『クリエイティブクラス』を活かせる企業の選び方
クリエイティブ・カンパニーの成長、脱皮サイクル図 |
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- 「スピード感」「中長期的視点」「1勝9敗」のカリスマオーナー
- サイクルが途切れる第1の分岐点
- カリスマ亡き後の3つのポイント
『クリエイティブクラス』とは、米国の都市社会経済学者、リチャード・フロリダ氏が提唱したもので、「価値を新しく作り出す人たち」だそうだ。米国の労働者は、「ワーキングクラス」(3300万人)、「サービスクラス」(5500万人)、「クリエイティブクラス」(3800万人)に分かれるという。
いくら社員がクリエイティブたらんと考えても、企業がそれを許さなかったり、そのようなカルチャーでないという残念なケースは多い。一方、社員個人としては、確かに、佐藤可士和氏のように独立して企業とプロジェクトごとの契約をできればよいが、これはデザインという元手がかからない職種であるために独立しやすいのであって、それ以外の職種では難しい。中村修二氏も、研究環境を米国の大学に求めている。
それなりに開発費や開発環境が必要である以上、巨大資本が必須で、多くの労働者にとって、その調達は個人では難しく、したがって、企業の中に所属し、企業との良好な関係を維持する必要があるのだ。
では、クリエイティブを活かせる企業とは、どのような特徴があり、どうやって生まれ、定着していくものなのか。
「スピード感」「中長期的視点」「1勝9敗」のカリスマオーナー
現状、クリエイティビティという点でうまくいっているとみなされている企業は、圧倒的に、偉大な創業者がいて、かつ資本(株式)を抑えているケースである。つまり、パーソンスペシフィック、カリスマオーナー経営者型だ。
言うまでもなく、アップルはジョブズの会社だし、ユニクロは柳井正の会社だし、グーグルはブリンとペイジの会社である。これは当然だ。新しい製品やサービスが全て市場に受け入れられるなど神でもない限りありえないから、クリエイティブクラスの仕事は『1勝9敗』の世界である。よって、失敗を許容できないとダメだ。だから、リスクをとれないサラリーマン経営者では、クリエイティビティはどうしても活かされにくい。
創業オーナー経営者がいてクリエイティビティが活かされている事例は、いくらでもある。出版業界なら、幻冬舎(見城)や宝島社(蓮見)が有名。いずれも、長期的視点でリスクをとれるカリスマ型オーナー経営者だからこそ、思い切った決断を、スピード感を持って行っている。
スピード感は重要だ。決断が遅いと社員もやる気をなくすし、チャンスの絶対数が多くないと、社員のモチベーションも続かないからである。ユニクロ・柳井社長の場合、「ブラトップ」「ヒートテックインナー」「ウルトラライトダウン」など、もちろん最終的な決断は柳井氏が行うが、それぞれ社員がクリエイティビティを発揮して企画し、柳井氏に提案したものが柳井氏の決断で販売され、大ヒットにつながっている。
スピード感よりも中長期的な経営が目立つのが、同じくオーナー企業のサントリーである。「青いバラ開発まで14年」や「ビール事業の黒字化まで45年」というように、通常なら撤退している事業も、中長期的な視点でリスクをとれる。クリエイティブとしては、経営側がコミットしてくれることによって、安心して事業に取り組むことができる。
カリスマ経営者(御手洗氏)によるキヤノンの薄型SEDテレビ事業への投資と遅すぎたといわれる撤退のように、結果的に失敗となることも多いが、クリエイティブにとっては長期間挑戦できることが重要であり、その失敗も、次の成功への糧となる。1勝9敗でいいのだ。実際、キヤノンは立派に利益を出し続けている。
①スピード感、②中長期的視点、③1勝9敗。いずれもサラリーマン経営者には持ち得ない資質である。これは、本人の資質というよりも、むしろ環境の問題が大きい。たとえば2年で結果を出さなければいけない週刊誌のサラリーマン編集長は、短期的な視点にならざるをえない。その意味では気の毒だ。中期的視点で新規読者を獲得するよりも現在の読者層に合わせたほうが短期的には売れるため、特集が「墓」や「遺言」ばかりになってしまう。
サイクルが途切れる第1の分岐点
現場の自由度と短期業績の反比例図(2011年版) |
カリスマオーナーがヒット作を連発すると、会社は儲かる。儲かると、カネと時間に余裕が生まれる。つまり、失敗できる余裕が生まれ、自由度が高まる。自由度が高まると、クリエイティビティは発揮されやすくなり、さらにヒット作が出る。
このサイクルが回りだすと、「クリエイティブカンパニー」になる。左記図でいうところの「パラダイスエリア」に突入、より高次の段階に止揚(アウフベーヘン)するのだ。
ライブドアの宮内氏は「全能感があった」と著書『虚構』で書いているが、まさにその状態である。社員はクリエイティビティを発揮して儲かるので、楽しくて仕方がない。
グーグルの「20%ルール」は、カネと時間に余裕が生まれ、自由度が高まった結果といえる。重要なのは、20%ルールがあるから儲かっているのではなく、儲かったから20%ルールを作る余裕が生まれた、ということだ。この原因と結果をあべこべに理解すると、理解を誤る
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『ワークス』2011年2-3月号に掲載された記事
GEの「9ブロック」
P&Gの「ourValues」
『ワークス』2011年2-3月号表紙
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