未払い賃金なし「確認書」を強いる東建コーポレーションの「逆らえない」社風
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東建コーポレーション倉敷支店。農地や休閑地の地主に借金をさせてアパートを建てさせる「土地活用ビジネス」。業界大手・東建の営業マンたちは厳しいノルマにさらされ、長時間のサービス残業に耐えてきたという。 |
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- 「これ書かないとどうなっても知らんよ」
- 「500人の前で吊るし上げ」
- 残業代請求すると「エエことにならんで…」
- 「労組結成」で苛烈さ増すパワハラ
- 未払い賃金ゼロ工作の裏マニュアル
- 東建への質問状
「2008年3月27日の夜でした。外回りをしていたら、支店で会議をやるので営業マン全員集まるよう電話で連絡が入りました。何か大事なことかな、と思って支店にあがったんです」
そう言って振り返るのは岡山県内にある東建コーポレーションの某支店で元「建築営業」社員として働いていた男性Aさん(41)だ。建築営業とは、農家など土地の所有者のところを足しげく回り、「アパート・マンションを建てませんか」と契約を持ちかける仕事である。現職時代Aさんは、朝から晩まで土日もなく働いた。月の残業時間は100時間から150時間を軽く越す。ほとんどがサービス残業だった。
全員会議をやるという電話をAさんが受けたのはこの日の午後9時ごろ。担当する地主のところを回っている最中だった。営業職にとって夜は忙しい。その時間帯に営業社員全員で会議をやるというのは珍しかった。「何か大事なことか」と感じたのはそれゆえである。
会議の内容について、電話連絡では何も言っていなかった。しかし、Aさんには心あたりがあった。
3ヶ月ほど前の2007年12月、名古屋市にある緑支店が労基法違反(賃金未払い)容疑で労働基準監督署の立ち入り調査を受けた。さらに、未払い賃金を払うよう会社に対して是正勧告が出された。結果、同支店では一部ながら未払い賃金が支払われた。
この「緑支店事件」は噂として岡山方面にも伝わっていた。
Aさんによれば、東建にはいくら残業しても痕跡を残さない仕組みがあった。タイムカードも昔はあったが、出退勤の時刻は「午前9時―午後7時」と手で書き込んだ。どんなに帰宅が遅くても勤務終了時刻は午後7時だった。たとえ本当の時間を書いたとしても、支店長が承認してくれないのだ。
タイムカードはパソコン管理に変わった。そのうち勤務終了時間が午後7時から8時に変わったものの、やはり仕事を終えた実際の時間より大幅に早い時刻を記録することに違いはなかった。
こういう状況を苦々しく思っていたAさんは、会議の報に期待を抱いた。
「ひょっとして残業代を払うという話だろうか…」
支店に集まった営業マンはAさんを含めて総勢約20人。一同を前に支店長は手短に要件の説明をはじめた。
「未払いの残業代があるのか、ないのか、みんなに聞かないといけない…」
予想どおりだった。残業代の話だ。支店長の説明に引き続き、別室で個人面談がはじまる。話は短かそうだった。ひとりあたり1~2分程度で、次々に社員が入っては出ていく。何人目かにAさんは部屋に入った。支店長と向き合って座る。支店長は机に一枚の紙を出すと言った。
「こういう確認書があるんだが…(未払い)残業代があるのか、ないのか…。ないんだったら書いてくれ」
「確認書」なる文書には次のように書かれていた。
東建コーポレーション株式会社
代表取締役 左右田稔殿
確 認 書
私は、平成17年9月26日から平成20年2月25日までの間において、勤務していました期間の未払い賃金について調べましたが、会社から私に支払われる未払の賃金はないことを確認しました。――
要するに、払うべきカネはない、という書面にサインしろということだった。Aさんはがっかりした。
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東建コーポレーションが営業職社員に署名させた「確認書」。未払い残業代はない、といった趣旨のことが書かれている。署名せざるを得ない空気だったと社員はいう。![]() |
「これ書かないとどうなっても知らんよ」
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「確認書」の撤回を求め、未払い残業代の請求をした結果、隔離されたり社用車の使用を禁止させらるなどのパワハラを受けたという営業社員のBさん。現在、東建を相手どって訴訟を起こしている。
未払い残業代ゼロの「確認書」を社員からとるための管理職用”裏マニュアル”。〈社員自らが「未払い賃金がない」となるよう働きかける〉などと、できるだけカネを払わないですむための手順がかかれている。
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読者コメント
社会の悪をのさばらせていいのか?
テレビ東京はスポンサーに弱腰だ
こんなの氷山の一角。言えないことだらけ。違法建築だってあちこちに!!
あと、東証一部企業が退職金の確認書を書かせているらしい。
ティッカーはあえて伏せますが、広告系です。
ここは某同業者に非常に良く似た体質ですが、こちらの方が後発なだけに古き悪しき体質は顕著だと聞いています。
●東よりもこう言った対応は5年以上遅れていますね。
東建もか。次々明るみに成る土地活用ビジネスの裏側。大東・東建、急成長の裏事情。マスメディアが報道しないのは、スポンサー企業との癒着か。「政治とカネ」もそうだが、「メディアとカネ」ここを正さないと、日本は国民不在で沈没するよ。この業界の闇の部分はかなり根深い。上場企業がこれでは、上場基準見直し調査必要。
脅しのみで人を動かし続けるのは良くない。ここの社長は頭が腐っているのではないか。
記者からの追加情報
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