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コカコーラ配送「日東フルライン」で新入社員が過労自殺 猛暑、パワハラ、無理なノルマ…

情報提供
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配送員が気付いたことを書く日報。写真は「しんどいです」「暑いのできついです」と書かれた7月14日の部分。Fさんとは別の社員2名による書き込みだが、同様のコメントはほかにも見られる。
 どこにでもあるコカコーラの自動販売機だが、そのコーラ専門の配送会社「日東フルライン」で08年夏、若手社員が過労自殺し労災認定を受けていた事実は、ほとんど知られていない。自殺したのは、入社わずか4カ月目の配送員Fさん(当時27歳)。亡くなる前の月にあたる7月、大阪市はひどい猛暑で、自販機は売切れが続出していた。Fさんの父によれば、同僚全員が疲労困憊していくなかで新人への支援はなく、長時間の肉体労働、月100時間の残業、神経を使うトラックの運転、パワハラとも言える暴言、達成不可能なノルマ、突然のエリア変更、雇用形態への強い疑念など、Fさんを自殺に追い込んだ現場の様子が次々と明らかになった。
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  • 3箱担ぎ階段も 7月だけで5万6000本入れる
  • 正社員じゃなかった!?

 Fさんの死亡は10年6月に労災認定されたが、所属会社の日東フルラインは、会社には一切責任がないという立場を崩していない。遺族は11年9月、慰謝料や損害賠償の支払いを求めて日東フルラインを提訴、大阪地方裁判所で審理がはじまっている。

◇時系列

2008年04月15日Fさんが日東フルラインに入社
2008年08月02日Fさん死亡(27歳)
2009年04月13日遺族が大阪西労働基準監督署に労災申請
2010年06月03日大阪西労働基準監督署が労災認定
2011年06月13日遺族が日東フルラインに賠償を求める通知
2011年07月11日日東フルラインが上記請求を拒否
2011年09月07日日東フルラインを相手取り遺族が大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提訴。裁判継続中。

◇猛暑 コカコーラ自販機は売切れ続出
 2008年7月の大阪は暑かった。気象庁のデータによると、大阪市の最高気温は29日間で30度を上回り、うち5日は35度を超え、最高気温の平均は33.3度に達した。30度を下回ったのはわずか2日。7月19日から28日にかけては連日34〜36度に達し、コカコーラの自動販売機は売り切れが続出していた。

 コカコーラの配送員が気づいたことを記す日報でも、「売れすぎです」「全体的によく売れてます」「売切れ多い」「売り切れが目立つと言われた」「急激な売り切れ」などのコメントが見られ、販売が絶好調であることを示していた。

 その一方で配送員の身体には相当な負担がかかり、複数の社員が、「きついです」「きついです」「きついです」「キツイです」「キツイです」「しんどい」「しんどいです」「体調管理したいです」「まじで無理」「無理です」「倒れそうです」などと日報に書いている。月末の31日、マネージャーが日報の欄外で「7月本当に大変な状況でした」と書くほどだ。

 これらのコメントのうち、「倒れそうです」と書いたのは入社4カ月目の男性Fさん(当時27歳)。7月26日のコメントだ。それから1週間後の8月2日朝、自宅で自殺した。出勤のスーツに着替える途中の姿だった。

3箱担ぎ階段も 7月だけで5万6000本入れる

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大阪市内でインタビューに応じるFさんの父。

就職氷河期のさなか、大学卒業後にアルバイトを続けていたFさんがやっとの思いで正社員になれた会社が、コカコーラの配送を専門とする日東フルライン(本社=大阪市)だった。

資料によって記載は異なるが、従業員数は400人から450人。当時の会社案内の資料では、事業目的に「コカ・コーラボトラー社が取り扱っている商品の物流を専門的に配送・運営し、事業の拡大を図ること」とある。

 社名で検索をしてもウェブサイトは見当たらないが、求人情報は膨大な数が出ている。当時の紙の会社案内には出ていないが、現在は「コカ・コーラウエストグループの一員」との表記から、資本関係はなく、コカコーラボトラーより配送等を請け負う「指定会社」という位置づけだ。

 Fさんら配送員のおもな仕事は、大阪市内にある営業所からトラックでコカコーラの自販機を回り、ドリンクを補充したり、釣り銭の補充や自販機のトラブルに対応したりすること。積み荷を降ろしたり、エレベーターのない建物では1箱7キロほどあるドリンクを3箱担いで階段で上がるなど、体力勝負の仕事である。

 「むこうはヨダレがでるぐらい嬉しかったと思いますよ。まじめで体格がいい、そういう奴が欲しいわけや。息子が面接から帰って来て嬉しそうにね、『コカコーラの正社員にやっとなれたわ』なんていうもんだから、よかったなあと。ほんとにアホな話だな……」

 Fさんが7月に受け持っていた自販機は100台以上あり、1日に回るのはこのうち15台程度。1日25台程度と言われるベテラン配送員のノルマよりは少ないが、新人だからといって道路沿いに設置されている自販機ばかりでなく、半数近くは工場やオフィスなどの敷地内の自販機だ。なかには台車の使用が制限されているところもある。

 父はFさんの死後、会社から入手した資料をもとに、Fさんの配送先を実際に回ってみた。3階建てのゴルフセンターにはエレベーターがなかった。やはり3階建てでエレベーターのない会社もあった。迷路のようになっていて自販機までたどり着くのが一苦労という建物もあった。

 「そういうところが結構あってね。それなのに会社は、『1日15台、店頭以外は行かせてません』って

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08年のFさんの手帳。前月に続いて、7月前半も何をいくらで買ったのか細かく記録されているが、7月半ばを過ぎると記録が水ばかりになる。遺族提供。

Fさんのタイムカード。遺族提供。

Fさんが使っていた道路地図。赤ペンで配送先のメモが書き込まれている。

08年のFさんの手帳。入社からずっと続いていた勤務時間の記録は、7月11日からはまったく書かれなくなる。遺族提供。

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i_nakami2012/01/10 13:00

ベンディング業者はほぼ全て真っ黒。労働環境云々言う前にそもそも自動販売機が無いと生きて行けないのか?とか思う。パチンコ屋とか、自動販売機とかそろそろ撤廃条例整備したほうがいいんじゃね。

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