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最近読んだおススメの11冊

情報提供
 忘備録代わりに最近読んで良かったと思う本を紹介しておこう。僕は、異常に忙しいなかでも食事中はだいたい本を読んでいるので、自動消化されていく。特に、自分と経歴や年代が近い人や、目標とすべき人が書いてる本は、だいたい買って読んでいる。

■『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(東野圭吾)

 「黙祷はビートルズで」の章では、ビートルズの曲(今回はLet it be)をモチーフにして、手紙のやりとりを通して、「同じ光景でも、人の心の状態如何で違って感じられる」といった答えのない問題(カ・ド・コンシャス=あれも正しい、こちらも正しい…)を描き、考えさせる。東野作品のなかの超名作『手紙 (文春文庫) 』と、ウリ2つの手法だ。

この“三題話”(①モチーフとなる何か、②訴えたいテーマ、③手紙を通した心情表現)は、空手の「型」みたいなもので、僕が理想とする小説の教科書として認定させて貰った。

こういう得意な型をいくつ持っているか、が小説家の実力なんだと思う。ほかの作品も、きっとパターン化された型が頭の中に無数にあって、そのワザの組合せなんだと思うが、素人の僕には気づけない。型を知れば、複数のワザを組合せ、仕事をショートカットできる。東野氏が作品を量産できる秘訣はそこにあるに違いない。

■『「一生食べていける力」がつく 大前家の子育て』(大前研一)

これは編集者の企画力の勝利。読みどころは、大前研一氏が書いた前半の「きれいごと」ではなく、後ろのほうの、長男・次男へのインタビューだ。

寝ている長男を夜遅く帰ってきて叩き起こし殴り倒すというDV親父ぶりや、休日なのに家族旅行にも猛烈に細かいスケジュールをこなすことに巻き込むため疲れてしまい、「(大前研一抜きで)家族だけでもう一度旅行しようか」と言わしめる異常なエネルギー親父ぶり。

ミスをするレストランのスタッフやCAを所かまわず大声で叱りだしたりするロジカルなカイゼン親父ぶり。友人に海外旅行に行くなどと言えばイジメられるから本音はあまり行きたくないし、子供にも用事があるのに、「俺は世界で一番忙しいんだから俺に合わせろ」と無理やり夏休みの家族全員の予定を決めてしまうリーダーシップ親父ぶり。

そして、長男も次男も学校をドロップアウトして紆余曲折のキャリアへ…。当然、親父の本なので子供らも編集者もすごく気を使ってセーブしてるはずなのに、それでもこれだから、実際はスゴかったんだろうな、と。この兄弟と同世代の私としては、かなり楽しめた。「子供たちのことを本気で考えてくれていたのは確かだと思う」という最後のほうのコメントは本音だろうし、ホントだと思う。まあ羨ましいものである。

■一連の『武器』本×3冊(瀧本哲史)
僕は君たちに武器を配りたい
武器としての決断思考
武器としての交渉思考

いずれも主張に一貫性、論理性があって、典型的なコンサル系著者の本だな、と思った。「武器」というインパクトのあるブランディングとマーケティング力も含め、読後に、なるほど感が異様に強く残る。外資系コンサルの上位層はこういうタイプであるべきだし、また、そうでないとやっていけない世界だと思う。

『僕は君たちに武器を配りたい』では、投資家的な考え方と、そのために必要となる一般教養(リベラル・アーツ)の重要性を説いている。

 リベラル・アーツが人間を自由にするための学問であるならば、その逆に、本書で述べた「英語・IT・会計知識」の勉強というのは、あくまで「人に使われるための知識」であり、きつい言葉でいえば、「奴隷の学問」なのである。

これは全くその通りだ。英語という手段を使って何を成し遂げたいのか(目的)、その目的は、投資家的にみて、リターンを見込める正しいリスクといえるのか。安定などありえない時代になったからこそ、本書の主張はますます正しいと思うのである。

■『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』(田中裕輔)

ベールに包まれていたプロジェクトの内容や、入社試験からの一連の流れがリアルに分かる。これはマッキンゼー的にはまずい。「見えないもの」をいかにも高いかのように装って売っている会社だけに、隠しておくことによって、ミステリアスな幻想によって付加価値(すごい訓練を受けた天才ぞろいに違いない、みたいな)をつけて、高いフィーを吹っかけているところが多分にあるからだ。

BCGでは快く協力してくれる人もいるのに、マッキンゼーの人たちには、もう4~5人取材を断られていて、その理由として「社外に給料の話をするとマズい、(仕事内容に比して?)高すぎることがクライアントにバレてしまう」という輩もいて、その後ろめたい気持ちはよくわかるとはいえ、もっと正々堂々と開示したらどうか、人に言えない汚いカネなのか?と思うわけである。

実際、本書を読むと、業界内では噂でよく聞くとおりだった。コンサル業界では、同じクライアントから過去のMckの成果物を見せて貰うことがよくあるが、フィーがバカ高い割に全然たいしたことないよね、というのが定説で、さすがだ、バリュー出てる、とても真似できない、などという話は一度たりとも聞いたことがない。

それだけに、その点において、著者の意図とは異なるであろうが、期せずして、この本はなかなかのバリューが出ている。クライアント企業担当者というより、コンサル志望者の若者は、特に読んだほうがいい。

■『ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント』(高島宏平)

モノ売りの商売って資金繰りが大変なんだな、と改めて思った。それでもやり遂げようとする動機は、いったいどこから湧いてくるのか?この種のタイプの起業家は、僕にとっては非常に不思議な存在である。

特段、野菜をやらなければならない経歴はなく(たとえば僕は既存の新聞社を批判して辞めて自分が考えるジャーナリズムを貫いている)、とにかく独立したい、何かを成し遂げたい、という達成動機のようなものを持つタイプ。実際、そういう人が成功を収めるパターンが多い。

楽天の三木谷氏も、サイバーの藤田晋氏、ライフネット岩瀬大輔氏も、事業を始める5年前から沸々とした芽があったわけではさらさらなく、「さて、事業内容は何でもいいが、何をやってやろうか、なんでもいいから自分のリーダーシップで何かを成し遂げて成功してやる、ビックになるのだ」という、“ビック動機”からスタートしている。この場合、「こだわり」がない分、柔軟に事業運営できるため成功しやすい。だから、やりたいことがない人は、こういう人を参考にすればよい。

高島氏のオイシックスは、そこそこ成功を収めた今でも、五反田駅前の築40年のオンボロビルでやってるあたりが、好感を持てる。また、競合他社の社名を一文字として出さず、批判も賛意も示さないあたり、狭い業界内で気を遣って大変そうだな、と思った。

■『社長のテスト』(山崎将志)

残念な人シリーズで大ヒットを飛ばした山崎氏の企業小説。内容はかなり面白くて読ませる。それぞれの立場で章立てし主語も変わる構成は、物語を重層的に見せる手法として、参考になる。だが、版元(日経)が新聞社の盲腸的存在である出版部門が独立した組織なので、プロの編集ではまったくないのが致命的だ。この内容で380ページは無駄に長い。3~4割カットできる。

おそらく新聞記者出身で「一丁あがり」の編集者が担当しているのだと思う。本来、本の編集者と新聞記者は全く異なるスキルセットが必要なのであって、雇用対策で編集局に飛ばされたような元記者集団に良い本が作れるはずがない、と言っておこう。中身が十分イケてるし、もっと読まれるはずだっただけに、もったいない。他社から出す次回作に大いに期待したい。

■『坂の上の坂』(藤原和博)

これまでは坂を上れば、50代以降、下るしかなかった。だが、「坂の上の雲」の時代に比べ、日本人の寿命は劇的に伸びた。だから、30代には3つ、40代には4つ、50代には5つの、プチ専門領域を持ち、次の坂を登ることで人生を充実させよ、ということ。このコンセプトは、成熟社会&人生80年時代に、重要度がどんどん増していくと思う。著者は、元橋下氏の顧問だが、5年後には民間から文部科学大臣として入閣し、辣腕を振るってほしい。

■『さびない生き方』(藤原和博)
 藤原さんと『10年後に食える仕事、食えない仕事 』をテーマに対談することになったので、これまで読んでなかった本を片端から読んだのであるが、これは一番、藤原流のキャリア論が凝縮されていておススメである。

ようは、20代のうちに5年間は腰を落ち着け、1万時間を費やし、勝負スキルを身につけよ。それは競争が激しくない特定のニッチ分野が望ましく、そのなかで一番といえるレベルにまで磨き、マーケットバリューを上げよ、ということ。

 20代、30代では、どんな練習を1万時間積むのか、これをはっきりさせたほうがいいでしょう。…わたしの場合で言えば、それは「営業」と「プレゼン」でした。…一流の人々の中ではもちろんですが、二流の一番を目指す場合でも、現在そうしたポジションでユニークな仕事をしているビジネスパーソンに、20代、30代でポンポン転職を繰り返した人は見当たりません。…20代の後半までに、「ここで勝負!」と見切りをつけて、5年間やってみること。

■『私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日』(安田佳生)

一時はメディアでもてはやされた、ワイキューブの創業社長にして自己破産した安田氏。この人の魅力は、すがすがしいまでの正直さだろう。リスクをとって、自分の人生を生きるとは、こういうことなのではないか。

創業の動機のくだりが面白い。「これこそが『できるビジネスマン』の象徴だと思った。シャンパンを飲むときにはイチゴをかじる。私もよく真似したものだ。…とにかく私はリチャード・ギアのようになりたくて、将来は社長になると決めたのだ。…のちに東京・市谷のワイキューブ本社の5階に、福利厚生のためにバーをつくったときには、そのバーで『プリティーウーマン』をみんなで観る会というのもした。私と小川さんにとっては起業の原点でもあり、思い入れのある映画だ。」

仕事をする、会社を作る、その動機なんて、このくらい単純でいいんだと思う。若い人には、もっと気楽に「サラリーマン道」からそれてほしい。

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jiangmin-alt2012/10/18 06:04

"『「一生食べていける力」がつく 大前家の子育て』(大前研一)" "読みどころは、大前研一氏が書いた前半の「きれいごと」ではなく、後ろのほうの、長男・次男へのインタビューだ"

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t_utsumi2012/10/12 00:27

なんとも癖があってよい。

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