四国電力伊方原子力発電所2号機の設計概要図(許可申請書より)。格納容器の耐圧は2・45気圧で、福島第一原発よりもはるかに弱い。
|
深刻さを増す福島第一原発事故。放射能を撒き散らす原発の恐怖は、福島だけではない。もともと危ない原発の中でも、特にヤバイと言われるのが、四国電力の伊方原発だ。築30年を超す老朽化、巨大活断層の近くなのにユルユルの耐震設計、脆弱な圧力容器、猛毒のプルトニウムを使うプルサーマル、そして地震がなくても多発する事故。大規模な南海地震が起きたら、一撃でやられるリスクは高い。第二、第三の「福島」を避けるには運転停止して総点検するしかないが、県民の不安をよそに知事も四電も「安全」を繰り返す。背後に浮かぶのは「補助金」や「天下り」といったカネまみれの腐敗した構図だ。
【Digest】
◇「四電伊方」という特にヤバい原発
◇30年級が2基、老朽化の不安
◇後付けの「安全基準クリア」
◇迫るXデー、巨大活断層と南海地震
◇保安院首席審議官が四電に天下り
◇伊方をとめて」たかまる市民の不安
◇プルサーマルの補助金年間10億円
◇「四電伊方」という特にヤバい原発
伊方原子力発電所は、四国唯一の原発で、愛媛県西端の伊方町(八幡浜市から10キロ、松山市から60キロ)にある。細長い岬の途中で、瀬戸内海に面した風光明媚な場所だ。1~3号機まで3機の原子炉が動いており、3号機は昨年からプルサーマル運転(後述)中。四電のパンフには小学生たちが発電所近くで写生をしている写真が載り、平和でのどかな光景だ。だが、この安全なイメージとは裏腹に、伊方は「特にヤバい原発」と指摘されている。
なぜヤバいのか。八幡浜市を拠点に長年、伊方原発の危険性を訴え続けてきた元南海日日新聞記者の近藤誠氏(64)、および地元で原発問題に取り組んできた市民の見解を総合すると、問題点は次のとおりだ。
① 運転開始から30年になる1・2号機の老朽化
② 1・2号機は設計時に地震・津波を考慮していない
③ 1・2号機格納容器の耐圧設計が甘い
④ 近くに「中央構造線」という巨大活断層がある
⑤ 南海地震・大津波の危険が迫っている
⑥ 信頼性に難がある3号機が事故を起こせば猛毒のプルトニウムを含む放射性物質で四国が汚染される
⑦ 普段から事故が多く、天災がなくても事故の不安がある
伊方が第二の「福島」になったら、西日本も放射能にまみれ、日本の存亡に関わる問題だ。しかし四電も中村時広愛媛県知事も「安全」を繰り返すのみで、大惨事を防ぐために最大限の努力しているようにはとてもみえない。
危険回避にどうして消極的なのか。考えられるのがカネと利権だ。愛媛県など地元の自治体には、原発誘致にともなって年間16億円から25億円のカネが経済産業省を通じて落ちているのである。
また、監督官庁であるはずの経産省原子力安全・保安院の幹部は、後述のとおり、なんと監督先の四国電力に役員として天下っている。自治体幹部や政治家、電力会社、高級官僚の馴れ合いの結果、愛媛県民や国民が危険にさらされる構図だ。自分たちだけが「豊か」であれば「あとは野となれ山となれ」といわんばかりである。
以下、「伊方」の危険について、順に詳しくみていこう。
◇30年級が2基、老朽化の不安
まずは1・2号機の老朽化について、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
東日本大地震・大津波で東電福島第一原発は深刻な事態に陥った。伊方原発の不安を訴えて運転停止を求める市民グループ(上)と、「イデオロギー」を理由に面会拒否して原発の安全性を繰り返す中村時広・愛媛県知事(下)
 |
|
|
老朽化、耐震構造の弱さ、巨大地震の可能性など、伊方原発の危険性を指摘する、元南海日日新聞記者で原発に詳しい近藤誠氏(左)。近藤氏の住む八幡浜市から伊方原発までわずか10キロしかない。 |
|
|
伊方原発の北側、瀬戸内海沖合い約8キロの海底には巨大活断層「中央構造線」がある。太平洋沖のプレートが動くことによる南海地震もちかく起きるといわれている。 |
|
|
四国電力に取締役で天下った経済産業省原子力安全保安院首席統括安全審査官の中村進氏(下)。安全審査機能に大きな疑問がある。上は香川県高松市にある四国電力本社。 |
|
|
原発を受け入れることで自治体には国から交付金が払われる。より危険はプルサーマルを認可すればさらに交付金が出る。愛媛県や伊方町、八幡浜市にに落ちる交付金は年間約25億。プルサーマルのカネで現在県立病院の建て替えが進んでいる(左)。 |
|
