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『88万ウォン世代』(兎晰熏・朴権一)

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2007年8月の出版

韓国の20代の世代論、特に若手ワープアについて書かれた本。こういった日本国外の実態を読むと、日本のロスジェネって、ほとんど問題ではないな、という思いを強くするとともに、日本の未来の姿にダブるのでは、と思った。

韓国は1997年のIMF危機後、国の生き残りをかけて経済を自由化せざるをえなかった。その過程で、まず年功序列が崩れ、次に正規職が崩れた。IMF危機で社員が減らされ、その後に再雇用されたのは、ほとんど非正規社員だった。

市場の失敗である「独占」が進み、政府もこれを容認。“逆独禁法”である。グローバル市場で生き残るために「選択と集中」を政府自らが進めた結果、サムスンのような巨大な企業は強くなって世界で生き残ったが、大企業に入社できないほとんどの20代社員は、待遇の悪い中小企業の社員か、非正規労働者になるしかなかった。

IMF危機後、大資本によるフランチャイズ化が急速に進んだ結果、自営業者になる道すら閉ざされ、商店街は沈没した。

結果、中国やインドと同様、アメリカ留学生が増え、韓国国内には戻らないケースも増える傾向にある。国を見捨てるパターンだ。

新自由主義のもと、経済は年4~5%成長と回復したが、大企業に入社できない9割以上の若者は見捨てられた形となった。本書では、非正規市場強化へと電撃転換した大統領・盧武鉉(ノムヒョン=就任期間2003~2008年)が最大の戦犯とされている。

本書は雨宮処凛氏推薦とあって、著者が超左派的な人物(日本でいう連合の人みたいに「雇用の流動性=悪、安定=善」という考え)であることからマイナス面しか記されていないが、一方で、そうやって蓄えた利益でサムソンは日本企業を圧倒的に凌駕する利益を叩き出し、世界の中で存在感を示している。新自由主義をとらなかったら、サムソンすら生き残れず、韓国経済は、まるごと没落して「世界の負け組」となり、今より悪化している可能性が高い。

つまり、誰が大統領でも、IMF危機のような状態になれば、金大中-盧武鉉路線(=いわゆる新自由主義)しか選択の余地はなかったのだと思う。これは論理的に考えれば当然で、経済が崩壊しているのに、生易しい「保護」だの「規制」だのとは言っていられないわけである。韓国も日本も、原油など天然資源に恵まれていない以上、厳しい競争のなかでしか世界のなかで生き残れないのだ。

 にもかかわらず、日本の「くれくれ保護しろ」的な、甘ったれた現状を見るにつけ、そのツケはどれほど大きくなってしっぺ返しを受けるのだろうか、とつくづく思う。韓国の現状を見れば少しは理解できそうなものであるが、 そのときが来なければ人間、なかなか分からないものなのだろう。

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