24万9618円だった。

ともあれ、リフトから降ろされた部品をメーカー別、供給先別に仕分けして配列する作業などを続けていったという。

こうして6カ月ごとの更新を続け、2018年3月に最後の5カ月の契約更新を残すだけになった。その矢先に、事態が急展開することになる。

期間従業員もトヨタ労組を退会したら雇止め

働き始めて1年が経った2016年9月、大沢氏はシニア期間従業員になり、2回目の契約更新に先駆けて、トヨタ自動車労働組合の加入説明会に招かれた。

トヨタでは、契約2年目になると、期間工であっても、正社員と同じトヨタ労組の組合員になれる。一見よさそうに思えるが、実態はそうではなかった

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最初にもらった賃金明細書。日給1万円から。

最後にもらった賃金明細書。このときは日給が1万1100円に上がっていた。

トヨタ自動車労働組合を辞めたことにより雇止めした旨が書かれた通知書。

トヨタ自動車第二労働組合の染谷委員長が、事件の顛末を整理してハローワークに提出した報告書。

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 2020/01/01 20:20
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