「きれいになったから」と残業代不払いの企業名を非開示 厚労省
厚労省が開示した文書の束。社名はすべてスミ塗りされている。 |
【Digest】
◇「きれいになった企業」 不開示は企業利益を守るため
◇いろいろ質問しても「答えられない」ばかり
◇文書の記入ミスも判明 異常な金額でも気づかない行政
◇開示すると「企業との信頼関係が損なわれる」
◇過労死へ それでも企業名は公表されず
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→過労死発生の企業名を非開示 厚労省「出すと会社の不利益になる」
→厚労省、内定取り消し企業名を全面不開示 「法人の権利害する」
開示請求したのは、厚生労働省が2009年10月22日に発表した報道資料「監督指導による賃金不払残業の是正結果/平成20年度は約196億円」に関する文書で、企業名がわかるもの。開示対象としたのは、労基署の指導を受けて平成20年度に計1000万円以上の残業代を払った全国の240社。
なぜこれらを対象としたのかというと、事前相談の段階で、厚労省労働基準局監督課によれば、支払額1000万円未満の企業名がわかる文書については、厚労省本省には存在しないため、各地の労働局に請求して欲しいと言われたからだ。
厚労省が発表した資料は、「平成20年4月から平成21年3月までの1年間に、全国の労働基準監督署が割増賃金の支払について労働基準法違反として是正を指導した事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案」という全体的な報告で、全国1553社の18万730人に対して、不払いだった計196億1351万円の残業代が支払われた、という内容だ。このうち、1企業あたり1000万円以上を払ったのは240社と全体の15.5%に過ぎないが、対象労働者は全体の7割近い12万6172人(69.8%)で、支払額も全体の8割を超える158億4914万円(80.8%)。
最高額は14億7500万円を払った東京の企業で、社員数は13万人。支払いを受けた労働者はこの1社だけで3万9000人もいる。業種は道路貨物運送業で、本社は東京、社員数13万人となるとヤマト運輸しかないが、なぜ公表できないのか。
また、2位の銀行・信託業(11億8405万円、従業員5000人)、3位の建設コンサルタント業(5億7894万円、1260人)はともに茨城労働局が報告しているが、どこなのかは推定不可能だ。これだけの巨額の不払いをしておきながら国民はその企業名を知ることができず、その“前科”を知らぬまま就職する人も出てくる。
「概要」は厚労省のウェブサイトに掲載されているが、17の業種ごとにまとめたものであったり、2003年4月以降の各年度の全体状況に過ぎず、労働者が必要とする情報は、何一つ掲載されていない
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開示決定通知書。「企業利益」と「企業との信頼関係」を理由に不開示にしたと書かれている。
企業名が出ているページ。画像は東京労働局が報告したうちの1枚。業種すらスミ塗りされている。
過労死・過労自殺の企業名もこのようにスミ塗りされている。画像は「平成19年血管疾患及び虚血性心疾患等の処理経過簿」の1枚。
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読者コメント
東建コーポレーションの社員が未払い残業代求め岡山で訴訟中ですよ。
トヨタ系上場企業であるアイシン精機にて、3/19(金)に不払い残業代が支払われました。大マスコミはこの事実を取り上げていません。
企業名を開示して不利益になるのは厚労省ですね。
労働者の不利益は無視なんですかね。
流石お役所
企業と行政は癒着してます。労基署も会社の味方です。
この世に正義など存在しないのでしょうか?
トヨタ系の上場企業であるアイシン精機では、現在不払い残業の調査をしています。こういう情報も厚労省は非開示にする気なんでしょうね。
資料請求には、結構なコストがかかると思いますが、肝心な所が黒塗りだと、コスト倒れに終わってしまいますよね。
返金請求とか出来ないのでしょうか?
墨塗り教科書かと思った・・墨塗ったら意味ないではないですか。この文書の山も氷山の一角に過ぎないのに。
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