研究費の無駄遣いをした東京女子医大山口直人氏(左上)、電波利用料の利権を牛耳る総合通信局局長桜井俊氏(右上)、行政事業レビュー責任者の総務大臣片山善博氏(左下)、行政刷新担当大臣蓮舫氏(右下)
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子どものケータイ使用と脳腫瘍の疫学調査で、全国の子ども100万人を対象に5年間継続調査するという計画に平成19年度からH21年度までに1億4250万円の研究費が支払われたものの、規模が大きすぎて、実際に集まったのは2068人だけ。平成22年は予算が下りず中止となり、この1.5億円はドブに捨てられた。だがなんと、何の反省もないまま、23年度以降も同じ研究者(東京女子医大・山口直人氏)が、新たな3年計画で初年度分6000万円を受注。「最初に予算ありきの仲間内でのバラマキ研究」であることが分かる杜撰さだが、民主党政権は平然と無駄な予算支出を続ける。研究体制の抜本的変革が必要だ。
【Digest】
◇100万人の目標に対して2千人しか集まらず中止へ
◇そもそも無謀だった100万人研究計画
◇なぜ3年も無駄遣いは続いたのか?
◇懲りずに同じ研究者が6000万円受注
◇バラマキ研究との指摘もやむを得ない
◇100万人の目標に対して2千人しか集まらず中止へ
総務省の行政事業レビューで「廃止を含めた全面的な見直し」と仕分けられた電波の安全性調査事業だが、全く全面的に見直されないまま、無駄な支出が続けられることが決まった。
問題の研究事業は、そのうちの1つ、「小児・若年期における携帯電話端末使用と健康に関する疫学調査」。H19年度に5850万円、H20年度に5400万円、H21年度には3000万円と、総額1億4250万円が総務省の電波特定財源である電波利用料からの予算がつけられた。
この研究事業のホームページ「青少年の携帯電話利用と健康の全国コホート調査」には現在、「本研究は総務省の委託により実施してまいりましたが、平成22年度につきましては、未だ受託できておらず、研究を一時中断せざるを得ない状況となりました」との但し書きが掲載されている。
HPでは一時中断とあるが、実はこの研究事業は3年間実施してみたものの、当初の研究参加者目標の100万人に大幅に足りない2068人しか集められず、何の成果も上げられないまま中止となってしまっていたのだ。
◇そもそも無謀だった100万人の研究計画
そもそもこの研究事業には、計画の段階からかなり無理があった。
研究のデザインは、ケータイの使用状況が様々な子どもたちを集めて長期にわたり追跡する。その中で脳腫瘍を発生した子どもと脳腫瘍にならかなった子どもの間で、ケータイの使用の有無や使用量(通話時間や回数)に差が無いかということを調べるものだ。(コホート内症例対照研究と呼ばれるデザインだ。)
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H19年初年度の研究計画書100万人を集めるとある |
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ただ問題は、脳腫瘍など年間の発生率が何万人に1人といったまれな病気を調べる場合には、膨大な人数の参加者を必要で、さらに長期間にわたって追跡する必要がある。
H19年初年度の研究計画書では、「本研究では、悪性と良性を合わせた小児脳腫瘍は10万人に2人程度発生していると考え、100万人の青少年を登録することで、年間20人、5年間の追跡で100人の脳腫瘍患者を把握する」と書いてある。
参加人数を増やすほど統計的には精度が上がるが、個々の情報の正確さは落ちてくる。これまでの日本で行なわれた大規模コホート調査でも、せいぜい10万人規模が上限だ。
通常このようなまれな病気の原因を探る研究デザインは.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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代表的な疫学研究であるコホート研究と症例対照研究のデザイン図 |
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東京女子医大山口直人教授グループへの電波利用料からの研究費の予算額。毎年平均5000万円下りている |
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